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【読書感想】シルクロード(下)

こんにちは。
ヘディン著『シルクロード(下)』を読みました。読書記録として感想をメモしておきたいと思います。


内容

下巻はウルムチでの軟禁生活から始まりました。
探検の肯定的にはここから沿海方向へ帰っていく内容なので、軟禁の話はそこそこで帰り道の話になると思ってい巻いた。

しかし、延々と軟禁の話が続き、脱出できそうな雰囲気が出ながら脱出できないということが何度か繰り返されました。
最終章の「旅の終わり」がp.220までなのですが、約100ページはウルムチの話です。

ウルムチを脱出した後は、自然と戦う大変さはありながらも、新疆で巻き込まれた戦争や政治的な思惑のようなイベントはなく、読み手からしたら楽しい冒険譚を読んでいる感じでした。

ウルムチからは、ハミ→安西→蘭州→西安と、おそらく予定通りの道を通って無事にゴール。じつはここが”シルクロード”ということをここで初めて知りました。北の道はシルクロードとは少し違うんですね。

感想:軟禁生活から帰路

ウルムチでの軟禁生活の辛さが凄く印象に残りました。
その反動か、西安への帰路は大変な思いをしているのにどこか楽しそうな感じがして読んでいて楽しかった。

速く先に進みたいのに何週間も足止めされるのは想像以上の苦痛だったと思います。
その間、自作の双六くらいしか娯楽がないような書き方をしていて、よく正気を保ってられたなぁ、という感じです。

訳者のあとがきを読むと、ヘディンの文章からは人間味を感じられないらしいのですが、この日本語の本からはバンバン感情が伝わってきたと思います。それは訳者である福田宏年さんの努力のおかげかもしれません。

今グーグルマップで調べるとウルムチって西安からめちゃくちゃ遠いですね(北京→ウルムチ→西安だと約6000km) 。ここまで自動車で往復するなんて、それも今の車よりも乗り心地も悪いだろうし、もちろん道がとても悪い中を走るなんて…

北京→ウルムチ→西安

そのうえ、西安について1934年のヘディンは70歳だというので、それにも驚きました。本文中でも高齢な雰囲気がありましたが70とは… それでこの冒険は凄まじい…。

トラブルが起きたとき、ヘディン自身は人に任せてばかりだなぁ、と思っていましたが年齢を考えるとしょうがないですね。どちらかといえば、高齢のリーダーに重労働させて何かあっては大変だし、作業の邪魔だったのかも。

感想:当時の中国情勢のリアルを感じられる

冒険の本文とあとがきを通して、1930年代の中国国内(特に内陸部)がどのような状況なのか、すごくリアルなイメージを持つことが出いました。

人々は貧乏ばかりで、市長と呼ばれる人でも質素な生活をしていたようです。
軍隊や将軍は自身のためだけに戦ったり、徴税したりしていて、何も希望が持てなさそうな世界でした。

それでもそこで生活をしている人達はいて、子供を作って何年も暮らしているのが不思議でな感じでした。

グーグルマップで見ても新疆地域は多くが砂漠なのですが、当時から紛争地域だったようです。

この本を読みながらもWikipediaを見たりしたのですが、いろいろな勢力が争っていたようでした。

日本側から見ると、歴史の中の中国は沿海地域の豊かな土地だけしか見えないのですが(それでも貧乏に見えていましたが)、それが中国のすべてではなく、中央アジアの紛争とも少なからず関連していたことを感じました。

ヘディンは中国のことが好きで日本に負けることはないと信じていたようですが、ヘディンの想像通りにはならなかったような気がします。

この本を読んで、所謂、東トルキスタンの歴史に興味を持つことが出来ました。
今後関連する本に出会うことがあれば、ぜひ読んでみたいと思います。

今日は以上です。

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