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猫の事情

よく目の合うとら猫がいる。私の部屋から外を見ると、ちょうど隣家の隙間の、そこだけ洗い忘れたようなブロック塀の上を、必ずこちらに向かってやってくる。つまりゴルゴ13同様、その背中を未だ見たことがないのだ。
猫は私に近づくと、何か言いたげに少し口を動かす。その様子から察するに「笑えばいいと思うよ」といったところか。
穏やかな顔つきからすると、どこかの飼い猫なのだろう。首輪こそしていないが、どこか気品がある。できればどちらにお住まいなのか探索したいところだが、その隣家の隙間はブロックの幅しかなく、ルパン三世ほどの細身でもない限り通り抜けは無理だ。
いつか勇気を出して訊いてみよう。
「君のご主人はラムちゃんなのかい?」と。

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