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三鷹歌農書 1741-1760

サツマイモ畑の湖(うみ)の真ん中に蓮鉢置きて咲かす一輪
三鷹歌農書 (一七四一)
付き合ひがつきあひを呼び溺れゆく我かブドウの摘粒をせむ
三鷹歌農書(一七四ニ)
ニンジンに皮は無いのだ採りたての甘さをがぶりがぶり消えゆく
三鷹歌農書(一七四三)
浅漬けのナスとキュウリに柴漬けと見紛ふシャドークイーンのフライ
三鷹歌農書(一七四四)
水遣りを忘れし畝が二つほどキュウリネットに三日月の針
三鷹歌農書(一七四五)
一面を奔る潮(うしお)の葉脈の溢るるごとき梅雨のサトイモ
三鷹歌農書(一七四六)
長さはた丸さを取るか壮年の夏の生き方ナスビに問へり
三鷹歌農書(一七四七)
行き場なくホップとブドウ絡みあひ自ら棚となるべく宙を
三鷹歌農書(一七四八)
陽を受けて零す葉叢(はむら)を仰ぐなり杜仲の夏のひかりの瀧を
三鷹歌農書(一七四九)
葉を割ればグッタペルカの白糸の杜仲の夏のちからの梯子
三鷹歌農書(一七五○)
三つ編みにカーリーウェーブ髪を先づトウモロコシは愛でてから採れ
三鷹歌農書(一七五一)
火を通しすぎてしまへりせめて名をパールコーンのパンダ焼きとか
三鷹歌農書(一七五ニ)
明日葉に杜仲も枇杷も茶にせむと葉月の葉から引き出す薫り
三鷹歌農書(一七五三)
時うまれつづけ過ぎしを消してゆくその玉響を歌の茶として
三鷹歌農書(一七五四)
明日葉を中深煎りにして飲めば正山小種(ラプサンスーチョン)のキレ喉を過ぐ
三鷹歌農書(一七五五)
晩秋の葉を落としたる林へとわれを運べる杜仲の茶の香
三鷹歌農書(一七五六)
枇杷の葉の厚き硬きを焙ずればマスクメロンの仄かなにほひ
三鷹歌農書(一七五七)
一碗のデュエット甜(あま)きステビアに蓮の花の醴(あま)さ引き立つ
三鷹歌農書(一七五ハ)
옥수수수염차(オクスススヨム)玉薥薥鬚髯(おくすすすよむ)唱へつつ滑舌悪きわがための茶を三鷹歌農書(一七五九)
ボルドーの色の深きを愛でながらトウモロコシのひげ茶を啜る
三鷹歌農書(一七六○)


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