【CALメンバー紹介】元グラドル作家、華嵐鵺の描き出すゴシック的エロティシズム
♦︎小説家 華嵐鵺(すずらん猫)の魅力に迫る
2022年に発足した文芸叢書CAL(Classic Anthology Library)では、デザインエッグ社から毎年2回、幅広いジャンルでアンソロジー小説を企画・出版しております。
この度、第4回企画「ヴァンパイア(吸血鬼)」をテーマにしたゴシック・アンソロジー『黒の聖餐』を10月10日に出版いたします。
本書には総勢18名の実力派人気作家が御参加して下さり、文学を愛する5名の編集部メンバーの御協力のもと完成いたしました。
今回は出版記念といたしまして、第4回企画にご参加くださった寄稿者様の中から、小説家の華嵐鵺(すずらん猫)様について御紹介させていただきます。
華嵐様は千葉県出身で、グラビアモデルとして御活躍されながら、複数の出版社で小説を連載しておられました。
小説だけでなく、ショートフィルムの脚本・監督を始め、ラジオ、映画イベントやDVDプロデュース等も経験されるなど、芸能界でのお仕事をメインに御活動してこられました。
小説家としては、恋する男女の心情描写・官能表現・ミステリアスな展開で人気を博し、現在は「すずらん猫」様のペンネームで、青春系ホラー小説、芸能界の裏小説、異世界転生小説等を公開しておられます。
華嵐鵺の描く吸血鬼小説「双子座守護石の獣たち」の魅力
今回、華嵐鵺様が御寄稿して下さった吸血鬼小説「双子座守護石の獣たち」は、優雅なゴシック風の洋館で暮らすヒロインの女子高生とその兄、母の物語です。
舞台設定は非常に丁寧に作り込まれており、旧華族を思わせる少女の気品ある内的独白によって物語が進行していきます。
また少女と血の繋がった美貌の兄も、この洋館の次世代の主人に相応しい模範的な優等生として描かれています。
これだけお伝えしただけでも、この洋館の中には何か恐ろしい怪異が潜んでいるのかもしれないと予感する鋭い読者様がいらっしゃるかもしれません。
そのはず、この物語は実は今回の吸血鬼アンソロジー小説の全作品の中でも、一、二を争うほどその官能性において際立っています。
まさに古典的なゴシック文学と、フランス革命期に流行したリベルタン文学(当時の官能小説)が最良の形式で融合したかのような物語に仕上がっています。
「双子座守護石の獣たち」のエロティシズムがどこに見出されるのかといえば、それはおそらくヒロインが視点人物に設定されている点にあると思います。
江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」と同じく、本作はこの少女が鍵穴から覗き見てしまう禁断の世界を描いています。
観察者が第三の視点として採用されることにより、官能的な場面にある種の劇場性が生まれているのかもしれません。
それは性愛に耽溺する者たちからすれば「何者かに見つめられることの悦び」であると同時に、それを観察する者からすれば「密かに見つめることの悦び」でもあります。
このような文学的な視座を、ここでは精神医学のキータームを援用してあえて「窃視症」(scopophilia)的な視点と表現することも可能でしょう。
代表例として、ボルヘスの愛読書だったアンリ・バルビュスの『地獄』と、ヴィスコンティが映画化したことでも有名なトーマス・マンの『ヴェニスに死す』を挙げることができると思います。
バルビュスの場合、隣室に通じる壁穴から覗き見る人間たちの恐ろしく、野蛮で、それでいて愛すべき内面世界が描かれており、マンの場合、美に取り憑かれた芸術家が、美の化身そのものであるかのような美少年を尾行し、観察し、酔い痴れ、そして最後には美と殉教してしまうという顛末が描かれています。
この二作品には共通して、語り手があたかも物語のページを開いた読者のような視点となって、対象を「覗き見る」行為が描かれています。
このような鍵穴から見られる世界は、実は観察者自身の主観性そのものを反映していますが、華嵐鵺様の物語の場合も、やはり「覗き見る」対象に語り手の欲望が反映されています。
筆者は「双子座守護石の獣たち」を読みながら、このような窃視的な視点とエロティシズムには不可分の関係があるのではないかと考えておりました。
そして、この視点をゴシック的な舞台装置の中で極めて巧みに応用し、一つの性愛文学にまで仕上げているところに、華嵐鵺様の類稀な文才があるのだと思います。
今回の特集記事では、主に「吸血鬼企画」に御寄稿くださった作品「双子座守護石の獣たち」を中心にして華嵐鵺様の魅力を御紹介させていただきました。
華嵐様の最新の御活動は、彼女のXアカウントでも日々更新されていますので、ぜひともフォローと御支援をよろしくお願いいたします。
最新情報はCAL OFFICIALで随時公開していく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
◆◇書籍情報◇◆
※本記事に掲載させていただいた御写真は、すべて御本人様の使用許可を得た上で掲載させていただいております。
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