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ドラクエに夢中になる心

ドラゴンクエスト、通称ドラクエ。説明などいらないくらいの超有名RPG。それは物心ついた時から私のそばにあった世界。ドラクエ好きな父がプレイしている画面を並んで見ていた記憶がある。あれは何歳頃だったのだろうか。父が操るキャラクターが戦うのを見ているだけでわくわくした。何かの拍子にスーファミのリセットボタンを押してしまって怒られたっけ。


架空の世界での壮大な冒険、モンスターとの戦闘で強くなっていく主人公、仲間との絆。個性豊かなキャラクターと素晴らしい音楽。自分でやってみるとどれもこれも魅力的で、あっという間に引き込まれた。子供の頃は1日30分に制限されていたが、うるさく言われなくなると時間を忘れて熱中した。特にⅤの天空の花嫁が好きで何度もプレイした。何回やっても結局ビアンカを選んでしまうのだが。


大人になってからは遠ざかっていたが、ある時新しいソフトが出ると聞いてあの頃の気持ちが蘇った。買ったばかりの3DSでオープニング画面とあのサウンドを聴く。その瞬間、懐かしさがこみ上げ心が踊った。またあの世界に行けることが嬉しかった。だがプレイし始めてまもなく違和感に気付く。ゲームには何の落ち度もない。ストーリーもキャラクターもサウンドも申し分ないのだが、なぜかその世界に入り込めないのだ。以前だったらプレイ中はドラクエのことしか考えていなかったのに、今は3割くらい他のことを考えている。何もかも忘れて没頭していたあの頃と何が変わってしまったのだろうか。もう私は好きだったあの冒険の世界には旅立てなくなってしまったのか。なんだか少し悲しくなった。きっともうあの気持ちは戻ってこないとわかってしまったから。


変わってしまったのは大人になったからだろうか。でもそれだけではないはずだ。私より大人な父は今でもとても楽しそうにプレイしている。週末の楽しみだと言っていた。先日までの夏休みの間もきっと喜んでやっていたのだろう。以前と変わらずに楽しめていることが羨ましい。
父は今でも持っていて、私はどこかでなくしてしまった冒険に夢中になれる心。なくした私は代わりに何を手に入れたのだろう。あんなに素敵な気持ちと交換したのだから、きっと今持っているなかでも上等なものに違いない。そう思いたい。


結局忙しくなったこともあって途中でやらなくなってしまった。今は引き出しの中。私の冒険は楽しかった思い出と共に静かに眠っている。

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