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散歩に出ても全然うまくいかない方の日

会社でなかなか良いアイデアが浮かばず、イヤホンを付けていったん外に散歩にでた。うまくいくことなんてほとんどない、だからその度に散歩に出ていたのではちっとも進まないのはわかっているけれど、今日ばかりは、今日ばかりは、とよく散歩にでてしまう。

お気に入りの本屋の、細かいけれど確かにかわっているレイアウトをチェックする。好きな作家の本がうしろに追いやられていると「あああ…」と思い、けれど変わりに表紙向きに飾られた知らない本を見て「あら素敵」としばらく目を止めてしまう。

いやはや、こんなことをしている場合ではないぞ、と我にかえって散歩を再開すると、会社のまわりでも少し外れた通りには知らないお店や邸宅があって、観察のしがいがあった。しばらく探索してから、こんなことをしている場合でもないと再び我にかえる。

どうも、今日は散歩に出ても全然うまくいかない方の日だった(うまくいく兆しが見える日もあるのだ、念のため。)。

たまらず時々コンビニ前の机でサボり合う悪友に連絡したら、1週間の休暇をとっているという。「ゆっくり休めよ!」と強いタップで送ったらよくわからないキャラクターのスタンプが返ってきて力が抜けた。

耳元から聞こえる楽曲が、うまくいかないばかりのわたしを鼻で笑うように、気持ちよさげに「夢にまでみた メキシコ〜」と歌っている。

夕暮れ前、風がだんだんと肌寒くなってきていて、会社にかえろう、と緩やかに思った。

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