AI小説・『宇宙の覇者』
第一章: 「星の裂け目」
宇宙の闇に浮かぶ惑星テオルス。その表面は荒れ果て、かつての豊かな緑と清らかな水は、戦争と略奪により消え去っていた。帝国の支配下にあるこの星は、銀河の辺境に位置し、長年にわたり無視されてきたが、ついに帝国の総督が派遣され、反乱を鎮圧するために残忍な手を使って統治していた。
若き戦士、カイルは父の背中を見て育った。彼の父はかつて名誉ある将軍だったが、帝国に抵抗した結果、裏切り者として処刑された。カイルはそのとき誓った――いつかこの星を取り戻し、父の名誉を回復すると。
カイルは反乱軍の一員として戦っていたが、戦いは困難を極めていた。帝国の圧倒的な戦力に対抗するため、彼らはゲリラ戦を余儀なくされ、星の大部分を支配する帝国軍に対して小さな勝利しか収められていなかった。だが、カイルの中には確かな希望があった。彼には、この戦争に終止符を打つ運命があると信じていた。
ある夜、カイルは密かに集まった反乱軍の指導者たちと共に作戦会議を開いた。彼らは帝国の総督が近くの都市ガラドを視察するという情報を得ていた。その機会を利用し、総督を暗殺する計画を立てるのがこの会議の目的だった。
「ガラドは要塞化されている。直接攻め込むのは無謀だ」とカイルの友人であるローレンが言った。彼女は冷静で賢い指導者で、しばしば感情的になるカイルを抑える役割を担っていた。
「無謀だが、他に道はない」とカイルは応じた。「総督を倒せば、帝国はこの惑星から撤退するか、少なくとも混乱する。その隙に我々が勢力を取り戻すんだ。」
議論は続いたが、決定的な策は見つからなかった。皆が頭を抱え始めたころ、突然扉が開き、一人の男が静かに入ってきた。その姿は薄汚れ、まるで戦場の幽霊のようだった。
「俺がやる」と、低い声でその男は言った。
全員がその方向に視線を向けた。男の名はリオン。謎に包まれた戦士で、最近反乱軍に加わったばかりだった。彼の過去や目的は誰も知らず、ただ一つ分かっているのは、彼が無類の強さを持つということだけだった。
「君は…?」カイルが問いかけると、リオンはカイルを一瞥し、冷たく言い放った。
「俺が総督を暗殺する。俺のやり方でな。」
カイルはその提案に驚いたが、同時にリオンの自信に引き込まれていた。彼の存在感は圧倒的で、誰もが言葉を失っていた。
「やり方というのは?」ローレンが問い詰めた。
「それを知る必要はない。ただ、俺に任せれば総督は死ぬ。それで十分だろう?」
その場の空気は一瞬凍りついたが、カイルは決断を下す。
「わかった。リオン、君に総督暗殺を任せる。ただし、成功しなければ俺たちは全滅だ。覚悟しておけ。」
リオンは一言も発さず、ただ静かに頷いた。
カイルは自らの決断が正しいのか疑問を抱きつつも、星の裂け目を越えるような大きな運命の転換点が近づいていることを感じていた。
夜空の下、カイルは戦士としての成長と、運命に抗うための第一歩を踏み出そうとしていた。その時、彼の胸には父の残した名誉と、星を取り戻すための強い意志が渦巻いていた。
だが、これがすべての始まりであるとは、まだ誰も知らなかった。
第二章: 「無名の戦士」
リオンが反乱軍に加わってから数日が経った。彼の動きは早く、鋭く、まるで戦場に生まれ落ちたかのような戦士だった。だが、彼が一体何者なのか、その詳細を知る者は誰もいなかった。反乱軍の一員として活動しながらも、リオンは一切の感情を表に出さず、淡々と任務をこなすだけだった。
カイルは、リオンの素性に興味を抱いていた。彼の戦闘能力は一目でわかるが、その背後にある過去や信念が全く見えなかったからだ。どんなに激しい戦いでも、彼の眼差しは冷静で、何も揺るがすことがなかった。リオンはまるで感情を持たない機械のように見える時さえあった。
ある夜、カイルはリオンと共に次の作戦に備えていた。彼らの目標は、帝国の補給線を断つことだった。補給線の切断は、帝国の戦力に大きな打撃を与えるだろう。しかし、その作戦にはリスクも伴っていた。補給基地は厳重な警戒態勢にあり、無謀な攻撃は自滅に繋がる恐れがあった。
カイルはリオンに問いかけた。
「なあ、リオン。君は一体何者なんだ? どうして俺たちのところに来たんだ?」
リオンは無言でカイルを見つめた。しばらく沈黙が続いた後、彼は口を開いた。
「過去は関係ない。今は戦うだけだ。それ以上のことは話す必要はない。」
カイルはその冷たい返答に内心不満を抱いたが、深く追及することは控えた。リオンの存在は、反乱軍にとって不可欠な戦力になりつつあった。しかし、その正体が不明であることは、仲間たちの間に不信感を生み始めていた。
次の日、カイルとリオンは補給基地の偵察を行うために、少人数のチームを率いて密かに出発した。道中、カイルはリオンの動きを観察していた。彼の歩き方、周囲への注意の払い方、すべてが精密で、まるで訓練を受けたエリート兵士のようだった。だが、それ以上に驚いたのは、リオンが全く疲れを見せずに行動していることだった。
補給基地に近づくと、彼らは物陰から敵の様子を伺った。カイルは小声で作戦の確認を始めたが、リオンはすぐにカイルを制した。
「言葉は無用だ。俺に任せろ。」
そう言い放つと、リオンは単独で基地に向かって進み出した。カイルは驚きつつも、その行動を止めることはできなかった。リオンはあっという間に敵の見張りを倒し、基地の中心に潜入していった。その手際の良さは、まるで訓練された暗殺者のようだった。
カイルと仲間たちは、リオンの後に続き、基地内に突入した。彼の指示に従い、補給線を無力化することに成功した。しかし、カイルの心には疑念が残った。なぜリオンはこれほどまでに巧みに戦うのか? そして、彼が追い求めるものは何なのか?
作戦が無事に終了し、彼らが拠点に戻った後、カイルは再びリオンに問いかけた。
「君は、いったい何を求めているんだ? この戦いの先に、君が見ているものは何なんだ?」
リオンは一瞬、カイルの目をじっと見つめたが、すぐに視線を外し、静かに答えた。
「戦いが終われば、俺は消える。それだけだ。」
カイルはその言葉に一層の謎を感じた。彼の目的は一体何なのか? 彼が背負っている過去はどのようなものなのか? カイルはその答えを求めようとしたが、リオンはすでにその場を離れていた。
リオンの正体は依然として謎のまま。しかし、彼の存在が戦局を大きく変えるであろうことは、誰もが感じていた。そしてカイルは、彼との関係がこの戦争の鍵を握ることになると直感していた。
それでも、リオンがもたらす未来は、反乱軍にとって希望なのか、それとも破滅なのか――カイルにはまだわからなかった。
第三章: 「大いなる戦略」
補給基地の破壊に成功した反乱軍は、勢いを増していた。帝国の補給線が断たれたことで、帝国軍は一時的に混乱し、惑星テオルス全体に緊張が走った。反乱軍にとって、次なる目標は銀河帝国の戦略的に重要な惑星パルシスの攻略だった。パルシスは帝国の前線基地であり、ここを制圧すれば、反乱軍は大きな軍事的優位を得られる。しかし、パルシスは帝国にとって要であり、その防衛は強固だった。
反乱軍のリーダー、カイルはこの作戦を練るべく、部下たちとともに作戦会議を開いた。パルシスの攻略は、反乱軍の命運を左右する一大事であった。
「パルシスを攻略するには、まず要塞の防御網を無力化しなければならない」とカイルは地図を指し示しながら話し始めた。「このエネルギーシールドは、我々の通常兵器では突破できない。しかし、基地内に潜入し、シールドを内部から停止させることができれば、全軍で総攻撃を仕掛けることができる。」
反乱軍の戦士たちは真剣な表情でカイルの説明を聞いていたが、その計画の難易度に不安を感じていた。要塞内部に潜入するというリスクの高い作戦は、失敗すれば反乱軍全体の壊滅を招きかねない。
「これは無謀だ、カイル」と、参謀の一人であるローレンが声を上げた。「シールド内部に潜入するのはほぼ不可能に近い。もし捕まれば、全滅は免れない。」
その言葉に一同が沈黙する中、リオンが口を開いた。
「無謀でも、それが唯一の道ならやるしかない。」
カイルはリオンの冷徹な言葉に一瞬驚いたが、彼の視線は揺らがない。リオンの提案は常に大胆で、時には危険を伴うものであったが、その実力は誰もが認めざるを得なかった。
「俺たちは、これまで生き残ってきたのは奇跡だ。だが、これ以上の奇跡に頼ることはできない」とリオンは続けた。「正面から攻撃するのではなく、内部から崩壊させるしかない。俺が先行して潜入する。シールドの制御装置を破壊し、全軍が攻撃を開始するタイミングを知らせる。それが最も確実な方法だ。」
カイルは一瞬考え込み、やがて決断を下した。
「リオンの言う通りだ。私たちは時間がない。この惑星を救うためには、リスクを取らなければならない。」
カイルの言葉に一同が頷いたが、その顔には緊張が走っていた。この作戦が失敗すれば、反乱軍は全滅し、テオルスは完全に帝国の支配下に置かれるだろう。
その夜、カイルは一人で星空を見上げていた。銀河の果てに広がる無数の星々は、遠い昔の平和な時代を思い起こさせた。しかし今、その平和は戦火に包まれ、彼自身もまた戦士として生きざるを得なかった。
「父さん…俺は正しい道を進んでいるのだろうか?」と、カイルは静かに呟いた。
リオンの計画に乗ることが果たして正解なのか、カイルは心の中で葛藤していた。彼はリーダーとして、部下たちの命を預かる責任を背負っていたが、リオンの冷徹な戦略に従うことで多くの犠牲を出す可能性があった。だが、他に選択肢はなく、戦いに勝つためにはリスクを取らざるを得ない。
その時、リオンが静かにカイルの側に現れた。
「迷っているのか?」とリオンは無表情で問いかけた。
カイルは驚きつつも、すぐに気を取り直して答えた。
「君には分からないかもしれないが、俺は皆の命を背負っている。俺の一つの決断が、彼らの未来を左右するんだ。」
リオンはしばらくカイルを見つめ、静かに言った。
「リーダーというのはそういうものだ。戦場では感情を捨て、冷静に最善の策を選ぶことが求められる。それができなければ、戦いに勝つことはできない。」
カイルはその言葉に反発する気持ちを抑えつつも、リオンの言葉には一理あると感じた。
「君は冷たいな…」とカイルが呟いた。
リオンは微笑むこともなく、ただ一言だけ返した。
「俺は戦いの中でしか生きられない。それだけだ。」
カイルはリオンの背中を見送りながら、自分とは全く異なる存在であることを改めて感じた。だが、今は彼の力が必要だ。戦いの中でしか生きられない戦士と、未来を信じて戦う自分――二人の道は異なっていても、今は同じ戦場に立っている。
作戦の日が近づく中、カイルは部下たちに最後の指示を与え、戦闘の準備を進めた。そして、リオンは単独で要塞への潜入を試みることとなった。
彼らの運命はこの一戦にかかっていた。
第四章: 「仲間の犠牲」
作戦当日、緊張感が反乱軍の中に漂っていた。リオンは単独で要塞に潜入し、内部からシールドを無力化するという重要な任務を任されていた。一方、カイルと彼の仲間たちは外部でリオンの合図を待ちながら、攻撃準備を整えていた。
その時、カイルの心は不安でいっぱいだった。リオンに全てを託すことへの懸念が募っていたが、今さら後戻りはできなかった。彼は信じるしかなかった――リオンが任務を成功させ、自分たちに勝機をもたらすことを。
「行くぞ!」カイルが部下たちに指示を飛ばし、全員が武器を手にした。
作戦が開始され、反乱軍は要塞の周囲を取り囲みつつ、リオンからのシグナルを待った。しかし、時間が経つにつれて、リオンからの合図がないことに全員が不安を覚え始めた。敵の動きも活発になり、帝国軍のパトロールが増えてきている。
「リオンはどうしたんだ?」ローレンが焦りを隠せずに言った。
カイルも同じ気持ちだった。作戦が成功しなければ、ここで全滅する可能性が高かった。しかし、彼は仲間を鼓舞するため、強い声で言い放った。
「リオンを信じろ。彼は必ずやってくれる。」
その言葉が届いたのか、仲間たちは一瞬だけ士気を取り戻した。しかし、その時、敵の偵察機が彼らの存在を察知した。帝国軍の防衛システムが作動し、要塞の外側にいる反乱軍に対して攻撃を開始した。
「くそっ、急げ!配置につけ!」カイルは叫び、全員が一斉に行動を開始した。
帝国軍の兵士たちが次々と押し寄せ、反乱軍との激しい戦闘が始まった。エネルギー弾が飛び交い、爆発音が響き渡る中、カイルは前線で指揮を執りながら仲間たちを奮い立たせた。しかし、敵の圧倒的な数に押され、次第に反乱軍は後退を余儀なくされた。
その時、ローレンが目の前で倒れた。彼女はエネルギー弾を受け、地面に崩れ落ちた。カイルは彼女の元に駆け寄り、手を握りしめた。
「ローレン、しっかりしろ!」カイルは必死に呼びかけたが、彼女の顔には痛みに耐える表情が浮かんでいた。
「…カイル、私はもうダメだ…でも、君は進んで…私の分まで…戦って…」ローレンは息も絶え絶えに言葉を紡いだ。
カイルの胸に押し寄せる絶望感。しかし、彼はその言葉に応えるように、涙を堪えながら強く頷いた。
「必ず勝つ。君の犠牲を無駄にはしない。」
ローレンは微笑んだ後、静かに目を閉じ、彼女の体は冷たくなっていった。カイルは拳を握りしめ、怒りと悲しみを抑えながら立ち上がった。
「皆、ローレンが命を賭けてくれた!これ以上、退くわけにはいかない!」
彼の声は反乱軍の戦士たちに響き、彼らは再び立ち上がり、敵に立ち向かっていった。だが、戦況は依然として厳しく、帝国軍の包囲網はますます強固になっていく。
その時、空に異変が起こった。要塞を包むシールドが突如として消失し、リオンからの合図がようやく届いたのだ。彼は任務を完遂し、シールドの制御装置を破壊したのだ。
「今だ!全軍、突撃!」カイルは全力で叫び、反乱軍は一斉に要塞に突入した。
リオンの計画通り、シールドがなくなったことで帝国軍の防御は一時的に脆弱になり、反乱軍は要塞内部に侵入することに成功した。カイルは仲間たちと共に、帝国軍の司令部へと突き進んでいった。
しかし、彼の心にはローレンの死が重くのしかかっていた。彼女の犠牲を無駄にしないためにも、この戦いに勝たなければならない。しかし、勝利が近づくほどに、さらなる仲間の命が失われていく現実がカイルを苦しめ続けた。
激戦の末、反乱軍はついに要塞の制圧に成功した。帝国軍の兵士たちは撤退し、パルシスの重要拠点は反乱軍の手に渡った。しかし、その代償は大きかった。多くの仲間が命を落とし、ローレンの死もカイルに重くのしかかっていた。
「これが戦いの現実だ」とリオンは冷静に言った。「勝利には常に犠牲が伴う。感情に流されるな、カイル。まだ終わっていない。」
カイルは無言でリオンを見つめた。彼の言葉が正しいことは理解していたが、彼にはどうしても納得できないものがあった。感情を捨てることが正しいのか、仲間の犠牲をどう受け入れるべきか、カイルはその答えを見つけることができなかった。
だが、今は前に進むしかない。この戦いは、まだ終わりを迎えていないのだから。
第五章: 「裏切りと忠誠」
パルシスの勝利から数週間が経過し、反乱軍は帝国に対して大きな優位を得た。しかし、その勝利の裏には、犠牲となった仲間たちの命が重くのしかかっていた。カイルはリーダーとしての責任を果たし続けながらも、心の中ではローレンの死を始めとした仲間の喪失に苦しんでいた。
一方、リオンの存在は反乱軍内で物議を醸していた。彼の謎めいた過去、圧倒的な戦闘力、そして冷徹な判断力は、一部の戦士たちに恐れと不信感を抱かせていた。
「リオンは本当に我々の仲間なのか?」ある夜、カイルの元に集まった参謀たちは、重苦しい表情で口を開いた。
「確かに、リオンは戦闘で大きな成果を上げている。しかし、彼の過去があまりにも不明瞭だ。最近、帝国のスパイだったという噂が広がっている…もし、それが本当なら?」一人の参謀が静かに言った。
カイルはその言葉に動揺しながらも、冷静さを保とうとした。リオンがスパイであるという疑惑は、すでに仲間たちの間でも囁かれていたが、確たる証拠は何もなかった。それでも、不信感が広がり始めた今、この問題を無視することはできなかった。
「リオンがスパイだという証拠はない」とカイルは強く言った。「だが、彼の行動に注意を払う必要はある。俺自身も、彼が何を考えているのかはわからない…しかし、今は彼の力が必要だ。」
会議が終わり、カイルは一人思案に耽った。リオンに対する疑念は拭えなかったが、彼の助けがなければ、これまでの戦いで勝利することはできなかった。カイルは自らの判断を信じるしかなかったが、心の奥底には何かが引っかかっていた。
その夜、カイルはリオンに会うため、静かに彼の宿舎を訪れた。扉を開けると、リオンは無言で窓の外を見つめていた。カイルは彼に問いかける。
「リオン、君に聞きたいことがある。君は一体何者なんだ? なぜ、俺たちのために戦う?」
リオンはカイルの質問にすぐには答えなかった。しばらくの沈黙の後、彼は静かに口を開いた。
「俺は、かつて帝国の兵士だった。」
その言葉にカイルは驚きを隠せなかったが、リオンは続けた。
「俺は帝国に忠誠を誓い、数多くの戦場を渡り歩いてきた。だが、ある時気づいたんだ。俺たちが守っているものは、ただの権力者たちの欲望に過ぎないと。」
リオンの声には冷静さがあったが、その中には深い憤りも感じられた。
「だから帝国を捨てた。そして今、俺は自分の正義のために戦っている。」
カイルはリオンの言葉を聞きながら、彼が背負っているものの重さを感じた。しかし、リオンがかつて帝国の兵士であったことが、反乱軍にとって大きな不安材料であることは変わらなかった。
「だが、君は今も仲間から疑われている。君がスパイではないかと。」
リオンはその言葉に対して微かに笑みを浮かべた。
「疑うのは当然だ。俺はどこに行っても信用されない。それが俺の宿命だ。」
カイルはその言葉に何も言えなかった。リオンはただ戦うことしかできない男であり、その中で自らの居場所を探し続けているのだろう。しかし、彼の過去が完全に信用できない以上、反乱軍の中での立場は常に危うい。
その翌日、反乱軍は新たな作戦を開始する予定だった。カイルたちは帝国軍の重要な拠点を攻撃し、さらに勢力を拡大する計画を立てていた。しかし、作戦開始直前、反乱軍の拠点が何者かに襲撃された。
「帝国軍が急襲してきた! 内部の情報が漏れている…誰かが我々を裏切ったんだ!」戦士たちが混乱の中で叫んだ。
カイルの心に疑念が走った。リオンが裏切ったのか? それとも、別の誰かがスパイだったのか? 情報が漏れるタイミングがあまりにも不自然だった。
混乱の中、カイルはすぐにリオンを探した。彼が姿を消しているのではないかと心配していたが、リオンはすでに最前線で戦っていた。彼は迷わず敵を切り倒し、反乱軍を守っていた。
カイルはその姿を見て、自分の疑念が間違っていたのではないかと思い始めた。リオンはスパイではない。彼は確かに反乱軍のために戦っている――少なくとも今は。
しかし、内部にスパイがいるという事実は消えない。誰が裏切り者なのか、カイルはその正体を突き止める決意を固めた。
襲撃が収まり、反乱軍は再び落ち着きを取り戻したが、カイルの中では新たな疑念が芽生えていた。リオンがスパイでないなら、誰が? カイルは、仲間たちの中に潜む裏切り者を見つけ出さなければならないという新たな使命を背負った。
そして、リオンに対する信頼は徐々に深まっていった。彼は過去を背負いながらも、今は反乱軍のために戦い続けている。しかし、その忠誠がどこまで続くのか、カイルにはまだ分からなかった。
裏切りと忠誠が交錯する中、カイルはこの戦いの行方を見極めるために、さらなる試練に立ち向かうことになる。
第六章: 「最終決戦」
反乱軍は苦しい戦いの末、ついに銀河帝国の最終拠点である「ブラックステーション」へとたどり着いた。帝国の中心部に位置するこの巨大な宇宙要塞は、何層にも及ぶ防衛システムと強力な軍事力で守られており、まさに帝国の象徴とも言える存在だった。これを攻略しなければ、テオルスの自由は訪れない。
カイルは仲間たちと共に作戦会議を開いていた。ブラックステーションの内部に潜入し、要塞の心臓部であるエネルギーコアを破壊することが、帝国の打倒には不可欠だった。しかし、その作戦には危険が伴い、これが最後の戦いになることは誰もが理解していた。
「この作戦が成功すれば、帝国は崩壊するだろう。だが、失敗すれば我々は全滅だ。」カイルは冷静な声で語った。「リオン、お前には再び重要な役割を担ってもらう。潜入部隊を率いて、コアの破壊を頼む。」
リオンは無言で頷いた。これまでと同様に、彼は冷静かつ無感情だった。しかし、カイルはその姿に信頼を感じる一方で、どこか不安も抱いていた。リオンの過去の真実、そして彼の最終的な目的がまだ完全には明らかになっていなかったからだ。
作戦は開始された。反乱軍の主力部隊がブラックステーションの外部で敵軍と激しく戦闘を繰り広げる中、カイルとリオンを含む精鋭部隊は内部への潜入を試みた。要塞の防御は厳重だったが、リオンの驚異的な戦闘力とリーダーシップによって、次々と障壁を突破していった。
カイルはリオンの背中を見つめながら、戦場で彼が一体何を考えているのかを知りたかった。リオンは常に冷静で、感情を一切表に出さない。それが彼の強さであり、同時にカイルが抱く最も大きな疑念でもあった。
最終的に、彼らはエネルギーコアにたどり着いた。コアを破壊すれば、ブラックステーション全体が崩壊し、帝国は機能を失う。しかし、そこに待ち構えていたのは、帝国軍の総督ラグナスだった。彼は帝国軍の中でも最強の戦士として名を馳せ、冷酷無慈悲な統治者として恐れられていた。
「よくここまでたどり着いたな、反乱軍の残党ども。しかし、ここで終わりだ。」ラグナスは笑いながら言った。
リオンが前に進み出た。
「お前が帝国の頂点か。俺が終わらせてやる。」
その言葉を合図に、リオンとラグナスは激しい戦いを繰り広げた。彼らの戦いは凄まじく、まるで二人の巨人が激突しているかのようだった。リオンの攻撃は正確で鋭く、ラグナスも負けじと応戦する。カイルはその光景を見守りながら、自分にできることは何かを考えた。
戦いの中、カイルはリオンの背後に回り込み、コアの制御装置を破壊する準備を進めていた。しかし、その時、ラグナスの言葉が耳に入った。
「リオン、お前も帝国の捨て駒だということを忘れたのか? 反乱軍に手を貸すとは、哀れだな。」
カイルは驚き、リオンに目を向けた。リオンは一瞬だけ動きを止め、ラグナスを睨みつけた。
「俺はもう帝国のためには戦わない。」
ラグナスは嘲笑した。「そうか。しかし、お前が背負っているものから逃れられると思うな。この戦いが終わっても、お前の運命は変わらない。」
リオンは無言で剣を振り下ろし、ラグナスを倒した。彼の冷静さは最後まで崩れることなく、カイルはリオンの強さに改めて驚嘆した。しかし、ラグナスの言葉が残した疑念は消えなかった。
コアの破壊が成功し、ブラックステーションは崩壊を始めた。カイルとリオンは急いで脱出し、要塞から遠ざかった。帝国軍は壊滅し、反乱軍はついに勝利を手にした。
惑星テオルスに戻った後、反乱軍は勝利の喜びに包まれていた。しかし、カイルの胸には一つの疑問が残っていた。リオンはその後、何も告げずに姿を消していた。彼は本当に帝国を裏切ったのか、それとも彼自身の目的のために戦っていたのか? カイルにはその答えを知るすべはなかった。
リオンの行方は誰にもわからない。彼はただ、戦いの中に身を置き続ける存在だったのだろう。カイルは彼との出会いを思い返しながら、今後もこの惑星を守るために戦い続けることを決意した。
仲間たちの犠牲の上に成り立った勝利。それは甘くもあり、苦くもあった。カイルはその重さを胸に抱きながら、新たな時代に向かって歩み始めた。
しかし、リオンの存在は、今もなおカイルの心に深く刻まれていた。彼が果たしてどこに消えたのか、そして彼の本当の忠誠心がどこにあったのか。それを知る者は、もはやこの銀河にはいなかった。
この最終決戦を経て、カイルはリーダーとして成長し、テオルスに平和をもたらした。しかし、その代償はあまりにも大きく、彼は今もなお、失った仲間たちのことを忘れることはできなかった。
おわり
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