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「Rの世界」第一話


あらすじ

不眠症に悩む音無蓮おとなしれん
夢を見る事が唯一の趣味だった彼はそれができない現状に
鬱々とした日々を過ごしていた。
彼の思いとは裏腹に謎のアレルギーによる咳は止まることを知らず
飴を舐めた時だけ息を潜めた。
…面白い夢が見たい…そんな微かな思いも泡と消え
今夜も咳が止まったわずかな隙に眠りにつく…
そう思った、そのはずだった…が、
眠りにつく1m手前、彼の中に浮かび上がる新たな“遊び”
それは印象に残った夢だけを書き記す夢日記
ストレスフリーな上、今の自分にとって可能であり必要な事。
予知夢になれば公開でもして、皆で騒ごう
しかし、これをきっかけに蓮の周りで次々と奇妙な出来事が
起こり始める。


補足 ★ここに注目★


① 主人公の蓮は夢を見る事が異常に好きな為
  普段から省エネモードで生きています。
  反応が薄く、素っ気ない態度が通常なのですが
  夢が絡むと状況は一変、一番信じないスピリチュアルなことでさえ
  感情をむき出しにして信じてしまいます。
  その姿は見ていてとても新鮮で普段とのギャップを
  楽しんで頂けると思います。


② また、幼なじみのユカに対する態度が少し冷たい蓮ですが、
  ユカのことが嫌いな訳ではなく怪奇現象が起こった際には
  巻き込まないように守り、ユカも何かと蓮に頼りにして
  気付けば蓮のそばにいるのでもしかして二人は
  両思いなのでは…?とムズキュン要素も盛り込んでいます。


③ そして、母親、久美と蓮との関係性も友達親子のようで
  時に、ほっこり感を出しつつ、蓮が見た夢、体験した不思議現象は
  ほとんど筆者が体験した実話の為、メリハリ&リアルさ
  マシマシでストーリーに没入できると思います。


補足(主要キャラ紹介)


音無蓮おとなしれん(18)高校三年

夢を見る事が唯一の趣味で、夢を見れなくするものは
原因不明の咳以外できる限り省いてきた夢中毒の男子高校生。
一見、冷たく不愛想に見えるが温かい一面を持っていて
それを理解している人にだけ好かれる。

粒良つぶらユカ(18)高校三年、蓮の幼なじみ

同じ高校に通う蓮の幼なじみ。
蓮を見かければすぐにペラペラと話し出す
蓮の塩対応など慣れたもので気に留めることもない。
家が近く母親同士が友達の為、かなりの頻度で音無家に入り浸っている。
明るい性格だが、年に一回落ち込むことがある。

音無久美おとなしくみ(40)蓮の母親

明るく朗らかな性格だが怒ると元ヤン時代の口調が戻る。
蓮とは友達のような親子で、見た目も実年齢よりは若い。
ユカのことをとても可愛がっていて
密かに蓮のお嫁さんにしたいと思っている。


第一話

〇音無家・蓮の部屋(深夜)
   真っ暗な天井を見つめる音無蓮(18)
蓮M「眠れない……やっぱり最近、不眠期に入ったみたいだ。
 前はもう少しちゃんと寝れてたんだけどな……何がいけなかった? 
 深夜まで観るアニメ、漫画、いや、全部やめた。
 明日考えればいい諸々の予定とか、人との程よい付き合い方とか、
 全部やめた。なのにどうして、なのにまた……許せない……」
   
   蓮、布団を口に当て悲しそうに
蓮「これじゃあ、夢が見られない……」
蓮M「毎日多くて5、少ない時でも2,3は確実に見てた。
 夢を見なかった時なんて過去数えても2、3回、ありえないんだよ。
 あれが見れないなんて! 生活の一部、一日の醍醐味を捨てろってか。
 あーそれもこれも原因不明のあいつだろう。なっ、わかってんだよ。
 咳、咳、咳、この時期になるといきなり現れる魔、ひょいと現れて
 チャと睡眠妨害してくる奴。何のアレルギーかも分からせないくせに
 存在証明だけはきっちりと。毎年ご苦労様です。
 おかげでこちらは絶賛迷惑被り中でございます」
蓮「はー」
   
   蓮、口の中の飴をごろっと言わせ
蓮「飴がある間に眠気が来たらこっちのもん」
蓮M「完全にこっちが寝たら咳も寝る。それはもう重々承知。
 こっちが寝れずに飴が溶けきったら無限地獄」
蓮「はい、今日も地獄決定」
蓮「(咳しながら)あーどっすかなー」
蓮「そっか……あ~寝たい、飴舐めたい、咳止めたい、夢みたい」
蓮「何かないかなーいいこと……久しぶりに前世の夢みたい、
 あっ、ぽい夢。そういえば昔、夢日記付けてたな~
 リセット癖あってやめたけど、夢の中で喋った人とか
 ケンカした人とかさ、名前なんて言われたら目覚めた時
 ホントにいるかどうか検索かけたりしてさ」

蓮「(咳しながら)あーつら、なんだかんだ楽しかったな~
 なんか、充実してたっていうか、別の意味で寝不足にはなったけど。
 あっ、そういや、あの心臓交換した女の人元気かな……? 
 夢だけど。あれ、何月だっけな、手術台に寝かされて横見たら
 女の人寝てて、何か雰囲気でわかったんだよな。髪、長かったし

蓮「(少し笑い)もし、あの、何月何日、夢見ませんでしたか? 
 貴方と心臓を交換した〇〇なんすけど? って現れたらさ、
 もう、ヤバいよな。何で知ってんのって、こっちは日にちも顔も
 名前も知らんけど、忘れたけど、ごめんけどって、
 あっ、顔は見てないわ。でもまあ、一応、夢は見ましたつーうのは
 報告するか、しないか、どっちだ、迷うわ。
 あーなんか、頭ふわってーしてきた。これ眠たいんだな。多分、
 そりゃそうか、三時だもん。もっいいか、飴舐めるか。
 さあ寝よ。今度こそ寝る。寝るんだ。はー天国にいる間に……」
 
   寝返りを打ち横向きになる蓮。目をつむり、じっとする
               ×××
   もう一度寝返りを打ち咳をする
   その後あくび、口の横の治りかけていたところが切れる
蓮「いっ!」
蓮「(口の横を触り)ダメだ……今日は朝までコースか?」
蓮「まあ、寝ようと思って寝れるものでもないし明日、生物で寝るか。
 あーかゆ」
   蓮、肩口を掻いた後、目をつむる
           ×××
蓮M「あ、いい感じ。急にきたな……寝れそう……」
   
   蓮、眠りに入る前の深い呼吸をする。数秒後、はっと目を開ける
蓮M「(笑いをこらえながら)へ、待てよ……ヤバい、ちょっと待って
 思いついた。この寝不足頭で見た数少ない夢をさ、夢日記にする。
 ただし、限定、書きたーって思ったやつだけ。
 そうすれば、リセット癖も、やんなきゃストレスからも
 多分、解放される。楽だし、まあ、一石二鳥? うん、いい、んで、
 それで、それで、もし、それが、もし、うん、予知夢に、なったら
 ほぅ……」
蓮「おっ、きヤ、ヤバッ…… ヤ…… これは……これは……
 きたんじゃない? 久しぶりに…… よくない? この遊び、これは、
 わーきたわ。きちゃった。この感覚。 ……このまま……寝る……決めた。
 寝たい……おや……」
   
   蓮の部屋からフェードアウト、部屋のドアが閉まると同時に
   
蓮N「と、いうことで私、音無蓮は二〇二三年、一月一日から
 一応、夢日記を開始します。書きたいものを書きたいだけ
 書き記す所存ですので実際の記載日については未定です。が、
 気長にお待ちいただければ幸いです。
 面白い夢や変な夢、はたまた、普通の夢、普通はダメ、分かんないけど。
 できるんならドッキドキのドキがいいですよね。ね、
 正直、夢を公開するなんてちょっとヤバイ気もするのですが
 もし、予知夢になった場合、なんだかんだでもったいない気もするので
 共有できたらなぁーっと。なんかすごいことじゃないですか、
 どこかの名も知らぬ誰かが自分の夢でワッキャ言ってくれたら。
 なんかもうそれだけで……ぅて感じじゃないですか、うん。
 まあ、長話もなんなんでこんな感じで
 とりあえず夢日記、はじめていきますわ。ゆるっ」
   
   ナレーションと同時に部屋ドアから廊下、玄関へと素早く進む映像
   玄関のドアが開く。夜空と月
蓮N「それでは今夜はこのあたりで……おやす……」
   T「……zz入眠zz……」
   部屋、横向きですやすや眠る蓮の姿
   T「※寝ながら、睡眠中の飴は危険です。ご注意ください」


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