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実家の好きな場所

子どもの頃、父の書斎に居るのが好きだった。
書斎といっても、ログハウスと茅葺き屋根の家の間を、廊下で繋いだ二世帯住宅という構造上、廊下を渡るために必ず通り過ぎる必要があった。
常にオープンな書斎であったのだ。

鈴鹿山脈の山の麓、裏山は国定公園といった環境だったので、もちろんショッピングモールもゲームセンターもない。図書館も塾もない。

雨の日や、家にいる日。
日常で廊下を渡るとき。
書斎にいっては、父や母の本を眺めては手に取ってはパラパラめくったり、読んだりしてみた。

仕事である教育関係の本や学生時代に使ったと思われる数学の本と一緒に置かれている、趣味のアウトドアやスキー、昔から続いている農業の本。
母の趣味の押し花、過去に使ったと思われる料理・お菓子のシリーズ本。
誰のかも分からない古本屋で大量に購入された小説の数々。

この本が欲しいから買うではなく、自分では選ばないであろう分野から読みたいものを選んでいく。そんな感じで本を読んでいた。

今思えば、理科実験が好きになったのも、おかし作りが好きだったのも、様々なジャンルの小説を読むようになったのも、書斎にあった数々の本のおかげだと思う。
仕事の本だけでなく他/多分野の本(しかも専門書系)が多くあったこと、それらが実際に使われていたこと。この環境が、良い意味で休日も仕事関係のことをすること、趣味も楽しむこと、という私の価値観に影響したと感じている。

今日、明日は仕事なので令和になったら帰省するつもりだ。
帰ったら、久しぶりに父の書斎で本を選んでみたいと思う。
そしてひっそりと、私の書籍も置いておこう。
父や母が選ばないであろう分野の本を二人は読んでくれるだろうか。





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