僕にはハッピープロセスしかこない。はじまりは終わりの始まり
ハッピーエンドってないんだ。いつも幸せなのは途中までで、僕には「ハッピープロセス」しか来ないのは何故なんだろう。
一昨日、ある方の開業祝いをした、結局それが終わりのはじまりだった。
その方は、難関士業の合格と共に若いながらも独立開業することが決まった。僕とは違って仕事も勉強もバリバリにできる。
一緒にご飯を食べた後、新宿の街の夜風に当たりながら一緒に散歩をした。9月の蒸し暑さとは一転して、上着を羽織っていても突き刺すような空気が肌寒い。
セブンイレブンで買ったカフェラテを片手に、高層ビルの下を二人肩を並べて談笑しながら歩いた。
そして、人気の少ない広場に着くと、徐ろに彼女の鞄から士業バッジを取り出し、彼女のスーツの胸のところにつけた。
「なんか偉そうにみえるよね?」
「偉いんだよ」
「そうだ、ここで一枚撮ってよ」
そう言って彼女はスマホを僕の手に渡すと、コクーンタワーの前に立って満面の笑みをしながら、シャッターをねだってきた。
「カメラの腕前はいつもいいんだよね」
そう、いつも僕にはそれくらいしか出来ることはない。たまに、彼女の努力している姿を後ろの方で励ましていたくらいで、何の勉強をしているのかも、どれだけ頑張っているのかもわかっていない。
そう、何もわかっていないんです。
でも、一つだけわかっていることがある。それは、彼女の心の中に、僕はいないってことである。いつも一緒にいたから「情」のようなもので繋がっているだけで、こんな僕にだって2人に未来が無いことは勘付いている。
「はい、スマホ」
数枚の写真を収めたiPhoneを彼女に手渡した時に、僕の左手に彼女の僅かな温もりが伝わった。思わず僕は、
「今日で会うのは最後にしよう、、、」
どう反応して良いのか、彼女は笑顔でキョトンとしている。数秒後、彼女は僕の言葉を理解したようで、
「わかった、、、」
僕が想像していたよりも、ずっとすんなりと受け入れられてしまった。きっと彼女にとっても迷いがあったのだろう。僕はずっと彼女の人生を引き止めてはいけないと思っていた。僕なんかに立ち止まらないで未来に向かって欲しい、、、
でも、本当は悲しくて、寂しくて、そしてただ寂しくてたまらなかった。だって僕は、2人の未来をずっと夢見て来たんだから。
1人で歩く新宿の夜風はあまりにも寒かった。ただただ溢れる涙で、都庁から見えるエメラルドグリーンの光が二重にも三重にも見えて、淡く瞬く新宿の街までもが僕を冷たく排除していた。
彼女の新しい人生の始まりは、僕との「情」の終わり。
僕には、きっとハッピーエンドは来ない気がする。
また、メンヘラサラリーマンに戻るのかぁ、、、はぁ、、、
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