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コロナ後の世界と日本の未来の思考~ 「縄文的地方」と「弥生的地方」その5ーシナリオ分析結果

この続きを書いていきます!

シナリオ分析の実施

アンケート結果を基に、株式会社代表取締役福田さやか、CDPジャパン シニア・マネジャー高瀬香絵博士(エネルギー専門)で議論を行いました。

前の記事で紹介した以下の図の右上の事象にきているカードを起点にし、今回は日本の未来というテーマであるため、国際的なテーマは分けて考え、国内の居住形態、地方への移住の流れがどうなるかを中心に議論を行いました。

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結果として、以下のようなシナリオが作成されました。

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まず、所与として、

ーコロナの影響でリモートワークがある程度定着する(労働における空間的自由度+時間裁量度)を確保することを重視する人が増える)
ーバーチャルに文化やエンタメを楽しめる土壌と技術が出来る(地方に居ても地域文化に加え都市の文化を共有できる暮らしが出来るようになる)
ー大学の大講義形式の授業が、質の高い授業を分かりやすく提供できる先生の遠隔授業になり、大学の統廃合が起きていく。その先にアメリカの傘下に入ることもあるかもしれない?(どこにいても質の高い教育を選択できるようになる)
ーコロナ第2波第3波が来てずっとポストコロナにならずウィズコロナな世の中になる
ーコロナに感染していないことを証明する検査態勢が確立されるときが近い将来来る
ー首都直下地震が起きる(首都の機能分散と地域への権限委譲)
ということを前提に考えました。

「縄文的地方」と「弥生的地方」の分断(シナリオ初期)

人々の中には、「どこで働いても良いのだから、リゾート地などで休暇などをかねてリモートワークを行うワーケーション的 な働き方をしよう」という人が出てくるかもしれないし、色々な素敵な地域を転々として働く「ノマド化」 する人々がでてくるかもしれません。このような人々と、「コロナが怖いので大都市には出たくない、移動はリスクなので同じところに留まりたい」と考える高齢者を中心とする人々に分かれていくのではないかと予想しました。
また、こうした「ワーケーション的働き方をするノマドな人々を受け入れる地方」(狩猟民族的な「縄文的地方」)と「なるべく外の人は入れたくない、鎖国的な政策をとる地方」(農耕民族的な「弥生的地方」)に地方は大別され、その間に交流はない「分断」が起こるのではないかと考えました。
なお、縄文的地方、弥生的地方は、それぞれの地方の特徴と縄文時代の狩猟民族的な定住しない文化、弥生時代の、定住してコミュニティを作って農耕で生きていく文化をなぞらえた名称として分類のために付けただけであり、縄文文明や弥生文明についての細かな特徴が当てはまるというわけではありません。これらは単なる呼称となります。
さて、弥生的地方は孤立し、その自治体の中だけで経済を回していくことになるかもしれないと考えました。縄文的地方はそれぞれに連携し、有機的に結びつきながらお互いにノマドワーカーを行き来させたりしていくことで、経済は活性化していくかもしれません。両地域は完全に分断されてしまいます。
そうなると、コロナを恐れる高齢者を中心とした人々は鎖国的な自治体である「弥生的地方」に留まり、ノマド化する勤労世帯はノマド受け入れ自治体である「縄文的地方」を転々とするようになります。両方の地域において、人々は地方に住むようになります。なぜなら、所与である首都直下地震、そしてコロナ第2派・第3派によって、東京はもはや居住の中心である必要がなくなるからです。その背景には、バーチャルに一流の文化や教育を楽しめる技術の進展があり、それによって大都市でしか味わえなかったような文化が地方でも味わえるようになるかもしれません。
 では、「弥生的」では得られない「縄文的」地方を選ぶ人たちにとって重要な要素は何でしょうか。これは、閉鎖的・固定的な人間関係、社会環境にとどまることを嫌う選好であり、都会に住むことを好む人々の1つの大きな要因であろうという議論が行われました。こうした人たちは匿名性を好み「誰でもない誰か」で居たい、プライバシーを重視したい、オープンに色々なことを楽しみ、新しい刺激を得たい人たちであると考えました。

弥生的地方の状況(シナリオ中期)

「弥生的地方」は高齢者が増えて負担が増え、一部ではそうした負担に耐えきれず消滅する自治体も出てくるかもしれません。この動きで自治体の統廃合が起き、大きな行政区間になっていく可能性があります。これが道州制になるかどうかは議論が分かれるところです。今回の議論の中でも、プロジェクトに助言をいただいた中央大学名誉教授の細野助博先生からは、「日本は(あの江戸時代を含めて)元々中央集権的思考に安住しがちであり、ドイツや米国のような(道)州制は歴史的・文化的に日本に根付かないだろう」というコメントをいただいています。ただ、あり得るシナリオとしては、一つ入れておいてもよいかもしれないと考えます。
また、生産は地産地消になり、生産していない産品の値段は上がる(例えば乳牛が飼われていない地域では牛乳が1リットル500円になるなど)可能性があります。また、鎖国的な弥生的地方では分散居住で長距離の移動はしないようになり、移動手段は個別化していきます。このため、たとえTESLA社が自動運転や電気自動車の技術でシェアを伸ばし、日本勢のシェアが落ちる日が来たとしても、パイ全体が上がるので大きな影響は起きないと予測しました。
また、「弥生的地方」での高齢者居住と若者を中心としたノマド化で「縄文的地方」で働くことで高齢者と若者の分断が起き、高齢者は刺激がなくなるため、認知症患者が今の2倍程度に増えるかもしれません。この事態で仮に連邦制になっていなければ、中央政府がこの事態を解決するために消費税を25%に上げたり、ベーシックインカムを導入したりするかもしれません。

縄文的的地方の状況(シナリオ中期)

ノマド受け入れ自治体である「縄文的地方」はノマド化する人々は所有をせず、シェアエコノミーが発展するためあらゆるものは共有され生産される物品の絶対的な個数は減っていくかもしれません。移動手段の個別化は起きないため、仮にTESLA社が自動運転や電気自動車の普及でシェアを伸ばし、日本勢がシェアを落とす場合は日本の自動車業界、ひいては日本経済に大きな影響を与えるかもしれません。
また、ノマドを受け入れる「縄文的地方」は、若者がたくさん流入し、活発な外の刺激が入って地域活性化し経済発展をしていくかもしれません。こうした発展する自治体が困窮する自治体を吸収合併していけば、この流れでまた連邦制に近づく可能性がある。このとき、「縄文的地方」は良いことばかりにも見えますが、リスクはないでしょうか。
コロナが外から流入する人々によって持ち込まれ、特に離島や人口が少なく医療体制が整っていない地方では医療崩壊が起きて死亡率が急上昇、破綻する可能性もあります。こうなると、こうした破綻した地方は強い地方に飲み込まれる可能性もあります。

シナリオ分析の結果

今回の分析によって、コロナウイルスは収束せず、「ウィズコロナな状況」 が続くことが前提であり、また、首都直下地震も起きる可能性が高いという認識を多くの人が持っていることが分かりました。日本の未来にとって非常に重大なインパクトをもたらす事象が「起こる可能性が高い」ということは、重要な示唆を与えてくれます。
このような状況の中で、都心に住み続けることが難しくなる一方で、田舎でも楽しめる文化やエンターテイメント、教育を支える技術革新は、人々の地方への移住を後押ししていくだろう。ただし、「どのような地方に住むか」というのは、人々の価値観によって大きく異なりうることが分かりました。
それは、狩猟民族のように移動を繰り返し、その場その場で生きる糧を得ていく「ノマド化」する人々を受け入れていく、「縄文的地方」と、農耕民族のように一定の場所に定住し、そこで生きる糧を作りコミュニティを持ち生活する人々を受け入れる一方、外の人は排除する鎖国的な「弥生的地方」への地方の分断です。
そのどちらを選ぶかによって、地方の未来は大きく異なっていくのではないでしょうか。ワーケーションの受け入れに対する考え方や体制、また、そもそも地域の外の人たちに対する見方や考え方、価値観が、閉鎖的なものであっては、「縄文的地方」になることは難しいでしょう。昨今報道されているような他県ナンバーへの取り締まりや、帰省する東京の人を非難する風潮を持つ地方のままでは、行政機関が受け入れを表明しても、地元の人から歓迎されないようでは快適な滞在は出来そうにありません。
受け入れを活発に、喜ばしいものにするには、「コロナではありません」という証明が簡単にできるような新しい検査体制(実現は遠いかもしれないが)やワクチンの開発が必須になるかもしれません。
また、「縄文的地方」と「弥生的地方」それぞれにおいて、地方の中小都市は変容していくでしょう。訪れたくなるような新しい「地域像」やその魅力を示せる自治体が強くなっていくのかもしれません。
日本の未来については色々な予測が可能ですが、今回のシナリオ分析で開かれた地方が力を持っていく可能性が示されました。コロナの影響で外国人観光客が日本を訪れることが当面難しい今、また、日本人も海外旅行に出かけられない今、日本の色々な地方が脚光を浴びていることは間違いないようです。
事実、総務省が2020年8月27日に公表した7月の人口移動報告(外国人含む)で、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)から他の道府県への転出が転入を1459人上回り、人口流出に当たる「転出超過」となったことが分かっています。これは、集計に外国人を加えた2013年7月以来初めてであるという。新型コロナウイルスの感染者が急増した東京都への転入が減り、2カ月ぶりに都が2522人の転出超過となったことが影響したということである。東京圏からの転出は前年同月比5.7%減の3万562人だったのに対し、転入は16.1%減の2万9103人。東京都からの転出は3万1257人、転入は2万8735人です。
このように、今時点では人口の地方流出は起き始めているように思います。東京における賃料も下落傾向にあると不動産業者関係者にも聞きました。
一極集中が改善され、地方が力を持っていくことで、日本の国力が上がっていくような、明るい未来が描けるような要素としてはどんなことがあるのか今後も思考していきたいと思います。

次項では、本研究に対する先生方からのコメントを紹介します!

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