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ホモ・デウス(上):人類は自らをアップグレード

ホモ・デウス(上)(ユヴァル・ノア・ハラリ著)がとても考えさせられる内容だったので、読もうかなと検討中の人・読むのは難しそうだけど中身だけサッと知りたい人に、情報をシェアしたい(※ネタバレ有の領域は事前に明記しています。小説ではないのでネタバレという概念がどこまで当てはまるかは微妙ですが…)。

時間は有限。
どうせ読むなら、自分に合った良書をじっくり読みたい。
そう考えて日々情報収集している人へ。

ユヴァル・ノア・ハラリという人(ザックリと)

世界的に大ヒットした「サピエンス全史」の著者。
イスラエル人で、歴史学者(博士)。現在はヘブライ大学(イスラエルの国立大学)で歴史学を教えている。

ホモ・デウス(上)のあらすじ(超ザックリと)

小説ではないので、あらすじというより、内容を超ザックリと要約する。
実は、この本の表表紙そでの部分に短い宣伝が書いてあって、その内容がこの本の究極的な要約になっている。

人類は自らにとって最悪の敵であり続けた、飢餓と疫病、戦争を克服しつつある。この三つの問題を克服した我々は、今後不死と幸福、神性の獲得を目標とするだろう。人類は自らをアップグレードし、ホモ・デウス(「デウス」は「神」の意)に変えるのだ。
ホモ・デウス(表表紙そでの宣伝)

この究極的な要約に少し肉付けするなら、
・飢餓、疫病、戦争をどのように克服しつつあるか
・現在、人類は地球に存在する生物としてどんな状態にあるか
・神性とは何か
といったことが分かりやすく解説されている。

この「分かりやすく」が重要ポイントで、著者はものすごく頭がキレる人だと分かる部分だ。なぜなら、専門家でもない私が読んでも「分かりやすい」と思うほど、身近で具体的な例を挙げて解説している。この「身近で具体的な例」がとても絶妙で、ただの研究者だけでなく物書きとしても才能あるじゃないか!と感動させてくれる。

科学やテクノロジーがますます急速に進化し続ける今日、今から30年後の未来を具体的に想像できる人がどのくらいいるだろう。30年後、私たちはまだスマホを握っているとは思えない。じゃあ代わりに何を握っているのか? そもそも、それは有形で握ることができるものなのか?

そんなことに興味がある人、ITやイノベーションに関心がある人、哲学が好きな人なんかも、この本を大いに楽しむことができる。
歴史好きな人は言うまでもなく。

具体的な内容をポイントだけ(ネタバレ)

【飢餓、疫病、戦争をどのように克服しつつあるか】
これは簡単に想像できるとおり、科学とテクノロジーの力で克服しつつある。いまだに飢餓や疫病を壊滅できたわけではないし(特にコロナ)、戦争もそう簡単に消えはしないが、それらの存在が人類を滅亡まで追い込んだり人類に壊滅的な打撃を与える可能性はかなり低い(コロナ以外)。
なぜそう言えるのか?という部分は、具体的な例を挙げて解説してある。

【現在、人類は地球に存在する生物としてどんな状態にあるか】
ポイントだけ言うと、「人間至上主義」というワードが全てを表している。
人類は他の生物と同様に動物であるにもかかわらず、「人類」と「その他の動物」をくっきりと明確に分けている。そして、「その他の動物」を人類と同等に扱うことはしない。
その昔は同じ弱肉強食の世界で生きていた人類が「その他の動物」を支配していく過程が解説されており、その中でも特に重要なのは、宗教によって人類が神に近い特別な存在へと昇格されたことだ。

「人類」と「その他の動物」をくっきりと明確に分けていることに関し様々な具体例が挙げられており、そこまで心を砕く理由として、こんなことが書かれている。

ホモ・サピエンスは必死に忘れようとしているが、私たちも動物であることは動かし難い事実だ。そして、自らを神に変えようとしている今、自分の由来を思い出すことはなおさら重要になる。私たちが神となる未来を研究しようというのなら、動物としての自らの過去や、他の動物たちとの関係は無視しようがない。なぜなら、人間と動物の関係は、超人と人間の未来の関係にとって、私たちの手元にある最良のモデルだからだ。超人的な知能を持つサイボーグが普通の生身の人間をどう扱うか、みなさんは知りたいだろうか?それなら、人間が自分より知能の低い仲間の動物たちをどう扱うかを詳しく調べるところから始めるといい。
ホモ・デウス(P. 88、89)

【神性とは何か】
人間が「神に近い特別な存在」として昇格できた理由をさらに深く掘っていくと、他の動物と決定的に違うのは
・無数の見知らぬ同種と柔軟に協調できる
・想像上のモノに共通の価値を見出す
という事実に行き着く。アリやハチなど多数で協調する生物もいるが、同じ巣の住民など協調できる相手は限定的だ。それに比べて人間は、見知らぬ人と協力して家を建てたり、食料を分かち合ったりできる。
単なる紙切れであるお金に共通の価値を見出し、モノと引き換えにお金で取引できるのも、人間だけだ。

【デウス化するために何が起こるか】
なぜ著者が未来の人類を「ホモ・デウス」と呼ぶかというと、デウス化するためにはターゲット3つ(不死・幸福・神性)のうち特に「不死・神性」については、人間の生化学的な部分を自由に操れるようになる必要があるからだ。
不死なんて不可能に近いような気がするが、その実現に向けて研究している人が多くいる。

もし私たちが自分の体から死と苦痛を首尾よく追い出す力を得ることがあったなら、その力を使えばおそらく、私たちの体をほとんど意のままに作り変えたり、臓器や情動や知能を無数の形で操作したりできるだろう。
ホモ・デウス(P. 59)

そして、これまで力を道具のアップグレードに頼ってきた人間は、心と体のアップグレード、または道具と自身の一体化へと進んでいく。
アップグレード方法として著者が予想しているのは、
・生物工学
・サイボーグ工学
・非有機的な生き物を生み出す工学
の3つだ。

ホモ・デウス化はゆっくりと、しかし着々と(ネタバレ有)

何事も、1日にして起こることはほとんどない。
今や必需品のスマートフォンも、最初はビジネスバッグほどの大きさの携帯電話が小型化され、数年後にさらに小型化され、さらに数年後には液晶画面が大きくなり、そしていつの日か白黒だった液晶がカラーになり……といった具合に年月をかけて今の形になった。
次のステップへと進化していくスピードはどんどん加速しているが、それでも、一夜にして世界が一変するほどの出来事はまずないだろう。

変化は日常的に起こり、誰もそれを大して気に掛けることはなく、いつの間にかデウス化へ一歩近づいている。

人間は健康と幸福と力を追求しながら、自らの機能をまず一つ、次にもう一つ、さらにもう一つという具合に徐々に変えていき、ついにはもう人間ではなくなってしまうだろう。
ホモ・デウス(P. 67)

上巻を読み終わった感想

なによりも感激したのは、やはり著者の頭が相当キレると分かる書きぶりだ。
正直、最後まで興味津々に読み終えることができたのは、専門家でなくともスラスラ読めるよう、簡単かつ身近な具体例を多く挙げてくれているおかげ。
専門書のような難しく硬い言い回しがあまりないもの嬉しい。

IT系、ウェアラブルデバイス、AIなどの行方にとても関心がある私としては、どんな風にデウス化していくのか、気になって仕方ない。
その具体的なところは、おそらく下巻でもっと詳しく解説されているだろう。
上巻は、「なぜデウス化すると予想できるか」という部分を具体的に説明する形だった。上巻を読んだ人は、下巻を読まざるを得ない。一番気になる核心部分は下巻にあるのだから。

下巻を読んだら、またレポしたいと思う。


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