見出し画像

福祉と援助の備忘録(21) 『燃え尽きという古くてまだ使える概念』

(写真は、段ボールを利用した仕切りで作られたワクチン接種会場)


ところで私は燃え尽き症候群という概念はもはや古いものとして理解していたのだが、このたびのWHOの診断基準であるICD-11においては、疾患とはされないもののその概念が正式に取り入れられることになった。その意義はいまだにあるようである。


例の感染症のパンデミックに関連し、スタッフの精神状態をチェックしている病院がある。感染症対応をした職員の燃え尽きの度合いについて把握し、必要に応じて面談をするという。これまでに知られている尺度ばかりでなく、パンデミックによる疲労に限定したオリジナルの尺度まで作るという気合の入れようである。


代理受傷(vicarious traumatization)」 、「共感的疲弊(compassion fatigue、ネットで見ると共感的疲労と訳されるほうが多いようだが)」という言葉がある。苦悩する他人と接することで相手の苦しみを察してしまい、自身もまた苦しみを味わって参ってしまうという考え方に基づくものだ。


共感は燃え尽きにつながる。「自己効力感」は燃え尽きを防ぐのに重要なものとなる。自己効力感は、自分でなにかをコントロールできているという実感によってもたらされる。となると


・ものを作る、動かす、調整する、手入れするといった「こういじればこう変わる」という手応え
・ささやかなことであれ、人に対してリーダーシップを発揮できる場面
・他人のためになしたことが、他人のためになっているという実感


といったものが必要となるだろう。


疲弊し、燃え尽きやすくもあるが、それに強くなることもできるのが医療現場というものなのかもしれない。



Ver 1.0 2022/8/16

#医療
#福祉
#メンタルヘルス
#バーンアウト
#燃え尽き症候群
#対人援助
#援助職
#代理受傷
#共感的疲弊
#共感的疲労

前回はこちら。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?