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変わりたくないけど変わっていく苦悩について

中学や高校のとき、毎週必ずミュージックステーションを見ていた。
それだけでは足りずスペースシャワーTVを何時間もぶっ通しで見るくらいに、いつも注意深く最新の音楽を取り入れていた。

とてもよく覚えているのはケツメイシの『さくら』が、十何週に渡ってヒットチャートにランクインし続けていたこと。
もう15年も前なのにさくらを聞くたびに、その頃の感情の色や形、質感のようなものがよみがえる。
地元の電車の中で窓の外を見ながらイヤホンで聞いていた、未完成で恋人もいなかった少女の自分。

大学に入り社会人になって数年たった今、その頃の自分が驚くほどに最新の音楽を聴かなくなってしまった。
それどころか音楽自体を楽しむことが少なくなってしまっている。
ひと昔前の大人みたいに「いまどきの音楽は分からん」とか「昔の方がいい曲が多かった」というわけでは決してない。
ただ純粋に音楽を聴く時間が減り、自らトレンドを探すような熱心さがなくなってしまったのだ。

現実その選択をしているのは自分なのに、まるでその事実が信じられずにいる。
他人事だと思いたい。
これは私に起きていることではないのだと。

つまりこの状況がとても嫌なのだ。
いろいろなジャンルの音楽を聴いて宝探しのように好みの一曲を見つけるわくわくを取り戻したいし、地元の電車で聴いたときのようにメロディーや歌詞を体いっぱいで堪能したい。

でもなぜかできないでいる。
理由を考えたら「他にやるべきことがある」「忙しい」というのが一番に出てきたが、それは学生の頃も同じだったはず。
そうして考えていると一つの答えが思い浮かんだ。

『音楽はもう私に必要ないのでは…』

とても恐ろしいことだ。
一時期歌手になりたいと思うほど熱中していた音楽は、今の自分には絶対に必要なものではなく、ただのオプションになっているのかもしれない。
私は音楽に熱中していた自分をわりと気に入っていたのだが、それはもはや過去の人間なのだと言われている気がした。

人間生きていると、環境や周りの人間、その他様々な要因で好きなものや価値観が変わることはごく自然なことだと思う。
でも中には、変えたくないものが思いもよらず変わってしまって戸惑うことがあると思う。

こういうとき、どのように受け止めたらいいんだろう。
元に戻すことは、はたしてできるのだろうか。

音楽に対して豊かな感情を持っていたあの頃に、今は心底戻りたいと思う。




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