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【運動会】娘は緊張していたはずなのに、なぜか落ち着いているように見えた

秋が深まり、気づけば11月。今月の終わり、わが家は引越をする。その知らせを受けた春、当時4歳だった娘は幼稚園の入園式を控えていた。

年少の抽選に落ち、その代わりに入ったプレ幼稚園は中止となり、やっと、やっと入園できるのに。慣れた頃に転園させるなんて、あんまりではないか……。

そう嘆きながらも、

「せめて運動会は、こっちで出させてあげたい」

と夫にお願いした。

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夏休み明けの9月、運動会の練習が始まった。かけっこを楽しみにしていた娘は、

「私、走り方知ってるよ!」
「腕をよく振るんだよ〜」

などと得意気になっていたが、実際に走ってみると思うようにいかなかったらしい。

先生から聞いた話だと、

「もっとはやく走りたかった!」

と何度も泣いたそうだ。

「どうすれば早く走れるかな?」

先生はクラスのお友達を巻き込んで一緒に考えてくれた。

「前を向いて走る!」
「腕をたくさん振る!」
「脚を大きく動かす!」

みんなでアイデアを出し合いながら、何度も練習したとのこと。

「今日はね、〇〇ちゃんと走ったよ!」

運動会が近づくにつれ、そんな報告が増えた。うれしそうに話す娘を見ていると、はやく走れなくて泣いていたのが嘘のように感じた。

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晴れますように、風邪を引きませんように……。

そう祈りながら迎えた、運動会当日。娘は緊張していたはずなのに、なぜか落ち着いているように見えた。力一杯ではなく、少しだけ控えめに体を動かしていて、それがとても新鮮だった(普段はもっと暴れているのに)。

時折こちらを確認しては、ホッとした表情で手を振る。そしてまた、みんなの中に入っていく……幼稚園はすっかり彼女の居場所になっていた。

そっか、そうだよなぁ。

幼稚園に慣れなくて泣いていたことや、お友達ができてホッとしたこと、その先にある引越のこと……いろんなことが次々に頭をよぎる。それでも私は、きらきら輝いている娘から目を離せなかった。

念願のかけっこでは、一緒にスタートしたお友達の存在を確認しながら走る、娘の姿があった。誰かと一緒に走る楽しさとか、息がぴったり合う気持ちよさとか、そういうのを感じられるようになったらしい。

運動会の終わりには、ひとりひとりに大きなメダルが贈られた。首にかけてもらったときの、娘の晴ればれとした表情。一生、忘れられないよ。


コロナ禍で開催すら危ぶまれた運動会だったけど、当日はよく晴れて、両親とも参加できた。

声の代わりに拍手で応援するスタイルには慣れなかったけど……子どもたちには十分にうれしかったようで、それが何よりの救いだった。

「せめて運動会は、こっちで出させてあげたい」

その運動会が終わってしまい、なんだか祭りの後のような気分だ。引越まであと少し……。運動会後も行事が続き、その度に体調管理や準備に追われている。

残された時間を精一杯味わえるように、母もできるだけのことをやろう。

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