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「Rの世界」第三話

〇音無家・蓮の部屋(夜)   
   ベッド上、スマホを触りながら
蓮「なぁ、最低だぞ! 人の待ち受け勝手に変えるとか」
   ベッド下、柵にもたれながら
ユカ「何でよ。別にいいじゃん。待ち受けぐらい」
蓮「嫌だ。もうー初期設定のやつ、どーすんだよ」
ユカ「そうだ。戻すのどうやんだろうね、リセットとかすんのかな?」
蓮「だったら許さねぇぞ」
ユカ「どーすんの?」
蓮「さーな」
ユカ「とりあえず三日、試してみてよ。今、話題なんだから」

〇道(三日後・夕)
   自転車を押しつつスマホを見ながら
蓮「なんもねぇじゃん。バカ」
   蓮の姿を見つけやってきて
ユカ「どうだった?」
蓮「可もなく不可もなく代わり映えなし」
ユカ「そ」
蓮「ってことで変えるから」
ユカ「もう~」
   待ち受けを元に戻し
蓮「三日って言ったろ」
ユカ「もうちょっとしてたら良い夢見てたかもよ」
蓮「後でからならなんとでも言える」
ユカ「それでも決めんの早すぎるよ」
蓮「お前が遅すぎんだよ」
ユカ「うーん、よう分からん」

〇音無家・リビング
   サンドウィッチをくわえながら冷蔵庫を閉める蓮
   テーブル上のスマホが鳴る。見ると、ユカからメッセージ
   サンドウィッチを噛み
蓮「なんだよ……嫌な予感しかしない」
ユカ(メッセージ画面)「ちょっと調べてほしいことがあって……」
   蓮、メッセージ確認後
蓮「はぁーなんで俺がお前の友達のお父さんの仕事運爆上げのために
 神社を調べないといけないわけ? おかしいだろ」
蓮「業績不振かなんか知らんけど」
蓮「何がそういうのだけは冴えてるでしょ?だ、最後のヨロシク!
タノンダっーのもなんかヤだし」
蓮「カタカナっていうのがな……」
   蓮、メッセージで嫌だの「い」を打とうとした時
   メッセージ受信音、画面を見る蓮
ユカ(メッセージ画面)「調べてくれたらダッツ買ってくるから!」
   大きなため息をつき、
蓮「なめられてんな。マジ」
   渋々、仕事運の上がる神社をスマホで検索する蓮
   スクロールしながら
蓮「やっぱ結構、あんだな。知らないだけで」
蓮「おっ、ここすげぇ。口コミもいい感じじゃん」
   蓮、ユカにメッセージを送る
蓮「あーなんか疲れた」

〇和室(夢)
   広い和室、うろつく蓮
蓮「何、あ、ゲーム、こんなシーンあったっけ? 女の……誰?
 何かヤバいから助けてもらって……あの?」
   押入れ、布団を漁る女に声をかける
蓮「え、」
   何も答えない女。いきなり蓮に襲い掛かり首を絞めてくる
蓮「なにっ! うっ! やめっや、離せ……」
   女の仲間たちも現れ蓮を攻撃。顔面だけ骸骨な女たちが蓮を襲う
蓮M「ダメだ……息ができないっ! ヤバいぞ!……これ、し、し、」

〇音無家・蓮の部屋(夕)
   目を覚まし
蓮「ぬ!」
   ベッドから勢いよく起き上がる蓮。汗をかき息を切らしている
蓮「はあ、はあ、はあ、あれ、夢じゃなかったら間違いなく死んでたわ」
蓮「はー顔洗お」

〇同・廊下・階段(夕)
   階段、玄関、買い物帰りの久美、蓮を見て
久美「どした!? その顔」
蓮「久しぶり過ぎる悪夢」
久美「ありゃ……ずいぶん大変だったんだねぇ」
蓮「死にかけたわ。マジ」
久美「ヒェー」

〇同・洗面脱衣所(夕)
   洗面台で顔を洗う蓮。洗い終わりリビングへ向かう
蓮「はー」

〇同・リビング(夕)
   エコバッグから買ったものを冷蔵庫に入れながら
久美「それは、その、夢は、聞いてもいい系?」
蓮「顔面骸骨女に首絞められた」
久美「それはぁ……夢でよかったね」
蓮「逆に夢以外であり得ないけどな」
   椅子に座る蓮。久美、テーブル、蓮の前にお茶を置く
   お茶を飲む蓮
久美「まぁ、夜はいい夢見るでしょ?」
蓮「そう願うばかり」

〇同・蓮の部屋(深夜)
   うなされる蓮
蓮「うっ……! うっ! ああっうわっ!」
   目覚める蓮。汗をかき
蓮「また……えっ、」
   久美の部屋からうなされている声
   慌てて向かう蓮。しかし部屋の前で止まる

〇同・久美の部屋・ドア前(深夜)
   そっと久美の部屋を開ける蓮。何事もなかったように眠る久美
   ドアを閉め
蓮「二人そろってなんてあんまないぞ……何かあったか……これ
 てか、喉乾い……あっ、あいつ、アイス、忘れてんじゃん!」

〇同・蓮の部屋(翌日・夕)
   テーブル、からのアイスカップ、ベッド上、ユカに
蓮「マジお前だったら泣きじゃくり案件だわ」
   座りアイスを食べながら
ユカ「それもそうだけど久美ちゃんがかわいそう……」
蓮「本人なんも覚えてないらしいけどな」
蓮「……しても理由がな……なんもないし……」
蓮「お前なんか変なの連れて来てない?」
ユカ「なんで私!」
蓮「だってこの前から座敷わらしとかなんとか」
ユカ「座敷わらしさんは福の神だよ! そんなんと一緒にしないで」
蓮「福の神、すぐいなくなったけどな……」
ユカ「分かんないじゃん! お散歩に行っただけかもしれないし。
 でも、蓮が そんなんだからもう戻ってこないかも!」
蓮「お散歩ね……」
ユカ「いっつもそうだよね。スピ系のことなんて一切、信じないのに
 夢が絡んだとたん発動してさ」
蓮「いや、マジ怖いから」
ユカ「怖いのは分かるけどなんで私のせいにするの!」
蓮「あ!」
ユカ「何?!」
蓮「お前、俺に神社調べてって言ったよな?」
ユカ「言ったけど、それが?」
蓮「それかも……」
ユカ「なんで? なに言ってんの? 調べただけだよ。なんでそうなるの?       神様がいる場所なんだよ。悪夢とか関係ないし。むしろ無縁でしょ?」
蓮「でもそれ調べてからだぞ」
ユカ「そんなの分かんないじゃん! じゃあ、なに、それって私が行こうと    してるとこ?」
蓮「それは……どの神社がどう影響してるとかは、分からんけどな」
ユカ「もうやめてよ。そういうの」
蓮「いや、こっちもやめたいって」
蓮「ちょ見て。そんな人いんのか」
ユカ「えーうん……」
   スマホで調べるユカ
ユカ「……うん……行ってから具合悪くなるとかは書いてあるけど……見ただけ    では……そんなん、ないよ」
蓮「じゃあ、なんなんだよ……これ」
ユカ「うん……じゃあ……私も調べてみようか? 神社、どれ」
蓮「それは絶対ダメだ」
ユカ「でも、蓮と久美ちゃんだけそんな思いすんの嫌だよ。私だって   さ……」
蓮「何言ってんだよ。分かるだろ? 俺がこんなんなってんのに」
ユカ「うん、じゃあ、今日泊まる。久美ちゃんに言ってくる」
   立ち上がり行こうとするユカ
蓮「ちょ……何」
蓮「ちょ、ちょ、おい、待て、待てって!」
   ドアを閉める寸前、ドアを持ち
ユカ「誰だと思ってんの? 言うわけないじゃん」
   と、微笑みドアを閉める。部屋から遠ざかりながら
ユカ「もう~困った、困った、困り過ぎちゃうわ。久美ちゃん~」
   久美のもとに向かう

〇同・蓮の部屋(夜)
   悪夢を見ない方法をスマホで調べる蓮
   調べながら
蓮「はぁーあいつ、大丈夫かな。ホントに……」

〇同・久美の部屋(夜)
   ベッド上久美と寝ころびながらスマホを見ているユカ
ユカ「見て~この人、今、ちょっと気になってる人~」
久美「へーなに、芸能人?」
ユカ「うん。youtuber。なんかすごいらしい」
久美「そうなんだ」

〇同・蓮の部屋(夜)
   スマホを見ている蓮。久美の部屋から聞こえてくる
   ユカと久美の笑い声
   スマホを切り目を閉じる蓮。次第にうとうとする
   ×××
   電気の消えた部屋。本格的に眠っている蓮
   段々、うなされ始める
蓮「うっ……あっあっあい……あ!」
   目覚めた瞬間、天井に渦のようなものが見え、それが二つの顔になり
   こちらを見ている。驚きのあまり一瞬フリーズする蓮
   数秒後、息を吹き返し起き上がる
蓮「はっ!」
   足元にユカ、座っている。思わず
蓮「見るな!」
ユカ「見て!」
   スマホの画面を見せるユカ
蓮「え、な……だ」
   何も言わず五秒ほど画面を見せ
ユカ「じゃあ」
   部屋を出ていく
蓮「え、えっ……」
   そのまま倒れ眠る蓮

〇同・リビング(朝)
朝食を食べる蓮、久美、ユカ
久美「あ、この納豆うまっ」
ユカ「ね、思った」
久美「どこで買ったっけ、ヤバッ、忘れたわ」

〇同・リビング(数日後)
   蓮とユカ少し離れた場所で向かい合うように座り
   ゲームしている。ゲーム機に視線を向けたまま
ユカ「ねぇ、最近、調子良さそうじゃん」
   同じくゲーム機を見たまま
蓮「まぁ、わかんねぇけど、悪夢消えた、から」
ユカ「へーよかったじゃん!」
蓮「うん」
ユカ「うん」
   数秒、置き
蓮「なあ」
ユカ「ん?」
蓮「お前、なんかした?」
ユカ「えっ」
   蓮を一瞬見て、ゲームに視線を戻す
蓮「あれ、夢じゃなかった……かも」
   顔を上げるユカ、近くに蓮の顔。ユカを見つめている
ユカ「ちょ……」
   後ずさるユカ
   ユカに近づきながら
蓮「何? した?」
ユカ「……!」
   ゲームをそっと置き後ずさりながら
ユカ「した……って何、な、分かんない、してない、知らないよ!」
蓮「嘘。知ってる」
ユカ「知らないっ!……ちょ、なんで来んの!」
蓮「言ったら来ない」
ユカ「あっ、言わないっ! もうっ! 何! 知ら」
   顔が間近になり思わず薄っすら笑ってしまうユカ
蓮「ほらぁ、やっぱ」
ユカ「やっぱとかない!」
ユカ「隠してないってば!」
蓮「何を?」
ユカ「何とかない!」
蓮「笑ってんじゃん」
ユカ「笑ってないっ!」
蓮「ウソつくな」
   笑い合う蓮とユカ



































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