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山田エズミ
2021年10月20日 13:01
秋の或る日、影郎は庭の畑の様子を見に実家へ戻った。畑は影郎が居た頃より若干荒れた感じがしたが、左人志は勤め人なのでそうそう手入れもしていられないのだろう。茄子もトマトも薹が立ってしまっている。 プランターのハーブを摘んで、影郎は家の裡に戻った。「お、影郎、帰って来ちょったんか」「畑、見に来た」「草村君はどうしちゅう」「なんか映像作家のひとの取材に行ってる」「ほんなこともしよんのか」
2021年10月11日 09:42
影踏みの鬼をしていたあの子は 逃げ廻る黒い染みを追いかけて 何処かへ行ってしまった 迷子になった子犬のように きっとひとりで泣いている 名前を呼んでも帰らない 探しても見つからない 繁る木々の中 冬の風が冷たく吹きすさぶ 呼び声が風に攫われて引き裂かれる 早く辿り着かなければ見失ってしまう その姿を追い続けなければ 名前すら忘れて仕舞うかも知れない どうかぼくの名を呼ん