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so this is Xmas 山根さんの企画

ビルの谷間の殴りつけるような風に僕たちは顔を伏せた。君は僕と繋いでいた手を顔の前に翳して、眠っているように見えた。
 
まだ時間はある。僕たちは喫茶店に入った。
僕の前にコーヒーが置かれ、君にはクリームソーダ。
「寒くない?」
「もう大丈夫」
「だって、まだ外は嵐だよ」
「嵐なの?」
君は軽く握った拳を唇にあててクスッと笑った。
「私ね、夏を忘れたくないの」
君と出会ったのは夏の海だった。二人ともスウェットを着て堤防にもたれ、賑わう浜を眺めていた。そう言えば、僕は靴を履いていたけど、君はサンダルだったな。
「でもさ、風邪ひいちゃうよ」
「大丈夫。ソーダって海の香りがするじゃない?」
君の青い海はアイスが溶けて、すぐに濁ってしまった。

君と出会った時、海の家から流れてきた曲は、名前はわからないけど松田聖子の♪渚に白いパラソル♫って曲だったねと言うと、君はJohn LennonのHappy Xmasだったと言った。
♪So this is Christmas. And what have you done♫
一緒に歌ったけど、途中で歌詞がわからなくなった。
 
上映開始の十分前に映画館に入った。
一抱えもあるキャラメル味のポップコーンを、君は左腕と胸の間に抱いてご満悦。

出会った日に君は「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」絶対観たい、と言った。まだロードショーの予定もわからなかったけど、僕たちはクリスマスイヴに、と約束したんだ。
 僕も映画は嫌いではない。でも絶対観たいというものがこれまであっただろうかと考える。
 
チョコレートがエンドロールのように、ゆっくりと足元に沁み込んでいく。
「楽しかったね」と僕は、君がいるはずのない隣の席にそっと囁いた。
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山根さんの#絶望のメリークリスマスに応募します。
山根さん、よろしくお願いします。


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