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「北欧の暮らしとデザインが日本人に愛されるわけ 2023」

2015年にわたしが「北欧の暮らしとデザインが日本人に愛されるわけ」というタイトルで別のサイトに掲載したコラムを、ちょっとだけリライトしてみました。あの頃とは日本も世界も随分と状況が変わってしまいましたが、根底に流れるものはそんなに変わってないかな、と感じています。



マリメッコ / ムーミン / アルメダール / ボラス / カウニステ / クリッパン / アルテック / アラビア / イッタラ / ロールストランド / ダンスク / デザインハウスストックホルム / スント / ジョージ・ジェンセン / フリッツ・ハンセン / バング&オルフセン / イケア / etc

日本国内で人気の北欧ブランドを上げてみると、きりがないくらいに色々出て来ます。それもどちらかというとフランスやイタリアみたいなファッション系よりも、暮らしに関連する家具や生活雑貨の多さが目立ちますが、それは北欧と日本のライフスタイル=暮らし方に、意外と共通点が多いのが理由だと言われています。

そもそも我々が普段から口にする「北欧」とはどの国を指すのでしょうか。

漢字からだと単に「北の欧州」となりますが、具体的にはフィンランド・スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・アイスランドの5か国をさすことが多いんです。どこの国もとっても寒そうですね。東京と比較すると、気温は大体10℃くらい低いですから、感覚的には10月から5月くらいまでは真冬の寒さでしょうか。

世界的に高く評価される北欧のインテリア関連デザインは、その地理的な条件から、一年の大半を家の中で暮らすという彼らのライフスタイル、家の中をいかに快適で居心地の良い空間にするかという知恵から、必然的に生まれたものだと考えられています。もともと質素な暮らし方を好む北欧には、シンプルで機能的、使いやすいものを長く使うという文化があります。木や革のように、時間の経過とともに味わいを増す素材に愛着を持つ国民性があります。

日本人にも「わび・さび」に代表されるような質素でシンプルな暮らしや、自然との共生に美徳を感じる文化がありますよね。


画像は世界遺産竜安寺にある枯山水の石庭
画像は千利休作の国宝「待庵」を完璧に復元したさかい待庵


日本の枯山水や俳句はよく「引き算の美学」と言われます。水墨画家 森川翠水さんが著書『余白の力』の中で「余白を察し、言葉の周辺にあるもの、実態の背後にあるもの、見えないものを感受すること。自己と自然を一体化、同じ身の丈になり、自然や他の命を尊ぶこと」と書いておられますが、個人的には、柳宗理や長大作、剣持勇、イサム・ノグチらの日系デザイナーの作品。アアルトやフィン・ユール、ハンス・ウェグナー、アルネ・ヤコブセンらの北欧デザイナーの作品から感じられる「余白」こそ、製品としての「引き算の美学」であると感じます。



日本人にも北欧の人々にも、色んな考えの人がいて様々な価値観があって、「~人は」といったステレオタイプのカテゴリー化はあまり意味がないと考える人は多いでしょうし、わたし自身もそう思います。しかし、日本における北欧のスタイルが一過性のブームではなく、ここまで浸透しているということは、もはや単なる憧憬ではなく、シンプルで、機能的で、ナチュラルで、ぬくもりを感じるあの暮らし方・スタイルがわたしたちのライフスタイルに「しっくりくる」からなんだろうなあと、勝手に納得しています。