ai.kawatani

言葉を扱うすべての人を尊敬している一児の母。 難病の愛娘と毎日を大切に過ごしています。…

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言葉を扱うすべての人を尊敬している一児の母。 難病の愛娘と毎日を大切に過ごしています。バラとガーデニングが好き。

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いまさらな自己紹介と娘のこと

娘がひとりの3人家族。 夫は会社員、私は専業主婦のありふれた構図。 ただひとつ違うとすれば、娘が難病患者であること。 いまさらですが自己紹介を。 エッセイストに憧れる主婦のaiです。 書くことに興味がありますが、読むことも大好きです。 noteを始めて1ヶ月と少し。 今までやや堅苦しい書き方をしてきましたが、もう少しラフに日記の延長のようなものも書きたくなりました。 娘について書くことは当初から迷っていましたが、専業主婦である自分の中心は娘。 日記を書くとなれば避けられな

    • 涙と正座と小心者

      あの日、私は廊下にいた。雪の降る寒い夜、冷たい廊下で泣いていた。 中学1年生の一大イベントであるスキー学習の幕開けは残念なものだった。一番仲の良かった友人が発熱し、行くことができなくなった。バスの座席は隣だし、部屋も一緒だったのに。あとから思えばそれが不運の始まりだったのかもしれない。 部屋は6人。私と行けなくなった友人、あとの4人は別のグループだった。学年でも目立つ部類の子たち。仲が良かったわけではないけれど、人数の都合で一緒になった。大人しく教師の言うことを聞くような

      • 6時間の恋人【後編】

        車は少し古そうな型のステーションワゴン。だと思う。私は車にはとても疎い。違ってたらごめん。少し意外だった。なんとなくもっていた彼のイメージと違ったから。じゃあどんな車だったら納得するのかと聞かれても答えられないけれど。数時間しか一緒にすごしていない私のイメージなんてあってないようなものだ。 助手席に乗せてもらってシートにもたれる。ゆっくり座ったのは何時間ぶりだろう。休憩を忘れるほどはしゃいでいたことに我ながら驚く。買ったばかりのCDをかけ、戦利品のじゃがりこをつまみながら歌

        • 6時間の恋人【前編】

          「おめでとうございますー 時間までお待ちくださいー」 全くおめでたくなさそうな声でお姉さんが言う。さっき渡したばかりの小さな紙が私の手に戻ってきた。そこにはアルファベットがひとつと、数字がみっつ並んでいる。白紙じゃない。 すうじがあるってことはあたったってことですか? 頭の整理が追いついていない。 アタリならこう、鐘を鳴らせとまでは言わないが、もうちょっとアタリっぽいおめでたい感じの声を出してくれればいいのに。なんてスタッフのお姉さんへの恨み言が浮かぶ。もちろんお姉さん

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        いまさらな自己紹介と娘のこと

          母乳育児の後悔

          これは私の後悔の記録です。これから母になる方、母乳育児を考えておられる方に読んでいただければと思います。私と同じ後悔をする人を少しでも減らしたいという思いで書きました。 とてもプライベートな内容なので有料とさせていただきます。 はじめに 母乳育児の後悔というタイトルですが、「母乳育児をしたこと」を後悔しているわけではありません。「母乳育児にとらわれて大切なものを見失ったこと」に対しての後悔です。 * 「もしかしてお腹、空いてるんじゃない?」 看護師さんに問いかけられ、私

          母乳育児の後悔

          あの一曲があったから

          小川のせせらぎと小鳥のさえずり。 猛獣の咆哮と嵐の夜。 喜びに溢れた愛も深く絶望する悲しみも。 なんでも表現できる。 音楽なら。 仲間となら。 * 吹奏楽との出会いは偶然だった。 中学校に入る前からソフトテニス部に入ろうと決めていたのだ。可愛いスコートを履いてボールを追いかける様が、マンガみたいで青春っぽく輝いてみえた。友人から吹奏楽部の見学に付き合ってほしいと言われ快諾はしたが、正直興味はなかった。 テニス部の見学に行ったが雰囲気が合わなかった。入学前から思い描いてい

          あの一曲があったから

          ドラクエに夢中になる心

          ドラゴンクエスト、通称ドラクエ。説明などいらないくらいの超有名RPG。それは物心ついた時から私のそばにあった世界。ドラクエ好きな父がプレイしている画面を並んで見ていた記憶がある。あれは何歳頃だったのだろうか。父が操るキャラクターが戦うのを見ているだけでわくわくした。何かの拍子にスーファミのリセットボタンを押してしまって怒られたっけ。 架空の世界での壮大な冒険、モンスターとの戦闘で強くなっていく主人公、仲間との絆。個性豊かなキャラクターと素晴らしい音楽。自分でやってみるとどれ

          ドラクエに夢中になる心

          運命はあるか

          『運命』はあると思うか。 自分に問いかけてみたがすぐには答えが浮かばなかった。生あるものは死ぬ、というのはこの世界で唯一誰にも逃れることのできない運命といえるだろう。だがそれ以外ではどうだろう。私が今この場所に住んでいて、今の夫と結婚して、こうやって文章を書いていることも全て運命なのだろうか。あらかじめ決まっていたことなのか。 なんだかそれは嫌だなと思う。自分の選択が反映されない人生なんてとても虚しい。悩んで決めたはずのことがすでに決定事項だったら考えるのも馬鹿らしくなって

          運命はあるか

          人魚と共に

          読書感想文 『人魚の眠る家』 東野圭吾 冒頭数ページ目、車椅子で眠る女の子。足が悪いわけではないが歩けない。その子を見た男の子が抱いたイメージが好きだ。 人魚。 歩けない子を人魚というのなら、うちにも人魚がいるなと思って口元が緩んだ。とても素敵な表現だ。 * 脳死状態と思われる女の子とその両親の物語。在宅での介護。置かれている状況は違うが、何か近いものを感じながら読んだ。 中心にあるのは脳死の捉え方と臓器移植の問題点についてだが、これらに関してはあまりに勉強不足なので語

          人魚と共に

          わたしの名は?

          入院が延びた。 3週間の予定だった入院が4週間になったのは先週のこと。そして今日、4週間だった予定は8週間になった。仕方がない。今の娘の体調ではとても飛行機に乗せて長距離を移動することはできない。何よりも娘のことが一番なのだ。そこに異論はない。とてもよく診てもらって感謝している。 何かが引っかかっていた。 退院を9月にすると決めたときから。 なんだろう。なんだろう? 誕生日だ。 気付いた瞬間、少し胸が苦しくなった。 私の誕生日は、病院で迎えることになる。 人生で一番書いて

          わたしの名は?

          祖父母が蒔いた『楽しさ』の種

          なぜニンジンだったのだろう。 20数年前の記憶を引っ張り出してきたときに感じた疑問。嫌いではないけど特別好きでもない。そんな野菜を初めてに選んだからにはたぶん何か理由があったのだろうが、残念ながら全く覚えていない。とにかく、小学生が毎月数百円もらうおこづかいの中から種を買ってきて、庭の隅の草をとり土を耕して蒔いたことは事実だ。1週間後くらいにはいくつか芽が出て、肥料をやるという知識はなかったがなぜか間引きはしたのも覚えている。 収穫もできた。5cmくらいの可愛らしいニンジ

          祖父母が蒔いた『楽しさ』の種

          天使の手

          子供の手は可愛い。 むちむちでつるつるで、つい触ってしまう。 小さくて温かくて、愛らしい手。 でも生まれた時と比べたらずいぶん大きくなった。 人形かと思うほど小さくて薄かった爪も、だいぶ硬くなってきた。 いつの間にか大きくなっていて、時々驚く。 マンガでよくある、ビンタされた痕が手形になるやつ。 この手だったらもみじみたいで可愛いかも。 でも面積少ないから痛いのかな。 そんなことを思いながら娘の手を自分の頬にあてていたら、むぎゅっとつかまれた。 痛い。 頬のたこ焼きをむし

          天使の手

          1週間過ぎたら帰りたい

          ここ1年半ほど入院が多かったので、病院で過ごすことにはだいぶ慣れてきたと思う。が、やはり1週間を過ぎた頃から急に帰りたくなる。 付き添いの食事は出ないので3食コンビニ食。もう飽きたを三周くらいして何も感じなくなった。とりあえず最低限の栄養がとれればいいやと思い、毎日ほとんど同じものを買っている。野菜が足りなくなることはどうしても避けられない。野菜ジュースとサラダ以外のものが食べたい。 食パンはコスパが最強なので外せない。アホみたいに苺ジャムばかりつけて食べるのでジャムの消費

          1週間過ぎたら帰りたい

          翼は動きますか?

          また救われてしまった。 働いていない自分に自信が持てなくて悩んでいた数ヶ月を、たった6分で洗い流してしまった。 答えは出てないし、解決したわけでもない。 けれども沈んだ気持ちを軽くしてくれたのは確か。 答えなんてものは、きっとないのだ。 仕事を辞めて母になる。 これは自分で選んだ道。 悔やむ権利なんてないし、後悔はしていない。 だったら今できることをやろう。 自信が持てない自分も受け入れよう。 そう思えた。 音楽に救われた、なんて大げさだし嘘くさく聞こえるけれど。 答えが

          翼は動きますか?

          あの日のありがとう

          2019年3月 冷たい雨が降る都内の駅で 助けてくれた1人の女性への感謝。 その日、ベビーカーに乗せた娘を連れて都内に行く用事があった。 夫は仕事だったので一人だった。 娘を連れて電車に乗るのは2回目で、一人で乗せるのは初めてだった。 予定外の雨も相まって、緊張と不安がどんどん増していったのをよく覚えている。 混み合う電車内。 ベビーカーは場所を取るため、迷惑にならないようにとにかく気を付けた。 幸い何も言われることはなかった。 乗り換えの為にホームに向かったら、下りの

          あの日のありがとう

          小児科に行った。初めて見る少し若そうな先生だった。鼻が詰まると話したら、多分「ハナクソ」を丁寧に言おうとしてくれたんだと思う。先生から出てきた言葉は、「鼻うん○」もはや丁寧かわからないけれど、猛烈な破壊力を伴ったのは確かだ。笑いを堪えるのに必死で、その後の説明は覚えていない。

          小児科に行った。初めて見る少し若そうな先生だった。鼻が詰まると話したら、多分「ハナクソ」を丁寧に言おうとしてくれたんだと思う。先生から出てきた言葉は、「鼻うん○」もはや丁寧かわからないけれど、猛烈な破壊力を伴ったのは確かだ。笑いを堪えるのに必死で、その後の説明は覚えていない。