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猫と暮らす100年越えの古民家⑧

  毎朝、罠の見回りをしていると、鹿によく出会う場所がある。最初の頃はなんとなく、ぼんやりとした輪郭のようだったものを、だいたい居る場所、時々出てる場所、のような仕方ではっきりと地形を覚えたように思う。
  そうした場所で1人待ち、何頭か獲るうちに、場所の記憶として定着する。待ち伏せ、という方法が良いかどうかはわからないけれど、木々の音を聞きながら、山に身を沈めているような感覚が好きだなぁと感じる。

  帰宅してすぐ、獲れたての鹿肉を茹で、タマコに何度かあげて見たことがある。
くんくんと匂いを嗅ぐものの、口にしたことは一度もなかった。好みではないのか、猫は鹿を食べないのか。
  自分用に焼きはじめると、煙が天井へのぼってゆくのだが、この家には換気扇が無い。無いけれど、どんな調理をしようとも、室内に匂いが残ったりはしないので、換気は出来ているらしい。

   いつしか、タマコは一緒に眠るようになった。
そして朝、目覚ましのアラームが鳴っても、自分がすぐに起きないと起こしに来る猫になった。
    最初は控え目な「にゃ」と共に、ぷにぷにした肉球で私の額をむにゅうと押してくる。そこでも起きないと今度は「にゃ」と共に、少しだけ出した爪を額に食い込ませ、「痛い痛いわかったわかった」と私が起きあがるシステム。

  親切なのか心配なのか、それとも習慣を覚えての行動なのかわからないけれど、目覚ましを止めて少しすると肉球押しをしてくるので、自分のことをよく観察してるのではないのかなと。

 猫って面白いなぁ。

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