見出し画像

にわかの僕らはラグビーというスポーツを観ているのではなかった

■にわかでいいじゃないか

ラグビーのワールドカップを日本でやるらしい。でもラグビーってほとんど観たことないし、ルールよくわからないし、別にテレビでチラ見するくらいで良いかな。
と最初は思っていました。
けれど、まあワールドカップだしなあ。雰囲気だけでも観てみたいかなあ。
と思っているところに、ハイネケンの良い広告が目に入ったのでした。

にわかで良いじゃないか

画像1

とかなんとか。

テレビでも、ルールが分からないまま試合を観ていた人が、細かいことは理解していないままに周りといっしょに盛り上がる、みたいなCMが流れていました。


あー、この程度の感覚なら行けるなー。ということで、行きたくなったのでした。
ハイネケンやるじゃん。


■フランス対アルゼンチン@東京スタジアム

チケットが取れたのは開幕2日目の試合、東京スタジアムでのフランス対アルゼンチン。熊谷ならもうちょっと安いチケットもあったけれど、まあ一番近いし。

ワールドカップ公式サイトには、入場時のセキュリティチェックが厳重で入場までに60分くらいかかるかもしれないから、90分前くらいには来てね、とか驚きの注意が。
まあ一大イベントだし仕方ない、飲食とかの広場もスタジアム脇にできるらしいし、早めに行ってみるか。と、結局当日は2時間以上前に到着。
しかし、入場までは非常にスムーズに流れてすぐに入れてしまいました。
おいおい、時間、あまりまくり。

でも、スタジアム横につくられた飲食スペース、スペクテータープラザで試合まで飽きずに過ごせました。

画像2

ボールを投げたりクッションに飛び込んだりといったラグビー体験ブースもあり、なぜかランドローバーの市場コーナーもあり、日本刀や箸といった日本文化体験コーナーもあり。もちろん数店の食べ物屋台と、大量のハイネケンのビール売り場もあり。
そして、大きなモニターが設置されていて、別会場の試合を観ることができたので、東京スタジアムでの試合前後も2時間くらいずついても大丈夫。

スペクテータープラザからみんながスタジアム内に移動したのは、意外なほどに試合開始直前。ビールを買って10分前くらいに席につき、選手入場から良い盛り上がりでした。

画像3


試合内容も接戦。最後にフランスがドロップゴールで逆転勝ちというお洒落な展開でした。

試合が終わってからも、また飲食スペースに戻って他の会場の試合を観ながらビール飲んで。ハイネケンに敬意を表して試合前後合わせて6杯いただきましたよ。それくらい良い雰囲気だった。

画像5


帰り道も。府中の華屋与兵衛が異国になるくらいの盛り上がり。

画像6


■僕が観ているのはなんだろう

しかし、試合を観ながら思ったのは、僕はいまラグビーという競技を見ているのではなくて、ワールドカップというイベントを見ているんだな、ということ。
ラグビーが観たくて来たんじゃなく、ワールドカップの雰囲気を知りたかったんだ。

一般的な商品の場合でも、それを購入したことがないとして、
・名前も知らないブランド
・名前だけは知っているブランド
・それを使ったときの体験までイメージできるブランド
では、それぞれ購入にいたる確率はまったく違うわけです。

ラグビーは、名前は知ってるけど体験のイメージまではできない段階、という人がほとんどでしょう。
その人たちをどうやって観戦に行かせるのか、言い換えれば、見に行った時にどんな体験ができるかをどうやってイメージさせるのか。


■ラグビーそのものを伝えようとしても難しい

そこでね、本気のラグビー愛好者とか、古くからのファンに聞くと、いまいちイメージがわかないんですよ。
ルールの説明や、競技の話や、選手やチームの紹介なんかから入るから。よくわかんない…っていう感想になってしまう。これを入口にラグビー自体を好きになってもらいたいっていう熱い気持ちは伝わってくるんですが、あるいはその人がいかにラグビーが好きかということは伝わってくるんですが、ちょっとすいません無理です3歩下がりますね、という気分になってしまう。

その人はラグビーの魅力を話してくれてるんですけど、僕ら素人はラグビーを観ることの魅力を知りたい。そこに齟齬が発生してたんです。

そこで、今回のハイネケンの広告。
にわかでいいじゃないか
ラグビーに触れたことのない人の背中を押す言葉。テレビCMも、ラグビーなんて全然わからない人がバーに入ったら他の客たちがラグビー観て盛り上がっててなんか楽しかった、っていうストーリーでした。
つまり、ラグビーどうこう、ラグビーの魅力ではなく、観戦するという行為の体験をイメージさせています。これならわかるんですよ。なんかしら同じような体験はしたことのある人がほとんでしょうから。他のスポーツを観て楽しかったとか、ディズニーランドいって盛り上がったとか、そういう気分をイメージさせている。とても伝わりやすい。


■ワールドカップが終わったら、ラグビーそのものを観るのか

にわかは気楽にワールドカップを観て盛り上がっています。けれど、もともとラグビーファンとして定着していた人たちは、次を意識せずにいられないようです。このチャンスをいかして、これからもラグビーを観続けてくれる新しい固定ファンを獲得したい、という意気込み。
つまり、ワールドカップではなく、ラグビーを観る人をどうやって増やすか。

正直なところ、現段階では今後につなげる動きは見られません。
そりゃ今回たくさんの人たちがワールドカップを観たんですから、その中から一定の割合でラグビーそのものに惹かれて観続けるようになる人はでるでしょう。でも、ほんの一握りでしょう。
僕は個人的には、にわかの人を効率よく固定ファンに引き上げる方法などないと思っています。今回のワールドカップと同じくらいハードルのとても低い初心者が触れやすい場面を作り続けるしかない。コンバージョンレートは上がらないんだから分母を増やすしかないよねっていう考え方。

ワールドカップ関係は、広告も、SNSも、動画配信も、すごく良くできていて配信頻度も高いんですが。日本のリーグとか、チームとか、協会とか、そういうところの配信がぜんぜん目に入ってこない。
ワールドカップ公式のコピーも、「4年に1度じゃない一生に一度だ」って書いてあって、なんかリピート育成無視の焼畑スタイルに見えてしまう。
ラグビーとの接点は増えていないんだよなあ。

これからどうなるか、楽しみにしつつ。マイナースポーツ普及の成功事例になって欲しいものですが。

画像4


ビール代になります。