見出し画像

第45回 ベスト・キッド2(1986 米)

 『ベスト・キッド』シリーズを連続レビューと言っておきながら、よりにもよって『河内のオッサンの唄』のようなキワモノ入った映画を挟んだのにもそれなりの理由があります。

 河内と言えば河内音頭だと力説したわけですが、今回紹介する『ベスト・キッド2』もまた盆踊りがストーリーのキーになるのです。

 ミヤギが一度は捨てた故郷沖縄へ帰還。付き従ったダニエルと一緒に過去の因縁を生産するつもりが余計に因縁が出来てしまってひと騒動という筋書きです。

 フィリピンやベトナムで間に合わされたという明らかにおかしい沖縄の風景が笑いを誘いますが、ミヤギは女にも男にもモテモテです。昔の男が登場してBL的には前作以上の美味しい出来になっています。

ベスト・キッド2を観よう

AmazonとU-NEXTにて配信があります

真面目に解説

オメコ芸者アリ
 メインヒロインであったはずのアリは今回限りでお役御免となります。というよりも、このシリーズのヒロインは使い捨てなのです、

 ダニエルを捨ててUCLAのフットボール選手に走ったうえ、ダニエルの車をぶつけて壊してしまうという最悪の別れ方をします。

 金持ちなんだから弁償すればいい物を、とんでもないオメコ芸者です。しかし、『コブラ会』のシーズン3は彼女が軸になりそうなので非常に楽しみにしています。


沖縄へ行こう
 そうこうしているとミヤギの父親が危篤だという手紙が届きます。送り主はミヤギの元恋人。しかし、彼女の両親は経済的な問題からミヤギの友人で地主の倅のサトウと結婚させようとしたのです。

 しかし、ミヤギはこの縁談を拒絶して彼女との結婚を宣言。面子を潰されたサトウはミヤギに決闘を申し込みますが、ミヤギはこれを嫌って身を引き、翌日沖縄を去ってしまうのです。

 パット・モリタとは思えないロマンスです。これなら無理して三船敏郎に頼むべきでした。

 しかし、ミヤギはハワイで新しい恋に目覚めてしまったのは前作で知れたとおりです。やっぱりモリタ向けですね。


雑沖縄
 というわけで二人は沖縄に飛ぶわけですが、本作の沖縄は信じられないほどいい加減です。私の知っている沖縄じゃありません。

 一応右側通行ですが、車はアメ車ばかり。ロカビリーが流行っており、雰囲気としては返還前を思わせる半端なアメリカンテイストにあふれています。街の風景も東映のヤクザ映画に出てくる闇市みたいです。

 更に漁村は「漫画日本の歴史」とかに出て来る地主に搾取される寒村そのものです。なにしろ農作物の買い取りに不正な秤が使われるのです。

 農協はこういう事態を避けるために作られたものだと思っていましたが、アメリカ人にとって農協とは迷惑な観光客でしかなかったのでしょう。

 極めつけはミヤギの故郷は那覇の南のトミ村という設定ですが、行ってみると嘉手納基地になっています。

 那覇の南でトミというからには豊見城なのでしょうが、あの辺には基地はありません。第一嘉手納基地は那覇の北です。

 隣の州にも関心を持たないのがアメリカ人とは言え、図書館に行けば地図くらいはあったはずです。しかし、低予算シリーズの2作目はまあこんなもんです。

 しかし、ダニエルが「10日で1万5千人のアメリカ兵が死んだ」と沖縄戦について語れば、ミヤギは「15万の沖縄人もな」と返すところに一応この映画が日本へのリスペクトを忘れていないところは窺えます。アメリカの戦争映画で敵の死者数など勘定するものはまず存在しません。


執念深いウチナー
 沖縄に行くとサトウの甥っ子のトグチ(ユウジ・オクモト)という青年が出迎えます。ここでサトウのフルネームがトグチ・サトウである事が知れるのです。

 佐藤という人はそこら中に居ますが、私は下の名前がサトウという人には未だお目にかかった事がありません。

 そして「沖縄では面子は何より大事」というミヤギの言葉通り、今や富豪となったサトウ(ダニー・カメコナ)が戦えと要求してきます。けどミヤギは相手にしません。

 実家に行ってみるとミヤギの父(チャーリー・タニモト)を火種の女ユキエ(ノブ・マッカーシー)とその姪のクミコ(タムリン・トミタ)が看病しています。

 涙ながらの再会を果たすミヤギとユキエ。ユキエはミヤギを今でも愛していて独身を通しています。本作の沖縄の人々はハブのように執念深いのです。

 しかし、この師弟は結構女関係にだらしないので、二人して沖縄女とたちまち深い仲になってしまうのです。

 ダニエルは盆踊りを近所の子供に教えるダンサー志望のクミコとの新しい恋に走り、ミヤギもユキエと老いらくの恋に花を咲かせる。本note的には美味しくない話ですが、まあ当然の帰結ではあります。

 ダニエルとクミコはトグチの妨害もあって却って仲を深めていきますが、ミヤギとユキエについては最初からできていたのが蔵出しされた形なのでもっとストレートです。もう事実上夫婦です。


沖縄やくざ戦争
 本作で特筆すべきはトグチのヒールぶりです。ジョニーの比じゃありません。ほぼヤクザです。沖縄ヤクザは日本一凶暴なので、ある意味一番リアルです。

 サトウの誘拐の片棒を担ぎ、ダニエルに因縁をつけて襲撃し、村の畑や道場を破壊し、挙句は槍でダニエルを殺そうとします。

 クミコに平気で手をあげる女々しさや、その後のヘタレぶりも含めて見事な悪役ぶりです。オマケにチンピラのメインウェポンのバタフライナイフまで使いこなすのです。

 ここまでくるとアメリカの川谷拓三です。拓ボンよりは大分いい男ではありますが、バタフライナイフを使って勝てるのはキムタクだけです。


謎沖縄
 何故か沖縄の人々は皆でんでん太鼓を持っていて、盆踊りを何よりの楽しみにしています。でんでん太鼓からダニエルが極意を学ぶという訳の分からん話しがこの映画のメインテーマです。

 盆踊りも沖縄のそれは内地のそれとは大きくかけ離れたものですが、本作の盆踊りはやっぱり日本のどこの物とも違っていい加減です。

 アメリカでも日系人の多い街では盆踊りをやるのでその辺に取材したのでしょう。リトルトーキョーではあんな盆踊りをやるのかもしれません。

 そして本作での盆踊りは城跡でやるのが本式なのだそうです。尚巴志王の城だそうですが、明らかに西洋風です。フィリピンロケらしいのでスペイン人が作った砦か何かでしょう。

 ダニエルとクミコはこの城跡で能天気なコンティサウンドに乗せてデートしちゃうのです。そして、クライマックスで使われる奇怪な盆踊りもコンティが作曲したとすれば驚きの幅の広さです。スタローンと違って器用な御仁です。

 神道の説明は入る一方で道場に仏壇が置かれていたりと何処まで行っても細かい所はいい加減ですが、茶道の描写はそれなりに頑張っていたりと、まあリスペクトは忘れていない様子なので好感が持てます。誠実さが世の中大事なのです。


死霊の盆踊り
 最後はトグチが城跡での盆踊り大会を襲撃し、クミコを人質にとってダニエルとのサシの勝負となります。

 何故かギャラリーがでんでん太鼓を打ち鳴らす中、ダニエルはでんでん太鼓の極意を体得して勝利を拾います。

 しかし、その極意は割としょうもない代物です。結局は地のミヤギイズムが勝利のカギでした。しかし、でんでん太鼓は『コブラ会』でもキーアイテムなのです。

BL的に解説

ミヤギ×ダニエル
 さて、ミヤギ先生がいかに立派な指導者であろうと、少々ノンケに走ろうと、少なくともこのnoteにおいてはイタリア系好みの少年愛者である事は変わらないわけです。

 映画がダニエルのシャワーシーンから始まるのがすべてを物語っています。わざわざ見えるところで待っているミヤギに下心があろうはずがないのです。

 アリがダニエルをふったのもミヤギにとっては大チャンスです。そして引っ越しを嫌がるダニエルの為に庭に客室をこさえます。二人の愛の巣です。ダニエルは寝技もどんどん強くなっていくのです。

 沖縄でも二人は女は別にしていちゃつきます。特に父親を亡くすことに関しては"兄弟子"であるダニエルが傷心のミヤギを波打ち際で励ますシーンは感動です。

 そして次のシーンで稽古に入るのは非常に意味深です。あの衆道時代劇『戦国自衛隊』を想起します。事実上の朝チュンというわけです。

 氷割りにミヤギ自ら賭けたのも完全にダニエルを信頼しきっていた証拠です。大学の学費をなげうってまで付いてきてくれたダニエルへの恩返しでもあります。

 そして、クミコもユキエもアメリカに連れて行ってほしいと懇願しましたが、結局行かなかったのは二人にとって所詮女はコンドームになっていたことの証拠です。

 ノンケならちゃんと英語が喋れる二人を連れて行かない手はありません。しかし、二人を連れて行けばダニエルとミヤギの仲は従来のようにはいかなくなります。二人は女より男を取ったのです。

 トグチとの殺すか殺されるかの勝負でもミヤギは冷静です。「感情で戦をすれば正しくとも負ける」とはミヤギの弁。トグチに勝ち目など最初からないのです。

 すべてが終わり、ミヤギとダニエルは沖縄女とお互いを存分に楽しみ、新築の愛の巣へと戻っていくのです。


クリース×ジョニー
 クリースはベトナム帰りで陸軍の空手チャンピオンという経歴の持ち主で、車のガラスを殴って割れる程度の実力はありますが、ベトナム帰りだけに精神的に荒廃しています。

 趣味で金髪の少年ばかり集めているという説『ベスト・キッド』でも紹介しましたが、ジョニーを破門する様は明らかに歪んだ愛情の裏返しです。

 負けは許されないというコブラ会の理念を最も体現したのが誰あろうジョニーであり、俺のジョニーは負けないとクリースは固く信じていたのです。

 しかし、ダニエルに負けたのです。歪んだ愛情が間違った方向に爆発してしまうのです。

 挙句の果てにはジョニーを破門し、手をあげます。しょうもない理由で小姓を手討ちにするバカ殿そのものです。

 そしてミヤギにどうにか助けられたジョニーはシリーズから姿を消し、この度『コブラ会』で劇的に復活を果たしたわけです。

 大人になったジョニーの理念にはミヤギの間接的な影響が見て取れます。ジョニーにとってもミヤギはまた師匠なのです。

 そこへクリースが現れて話がこじれるのです。昔の男の登場。ほとんど昼メロ状態ですが、これについては本番のために大事に取っておきます。

ミヤギ×クリース
 クリースのあまりに横暴で見苦しい振る舞いに立ち向かったのがミヤギでした。

 殴り掛かるクリースですが、ミヤギにいとも簡単にかわされて車の窓をぶち割った挙句両拳を大けがして肉体的にやられます。

 そしてミヤギに「敵に情けは無用だ」とコブラ会の道場訓をかまされ、殴られるかと思いきや、そこはミヤギなので鼻をつまむという精神攻撃で勘弁してくれます。

 思えば千葉ちゃんも『激突!殺人拳』で山田吾一の鼻に何かというと指を突っ込んでいました。空手家は鼻に執着するものなのかもしれません。

 へたり込むクリースをしり目に「許す心を持たぬ者は死ぬより辛い日々を過ごさねばならん」と実に重い人生訓をダニエルに授け去っていきます。

 問題はこの後です。弟子思いで女関係に理解のあるミヤギのことなので、今夜はお楽しみであろうダニエルを気遣ってさっさと送り届けて帰すはずです。

 その後、ミヤギは名誉勲章を首に下げてコブラ会の道場を訪れます。クリースはこの時初めてミヤギが陸軍の大先輩であり、あの伝説の442部隊の英雄である事を知ってしまうのです。

 軍隊においてやはりこの手の特別な経歴の持ち主は後輩たちに敬意を持って扱われます。日本の自衛隊だって、撃墜王とか大和の乗組員とかのビッグネームは大切に扱うものなのです。

 一方クリース演じる マーティン・コーヴと言えば『ランボー 怒りの脱出』で最後にランボーに殴り倒されてたマードックの小姓です。ベトナムで地獄を見たとは言っても軍人としての格があまりに違い過ぎます。

 ミヤギはクリースに語ります。モンテカッシーノの寒さ、戦死者が救出者の数を上回ったテキサス大隊の救出劇、ダッハウ強制収容所で見たこの世の地獄。クリースは最敬礼で聞くしかありません。

 そして最後にミヤギはイタリアで出会った初めての男の体験談を語り、クリースに襲い掛かるのです。クリースに抵抗など出来ようはずがありません。

 許す心を身体で教えられながら、クリースは思うのです。ランボーも名誉勲章受章者だったと。結局クリースは許す心は身に着けた様子はなく、名誉勲章を観る度に身体が火照る変態性癖を植え付けられてしまうのです。


ミヤギ×サトウ
 まず、この映画の大トロの部分を語る前に、ミヤギは沖縄の漁師の息子であるという出自に基づいて、沖縄における漁業の歴史の暗部を語らねばなりません。

 沖縄は古くから貧しく、女の子は辻の遊郭へ、男の子は糸満の漁師に売られることがままありました。この人身売買を称して「糸満売り」と呼びます。

 何も糸満にしか漁師が居ないわけではないのですが、他所へ売られる時も糸満売りだったそうです。売られた男の子は厳しい訓練を経て漁師の技能を身に着けるまで親方に従属しました。

 勿論親方としても買った子供は資産ですし、事実上の息子として扱われて成長して後は自分の娘と縁付けるなどというハートウォーミングな話もありますが、やはり虐待が付いて回るわけです。

 そして、内地においても丁稚奉公というのは江戸時代から戦後の制度の終焉に至るまで、一貫して同性愛の温床だったのです。

 この件については古川柳からまだこの世にいる経験者の証言に至るまで簡単に言質を取ることができます。貴方の近所にも探せばまだ一人くらいは現場目撃者(当事者)が居るのです。

 つまり、糸満売りの少年たちも同じなのです。当然周りの代々の漁師にもこの影響が及ぶのは言うまでもありません。海人はホモ人でもあるのです。

 沖縄の人が怒りそうなバックボーンを明確にしたところで本題に戻りましょう。二人はライバルである以前にかけがえのない親友でした。ミヤギ自らそう言っているのだから間違いありません。

 作中世界における沖縄空手は父から子へと伝えられる家伝の物ですが、ミヤギは父に特に頼んでサトウと一緒に空手を学んだ仲です。

 BL的にはこんな尊い関係で何も起こらないほうが嘘です。何も知らないボンボンのサトウは、ミヤギに沖縄の漁師の裏の歴史を身体で教え込まれて離れられない仲になってしまったのです。

 そしてユキエという一人の女を取り合い、決闘に至ります。しかし、ミヤギは決闘を拒否して沖縄を一人去るのです。

 何のことはありません。ミヤギが本当に愛していたのはサトウだったのです。愛するサトウとどちらかが死ぬまで戦う決闘など考えられないのです。

 面子を傷つけられたサトウは激しく怒り、ユキエもほったらかしてミヤギと決着をつける事ばかり考えています。所詮ユキエはコンドームなのです。

 ミヤギが帰ってくると聞いてトグチに誘拐させ、自分の工場でミヤギを「卑怯者」となじり、それでも戦いを拒否するミヤギに「なら死ぬだけだ」とまで言います。

 凄まじい怒り様ですが、これもBL的に読み解けば説明が付きます。ダニエルの存在です。俺という者がありながらというわけです。

 しかし、その場で殴り掛からず父と会う事は容認します。これがサトウの愛であり、師匠への敬意です。彼の複雑な恋心が沖縄を騒動に追い込むのです。

 翌朝、甥のトグチを立会人にというアンフェアな条件で執拗にミヤギに対戦を迫りますが、ミヤギは応じません。

 トグチが「腰抜け」とミヤギをなじると「うるさい」と日本語で一喝するのがポイントです。俺のミヤギを侮辱するなというわけです。半端じゃありません。

 挙句その場でおっぱじめようとしますが、上手いタイミングでユキエがミヤギの父が危ないと伝言を持ってきて水入りになります。

 佐藤にとっても大事な師匠(ミヤギではなく彼が最初の男である可能性も)なので、ミヤギの父は死の床で二人に手を取らせて和解を促しつつ息絶えます。

 BL的には霊前でおっぱじめてもいいレベルの展開ですが、サトウは悲しそうにしつつも三日間喪に服して殺しに来ると罰当たりな宣言をして去っていきます。

 そうは言いつつ二人して葬式の儀式の灯篭流しをするのは美しい師弟愛です。ここで考証をどうこう言うのは野暮でしょう。

 氷割りの博打に乗って来たのもミヤギへの愛の産物です。俺のミヤギの弟子が氷六枚程度割れないはずがないというわけです。

 ダニエルが渡航費を大学の学費から出したのもサトウの情報収集力を鑑みれば当然知っているはずです。俺のミヤギへの礼に他なりません。サトウはツンデレなのです。

 しかし、サトウはミヤギとの決着を忘れたわけではありません。喪が明けるや再戦を再び申し込みます。しかしミヤギは応じません。

 争いを避けたいミヤギに対する「お前はわしを裏切ったのだ」という恨み言は完全にホモです。

 そしてホモのジェラシーはここに至って完全に暴走し、ミヤギの実家の道場を破壊させるという暴挙に出ます。しかし、それでもミヤギは応じません。そこでサトウは村の畑を破壊してついに承知させます。

 自分の事ならどんな仕打ちにも耐えられても、人の事は放っておけないミヤギを知り抜いていた証拠です。そういう男だからこそサトウはミヤギに惚れたのであり、執着するのです。村の人達はいい迷惑ですが、愛に障害はつきものであります。

 しかし、対戦を前に台風がやって来て神仏に祈っていたサトウは家の下敷きになってしまいます。

 自分を殺しに来たと息巻くサトウを柱を破壊して見事救助するミヤギ。この時二人の関係は完全に氷解し、元の親友に戻ったのです。

 ダニエルが火の見やぐらに取り残された女の子を助けに行ったのにサトウは加勢し、その美しい光景に沖縄の人々は涙します。

 おそらく、同世代の人々の間で二人の仲は公然の物だったのでしょう。畑を壊すのもまあサトウの嫉妬深さならやりかねないというわけです。

 サトウは土地を村人に譲り渡して農地解放を宣言し、ミヤギに許しを請い、久しく耐えていた城跡での盆踊りの復活を宣言して村人を大喜びさせます。

 しかし、サトウは沖縄きっての実業家です。何もかもタダでくれてやるお人好しではありません。

 「40年分の利子を身体で払え」とか言って二人は久しぶりに夜の寝技に興じるのです。ユキエが無理について行かなかったのは、見ていたからかもしれません。だとすればなんとも健気な愛です。

 トグチの盆踊り襲撃に「憎しみはいかん」と説得を試みるのも賢者モードに入っていたという事なのでしょう。メンタルケアにはセックスに限ります。何かあったらソープへ行けという北方健三の理論は正しかったのです。


サトウ×トグチ
 トグチ自身も一応それなりの空手家であり、ダニエルを激しくライバル視して執拗に嫌がらせします。

 彼の師匠はサトウ。あのツンデレサトウのことですから、大師匠とミヤギの偉大さと男の素晴らしさをトグチに教え込んだのは想像に難くありません。

 しかし、これはトグチにとっては面白くない事です。自分だけを見ていて欲しいのに、サトウの心はミヤギにあるのです。

 ミヤギへの「腰抜け」呼ばわりをサトウに怒られたのも実に面白くない事です。サトウの中でミヤギ>>>トグチである事が明白になってしまったからです。

 だったらダニエルを殺せばサトウは自分に振り向いてくれる。他ならぬヤンホモサトウのDNAを受け継ぐトグチなら考えそうな事です。

 クミコに踊りを教えてもらうダニエルを「まるで芸者だぜ」と冷やかすのも実に意味深です。当然ながら、この場合の芸者とは西洋人の考える芸者です。だとすればホモ臭い冷やかし文句です。

 別にそれほど興味なさげなクミコにやたらと執着するのもホモの醜いジェラシーです。トグチにとってクミコはダニエル抹殺を邪魔する性病でしかないのです。

 那覇の町の怪しい酒場で氷割りの博打を持ち掛けるのも、ダニエルへの優位を証明するためです。両師匠も駆けつけてお膳立ては完璧でしたが、ダニエルは氷割りを成功させてトグチは余計に立場を悪くしてしまいます。

 トグチは言うに事欠いて「卑怯者に賭けの資格はない」とごねますが、サトウは「おじに恥をかかすな」と尤もな事を言います。そんな事も分からないほどトグチはのぼせ上っていたのです。

 しかし、台風の夜にトグチはヘタレを爆発させます。勝手にサトウを死んだと決めつけ、ダニエルが火の見やぐらに取り残された女の子を助けに行ったのに加勢するようサトウに命じられるも拒否。トグチは絶縁を宣言されて台風の中へ消えてくのです。

 サトウの寵愛を失ったトグチは完全に破れかぶれになり、城跡で胡散臭い日本舞踊を披露するクミコにナイフ片手に襲い掛かり、サトウの説得にも「おじきとは縁が切れた」といじけた態度を取ります。

 挙句完全にダニエルに敗れたトグチは沖縄に居場所がありません。彼は完全にヤクザの道に落ちるしかないのです。ヤクザはホモばかりで前歴を問わない稼業なので、トグチを優しく受け入れてくれることでしょう。かくして沖縄ヤクザは凶暴性を全国にとどろかせるのです。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します

シリーズ作品
『ベスト・キッド』
『ベスト・キッド3』

『ロッキー2』(★★★★)(一匹目のドジョウ)
『河内のオッサンの唄』
(★★)(本式の盆踊り)
『激突!必殺拳』(★★★)(本式の空手)
『沖縄やくざ戦争』(★★★(本式の沖縄))

ご支援のお願い

 本noteは私の熱意と皆様のご厚意で成り立っております。

 良い映画だと思った。解説が良かった。憐れみを感じた。その他の理由はともかく、モチベーションアップと資料代他諸経費回収の為にご支援ください。

 軍鶏はちょっと飼ってみたい


皆様のご支援が資料代になり、馬券代になり、励みになります。どうぞご支援賜りますようお願いいたします