第14話「さよならとハンカチ」
「はぁっはぁっ。
…これで!やっと!…ミッション、コンプリートっ!」
あの後、
レンに後をつけられてやしないかと…ヒヤヒヤしながらも。
何とか、誰にも邪魔されることなく、計画通りの物を、買うことができた。
俺の手には…キレイにラッピングされた紙袋が…2つ。
「こっちがヒマリで…こっちが、シゲ叔父さんの分っと。
間違えないように、しないとなっ。」
誰に言うでもなく。
メインストリートから、少し離れた森で。
2人へのプレゼントを間違えないように、
もう一度、ぞれぞれ声に出して確認する。
ヒマリがブレイズ隊長に、偶然漏らした欲しい物とは…
…父親と一緒に使える、ハンカチだった。
『お父さんは…明るい黄色のカラーズで、私は、赤みがかった黄色っ!
えへへ、同じような色が発現して、私、嬉しいんです!』
ヒマリはこう言って、
”それぞれのカラーズにちなんだハンカチが欲しい”と、
ポツリとこぼしていたらしい。
(父親想いの、ヒマリらしいな。)
…ただ、
ヒマリのカラーズ”赤みがかった黄色”のハンカチは、
…なかなか珍しいらしくて。
結局、見つけるのに、6軒ものお店を巡ることになった。
「でも、ちゃんと見つかったし!良かった!
…へへ、喜んでくれますようにっ!」
夏だから、まだまだ空は明るいが。
それでもいつの間にか、噴水広場の時計は…夕方の、4時30分を少しまわっていた。
プレゼントを汚したくないから、少し早いけど…ゆっくり歩いて。
ここから、約40分のヒマリの家の近く、
約束の場所である”大きな切り株”を、目指すことにした。
振り返った、ジャアナの街並み。
”黒の悪魔”による大惨事【黒の誕生】から約7年、
このミタ山に移り住み、毎日のように見慣れた、
この、平和な日常を…
…もう、二度と
見ることが…できないなんて。
このときの俺は、
そんなこと、少しも、考えていなかった。
ーーー【黒の再来】まで、あと1時間18分ーーー
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