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喫茶店レポ (カフェ ラ・ミル 新橋)

昨日の雨模様とは打って代わり、今日はカラリとした空気が流れている。束の間の幸せな昼休み。

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四季が巡るのは嬉しい半面、暑くなったり寒くなったり、どうしようもない気候や天気に年中振り回される日々は、そろそろどうにかならないかな。

でもこんな気持ちの良い日をちゃんと「幸せだ」と感じられるのは、昨日の私が少し苛立ちを覚えた、あの雨風のおかげなのかもしれない。

新橋を闊歩するサラリーマンたちも、マスクの下では微笑んでいるような気がする。

本日の昼休みは、前から気になっていた「ニュー新橋ビル」のとあるカフェに行ってみよう。

(※3ヶ月前に作成した記事なので季節感のズレがありますが悪しからず…)

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ニュー新橋ビルは1971年会館で、設計は松田平田設計事務所。公式hpには「新橋サラリーマンの原風景。戦後初の再開発ビル」と書いてあった。なんてスタイリッシュでイカしたキャッチコピー。

建物の中に入ると昭和の空気をそのまま閉じ込めて運んできたの?というくらい、室内全てが昭和のノスタルジックな空気で充満している。

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歩いている人々も皆、何故か急に昭和の雰囲気を纏っていて、なんだか私だけタイムリープした気分。この奇妙なリアル感は一体なに。

流れている時間が、明かに外のそれとは違う。

もし、ここの何処かにカレンダーが掛けられていたら、絶対年号は昭和のままだし、時計の針は止まっているに違いない。

エスカレーター横のタイルが、魚の鱗みたいで綺麗。ディテールに拘った建物は、いつまでも大切にされててほしい。

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お目当ての「カフェ ラ・ミル」に到着。

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透明なガラスケースの中で、眩しく照らされたケーキに目を奪われる。

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内装は北欧のハーフティンバー様式を彷彿とさせるデザイン。

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白い壁とダイナミックな梁がコントラストが効いてて好き。そして空間を仕切る内壁に大きく開口があいてて、テラスにいるような気分。

赤色のソファーと曲面を描く照明の間に、ミュシャの絵が飾ってある。

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微妙に高さがズレているのもご愛嬌、というかわざとなのか・・・?キチッと揃いすぎてない空間は、自分がそこにいることを許容してくれている気がして好き。

メニューたち。

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注文したのは、イベリコ豚と那須の完熟トマトソース ¥1230

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チーズは後から自分でかけるスタイル。

麺がもちもちしてて、トマトが美味しくて、全てが最高。

幸せなひと時を噛み締める。

すると7人組のベテランサラリーマンたちが「うっわ〜懐かしい、ここはずっと変わらない」と嬉しそうに談笑しながら入店してきた。

彼らにとってこの場所は、いつでもあの頃にタイムスリップできる場所なんだと羨ましく思った。こんな素敵な場所、ずっと無くなって欲しくないな。建物の歴史は、無数の名もなき人々の、かけがえのない日常によって作られるのだろう。

私にとってのニュー新橋ビルはどこ?(イオンか?)カフェ ラ・ミルは?(ガストか?)そんな事ばかり考えていた。

でも地元のイオンモールは「福岡のJKの原風景」とは言えないだろうし、よくあるファミレスの一つでしかないガストでは「ノスタルジー」は発生しそうもない。商業主義から生まれたスクラップ&ビルドの建築たちには、原風景もノスタルジーも持ち合わせられるだけの余裕感がないのだ。やはり建築や都市空間には、より多くの思い出を隙間にこっそり潜ませられるだけの余裕感が必要なんだと思う。

私たちだけのノスタルジーが欲しい。いつでも仲間とその場所に行けば時代を軽やかに飛び越えてしまえる場所。目まぐるしく変わる都市の中で、ずっと変わらない場所。周囲がぐるぐる回っても移動しない軸足のようなもの。時間は絶えず前進するし流行は激しく巡るし都市の風景はバイオレンスに変わるけど、どうかいつまでも私にとっての変わらない場所がありますように。



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