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【ドキュメンタリ】『プレジデント』ジンバブエ大統領選と映像人類学的インパクト

なんという強烈なインパクトの塊のような映像なのだろう。

例によって大きな波乱となった2018年ジンバブエ大統領選挙の一連のストーリーを描く、デンマークのカミラ・ニールセン監督によるドキュメンタリ映画『プレジデント』は終始濃密に多くのひとの思いが詰まった映像だった。

ジンバブエにおける選挙は、日本とはまるで違う意味でドラマチックかつ波瀾万丈と言いたいところだが、そのようなある意味健全そうな言葉で片付けたくはないほどに不正と暴力の緊張がずっと高まった状態で行われる。

ロバート・ガブリエル・ムガベ氏は、1980年の独立直後から首相として、1987年から2017年の30年を大統領として計37年間権力の座についていた。

この大統領の在任期間中、国際社会に批判される数々の強引な政策が実施され、1990年代の終わり頃から政治経済は傾き始める。やがて、2000年の土地改革では白人農場主の所有する土地を強制収用して再分配したことが経済への大きな打撃となり、世界最悪だった年率2億パーセント越えのハイパーインフレーションへとつながってしまう。

2017年、軍部によるクーデターで退任に追い込まれ、ムガベ氏は2019年に95歳で亡くなった。

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