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知ってるつもり? デザイナーHの社会科見学 株式会社 広真(後編)

伊賀さん!紙離れが進むってどういう事なんですか?
印刷会社の営業マンの描く未来とは?ぜひ伊賀さんのお話を聞かせてください!
デザイナーHの社会科見学後編は株式会社広真の営業 伊賀 優文さん(以下伊賀さん)のインタビューで進めてまいります。

自己紹介

はじめに、伊賀さんの自己紹介をよろしくお願いいたします。

伊賀さん「出身は香川県さぬき市。中学までは野球少年でした。大学で香川を離れ関西の学校に入りました」

広真さんと同じさぬき市の出身なんですね。なぜ、印刷会社に就職されたのですか?

伊賀さん「実は広告代理店志望だったんですよ。でも県内の代理店はすべて落ちてしまって笑」

あぁそうなんですね。就職活動ってむずかしい。。

伊賀さん「縁もあって、株式会社広真印刷社(現:株式会社広真)に入社しました。会社には感謝しています」

印刷会社と広告代理店では違うことも多かったのではないですか?

伊賀さん「ずっと印刷会社と広告代理店は違うと周りから言われ続けたんですけど、似ているところもあります。広告代理店と同じように、多種多様な業界の人と一緒に仕事ができます。広告企画もできますし、めちゃくちゃ楽しいですよ」

印刷業界の領域を超えて、いろんなチャレンジをしている伊賀さん。

香川県の広報誌やチラシを電子書籍化するサービスを実施した「KAGAWA eBOOKS」を始めたりしています。

入社当時を振り返って、ツラい事はなかったですか?

伊賀さん「研修で製本を学ぶのですが、私は飽き性で、コツコツと同じ作業をするのが合わなかったです笑 1時間くらい作業したつもりでも時計の針が進んでない!時計の故障と思いましたよ」

まさに精神と時の部屋ですね笑
アクティブな伊賀さんの修行を積む期間だったんですね。


営業職でも製本も学ぶのですか?

伊賀さん「お客様の前では営業職が会社の顔となります。だからこそ、弊社で扱う商品のことは、全て勉強しております」

さすが広真さんイチの営業マンですね!
会社の看板を背負う覚悟を感じます。

おせっかいな営業

広真さんの1番の強みってなんでしょうか?

伊賀さん「人情だと思います。正直なところ設備だけを比較しても他社と差別化できません。弊社は人間力でお客様に満足していただこうと思っています。ちょっとでも心配なことがあったら、営業が担当と情報共有しています」

具体的にどうされていますか?

伊賀さん「例えば、発送先の荷受けや荷主の間違いはないか?など出荷するまで営業担当がチェックしています」

確かに、印刷物の質が良くてもお客様に納品で間違いがあれば元も子もないですよね。

伊賀さん「そうです。私たち営業がせっかくの職人さん達の良い仕事を台無しにしてはいけない。最後は必ず人の手でチェックします」

なるほど、ミスが無いように各部署とコミュニケーションをこまめにはかっているんですね。私も営業として耳が痛い話です。

広真㉛

伊賀さん「仕事は人で回っていると思うんです。受注から納品まで、全て人のつながりです。私たち営業の極意はおせっかいかな?と思われるくらいに常に確認しています」

伊賀先輩!営業の極意、おっせかいな営業っていいですね。おぼえておきます!

伊賀さん「今の時代はネット印刷が主力です。どんどん印刷単価が安くなっています。正直、価格競争では勝てない時があります。その際は素直にお見積もりをお伝えし弊社のできることを丁寧にお伝えします。そうすれば価格を無理に下げなくても、広真を選んでくれるお客様も沢山いらっしゃるんです」

そうですよね、安ければいいというわけでは無いですよね。印刷って生活に身近だから、普段から値段を意識することはあまりありません。信頼される営業がいるというのもお客様には広真を選ぶ重要なポイントですよね。

伊賀先生!流石です!やばいす。

伊賀さん「笑。お客様が喜んでいただければ安いこともいいことだと思います。しかし私は価格以外で広真の価値を知っていただきたいと考えています。よくあるのは、他の印刷会社さんで受注できないようなタイトな納期の案件もできる限り対応しています」

生産と営業とで一貫して対応するからこそ受注できる仕事です。

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伊賀さん「困っているお客様をほっとけないのもあります笑」

まさに広真さんの強みである人情です、そして伊賀さんの人柄も感じるお話ですね。もう伊賀師匠と呼ばせてください!!

伊賀さん「いえいえ、そう言いながらめちゃくちゃなミスをしたことがあります」

おお、師匠!そうゆう話も大好物。聞きたいです!

伊賀さん「新人の頃、先方の納期があまりなく急ぎで受注した製本のお仕事です。全ての印刷を終えてチェックしていたら、広告が1ページ飛んでいました。真っ白なんですよ。事前のチェックが漏れていて(汗)全社員総出で2万枚を手作業で差し込んでいきました。深夜まで作業してどうにか間に合いました」

地獄ですね。。師匠にもそんな時代があったんですね。
全社員で助け合ってピンチに対応するのも、人情を大切にする広真さんらしいエピソードですね。

伊賀さん「呼び方が師匠になってますよ(笑) 二度と同じことが起きないように、おせっかいなくらいにチェックするようになったんです」

それがおっせかいな営業の誕生秘話だったんですね。

紙離れの印刷業界

前回、印刷業界に紙離れが進んでいるとお伺いました。
伊賀さんが考える、これからの印刷業界について教えてください。

伊賀さん「確かに紙媒体がなくなってきて、紙の印刷の受注は減っています。でも私は紙の印刷がなくなることは無いと思っています

それはなぜですか?

伊賀さん「良いデザインと良い紙。その相性が良ければ、永久に紙の需要は残っていくと思うんです。いまは値段ありきで話をされることが多いですが、お客さまにもっとデザインで印刷を選んでほしいと思っています。例えば、デザインのいい広告物でお客さまの事業によい効果が出たとなれば、お客さまも紙の価値もあがります」

なるほど、紙とデザインの価値をわかってもらえるような企画を増やせば紙の媒体ものこる。デザインの価値もあがりますね。

伊賀さん「そうです。以前は7割8割の広告代理店から仕事をもらっていました。でも印刷会社だからと受け身で仕事を待つだけではなく、これからもっと幅広いお客さまのニーズにお答えしたいんです。印刷屋が印刷をするのは当たり前で、印刷を熟知した私たちが紙や印刷技術に特化した企画を考えてお客さまにご提案していきたいです」

いいですね、クリエイティブと印刷技術をかけ合わせた企画。クリエイティブと印刷で協力していきたいですね。

伊賀さん「村上モリローさんにお願いしますって気持ちです。株式会社人生は上々だ さんような、質の高いデザインの仕事で印刷を受注できるのは本当に楽しい仕事なんです


印刷会社の営業マンの描く未来

伊賀さんの今後の目標をおしえてください。

伊賀さん「環境にいいものを紙と印刷で作れないか?印刷技術の認知を広げれないか?断裁後の用紙でベッドつくれないのか?とかアウトドアで使えないのか?とかやりたいことは尽きないんですよ」

紙のベッド!確かにサスティナブルで紙の可能性も感じますね。

伊賀さん「自分たちが考えた作品が世に出て、バズッてくれたらやりがいがでるかなと思っています」

印刷でバズるって面白そうですね、伊賀さんの企画が楽しみです。

伊賀さん「この業界は裏手に回るのが通例でした。名前が前にでない裏方の職業です。でも私は名前も世に出ていいと思うんです。私には子どもがいるのですが、例えば息子にお父さんがこの本をつくったと自慢したい。そうしたら子ども達も将来、印刷を仕事に選んでくれるかもしれません」

これからの子どもたちに、良い紙や良い印刷を残していきたいんです。

それが私の描く未来です。


AGARUMEDIAのひとりごと。
紙離れを言われて久しい印刷業界で熱意をもって挑戦している営業マンがいました。安くて速いことが良いとされていますが、安価でお手軽であること以外にも印刷の価値があるのではないでしょうか?
「子どもたちに自慢できる職業でありたい」これからの伊賀さんの挑戦が楽しみですね。
自ら未来を描き、新たなチャレンジをしている人をAGARU MEDIA PRESSでは今後も取材してまいります。チャレンジにこそクリエイティブが必要だと思っています。