見出し画像

あの時、アイスを食べなければ……

先日、5歳の娘が幼稚園を休んだ。前日の夜遅くにお腹を下したのだ。

眠ったまま、悪夢にうなされたように「おなかいたい」と唸る娘を見て、気が気じゃなかった。

オムツが外れてから、ウンチもおしっこも漏らさなかった娘が、初めて漏らした。これは眠かったせいなのか、それだけ重症なのか……家の中に緊張が走った。

お風呂へ連れて行って汚れを流したけど、まだ出そうな気配がしたのでトイレへ。

その後、出し切ってしまってから着替えさせたのだけど、娘はそのままの勢いで眠りについてしまった。

夜中にまた再発するかもしれない、今度は吐くかもしれない……そんなことを思い、その瞬間から添い寝した。

(汚れの処理は夫が担当してくれた。感謝。)

お腹が痛くてゆがんでいた娘の表情が、少しずつ穏やかに変わり、一過性のものかもしれないとも思った。

そして思い当たることがないか考えた。

……そうだ、冷えたのだ。

気温が30度もあり、6月とは思えない暑さだったその日。私たち家族は、アイスを食べた。

(ちなみに晩御飯は冷奴)

「アイス、あかんかったやろなぁ」

そう思いながら、私も眠りについた。


-


翌朝の娘は、9時まで起きなかった。いつもは7時前後には起きるので、やはり相当疲れたのだろう。

「今日は幼稚園はお休みしたんやで。昨日の夜、お腹痛かったやろ?」

そこまで聞いて事情を理解した娘の表情が、みるみるうちに曇り出した。

「ようちえん……おやすみ……さみしい……」

頬を伝う涙を、娘の柔らかな手が拭った。

「え?泣いて……る?」

思わず目を見開いた。

幼稚園がある日は「ママと離れるの、さみしい」と言っていた娘が、幼稚園に行けなくて寂しいと言っている。

いつの間にか、幼稚園が大切な居場所になっていたことがわかり、それはそれはうれしかった……と同時にひどく後悔した。

あの時、アイスを食べなければ……よりによって、なぜ週明けの月曜日に食べさせたのだろう?

幼稚園に行けなくて泣いている娘を見て、ひたすらに悔やんだ。


-

その日の夜、仕事から帰った夫に娘の報告をした。

「幼稚園に行けなくて、泣いてたわ。」
「まじかー。」
「アイスがあかんかったかなぁ。」
「俺もそれ思っててんなぁ。」

夫婦で猛省した。

そして今後の方針が決まった。

「アイスは週末に、少なめの量で」

赤ちゃんの時から、消化器系がそんなに強くなかった娘。5歳のお姉さんになって、油断してしまっていたのかなぁ……。

とはいえ、アイスを頬張る娘の表情は幸せそのものだった。夏だからこそ味わえるあのおいしさを、諦めたくはない。

だからこそ、ほどほどに楽しもう。

子供の体調不良はいつも突然で、コントロールなんて難しいけれど、なるべく毎日登園させてあげたい。


ちなみに娘はその日中に回復し、家で遊び倒した。

「お風邪引いてないのに、お休みしたの、なんで」

と言って膨れていたけれど、もし無理に登園していたら、本当に風邪を引いていたかもしれない。

翌日にはまた元気に登園できたので、ひとまず安心している。

「あの時、アイスを食べなければ……」

自分のことならこんなにも後悔しないけど、わが子のこととなると、激しく動揺してしまうな……。

これからアイスを食べるたびに、今回のことを思い出さずにはいられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?