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就活コラム②|10年ぶりのスーツ購入

『就活のタイミングを3度も逃した人間の就職活動』という連載をしているあごひげ20cmです。本編では、博士課程卒の就職活動について紹介しています。

このコラムでは本編を外れて、本編に書くほどではない四方山話を書いていきます。本編のお供にお楽しみいただければ幸いです。

▼連載第1回はコチラ▼

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 大学に入学してからの9年間、自分がスーツに袖を通したのは5回だけでした。大学の入学式、成人式、大学の卒業式、修士の入学式、修士の修了式。最後に着たのは3年前でした。

 研究者がスーツを着る場面って全然ないんですよね。研究分野によっては全員スーツ着用という学会もあるらしいですが、自分の所属学会はどこもラフな格好での参加が許されていました。タンクトップに半ズボンにサンダルみたいな格好でもつまみ出されない。さすがにそんな人はいないけど。
 あと結婚式に呼ばれてスーツを着るという機会も残念なことに皆無。自分が海外に長期滞在していたときに挙式する友人ばかりで、泣く泣く海外からビデオレターを送る日々でした。

 で、自分の持っていたスーツっていうのが、高校卒業したての時に父親と一緒に買いに行ったものだったんです。ほぼ10年前、まだ10代の頃の話です。安価なリクルートスーツでも良かったんでしょうが、わざわざBrooks Brothersまで行って奮発して買ってくれました。その後、数回しか着てもらえないとは知らずに……。

 時は進んで2021年2月。Zoomを用いたオンライン個社説明会がありました。カメラ・マイクONという条件で、私服OKという案内をいただいていました。素直な自分は、普通のチェックシャツで参加してカメラをONにしました。
 Zoomに映る就活生の8割がスーツ姿でした。いや、8割5分を超えてた気がします。社員座談会のセッションが始まって、イキイキと質問していたのはスーツを着ている人たちばかりでした。

 同じく2月。実際の会場に集まるタイプの合同企業説明会がありました。案内には「まだ3月の採用情報公開前なので私服参加OKです!」と書かれていて、無知な自分は「そんなもんなんだ」とガッツリ私服で参戦しました。
 蓋を開けてみるとスーツが9割以上の世界でした。いや、9割5分を超えてた気もします。自分は極力気にせずに企業の話に耳を傾けていましたが、企業の方には怪訝な顔をされた気がしました。

 そんな経験をした後で、クローゼット内のスーツを取り出して3年ぶりに着てみました。幸いなことに体型には大きな変化がなかったみたいで、コロナ禍で育った腰回りが少しキツいくらいでした。まあ許容範囲。
 致命的だったのはうっすらストライプが入っていたことです。業界によっては許容されますが、就職活動ではそのようなスーツは避けた方が無難とされています。その上、まだ数回しか着ていないというのにしっかりと虫食いされていました……
 いくら対面の機会が減っているとは言え、オンライン画面越しにも目に付きます。さすがにスーツを新調しないといけないなと思いました。新社会人として虫食いスーツ1着しか持っていないというのも恥ずかしい話ですし。

 こうして10年ぶりにスーツを買いに出かけたんですが、20代後半にもなって上下セット数万円という安スーツは気が引けました。スーツを満足に着たこともないくせに「少なくとも1着目と同等レベルのスーツじゃないと」という謎のプライドを発揮したわけです。

 結果、人生2着目のスーツはNEWYORKERで買うことにしました。使わずにとっておいた給付金を使い切ってもまだ足りず、貯蓄を切り崩しました。「高い買い物をしたから節約しなきゃな~」と帰ろうとしたところで『就活応援セール!』と書かれた看板を目にして、自分は重大なことに気付きます。


 「もしかしてカバンも靴も買わなきゃダメ……?


 めちゃくちゃ葛藤しました。コ口ナ禍のまっただ中、就活の主戦場はオンラインです。2月時点で対面面接を告知している企業なんて寡聞にしてありませんでした。Zoomで映る範囲をとりあえず整えておけば大丈夫じゃないかと思う自分がいました。
 一方で、万が一に備えて準備しておくのが賢いオトナだと考える自分もいました。対面面接を急に言い渡されたときに、いちいち遠出してカバンやら靴やらを揃える時間的余裕がない恐れがあります。コ口ナ禍が落ち着く見通しは依然としてありませんでしたが、政府が日本人口ぶんのワクチンを確保したというニュースはありました。

 散々悩んだ結果、社会人になるための勉強代だと腹をくくってカバンも靴も買うことにしました。いざ買うと決めたが最後、「納得できる良いものを買いたい!」というスイッチが入る性分でして、財布のひもがついつい緩みます。緩んだ結果、TAKEO KIKUCHIのカバンとREGALの靴をお買い上げしました。
 たった1日で食費5ヶ月分が飛んでいった計算です。ほぼ無収入なのに。「安物買いのゼニ失い」って言いますけど、高い物を買ったところでお金ってちゃんとなくなるものなんですね。勉強になりました。


 本編のネタバレになりますけど、6月になって対面面接の案内がようやく来て、晴れてスーツ・カバン・靴をお披露目する機会がありました。新品に袖を通したお蔭かどうかは分かりませんが、その企業からは翌日に内々定をいただけました。1社目の内定だったので一気に心が軽くなったことを覚えています。買って良かった、NEWYORKER。TAKEO KIKUCHI。REGAL。

 以上が、ほぼ無収入人間が約10年ぶりにスーツ+αを購入した話になります。大したオチもないですが、やっぱり就活用のスーツは買って良かったです。気が引き締まってやる気が出ます。そんなことを考えながら、クローゼットにまたスーツを仕舞っています。就活以外で着る目途は立っていません……。

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▼本シリーズのマガジン▼(月・水・金の19時ごろ投稿予定)


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