Books for us(2)ざしきわらし (柳田国男原作 京極夏彦文)
7歳の娘は、「怖い本」とか「恐ろしい本」などが大好きだ。母親に読んで聞かせては、「怖い?ねえ、怖い?」と怖がらせて喜んでいる。
しかたなく、私は、「うへぇ、、怖い怖い。読むのやめて。」と付き合っているが、眠る前に読むと、当人が怖くなってしまい、トイレや一階の本棚に本を取りに行くのに毎回つきあう羽目になり、かなり面倒くさい。
さて、この美しく、少し気味の悪い雰囲気満点の絵本は、最近読んだ妖怪系の絵本の中では特に良書だと思う。何より1ページ1ページの絵が美しく、大判の絵本で迫力があり、色合いが印象的でつい見入ってしまう。そして何よりざしきわらしの瞳が実に気味が悪い。美しい里山の風景画や、民家の描画と、ざしきわらしの不気味さ加減のギャップが読むものをどきどきさせる。
遠野物語を原作としており、昔の風物や慣習に関する言葉はそのままに文にされているので、7歳の娘には少しわからないこともあり、昔の風習や絵の中の日本の昔を少し話して聞かせる必要があるが、それもまた興味深い。
文面は淡々と語られる語り口で、それがまた、単なる空想の物語ではなく、時代を超えて現実に今でも起こりそうな気がして背筋がぞっとする。
「ねえ、お母さん、うちにはざしきわらしがいる?」
「そうねぇ。いるといいけど、見たくはないねぇ。」
「私おんなのこのざしきわらしがいい。」
「そう?おとこのこもかわいいかもよ。」
「ねえ、うちから出て行っちゃったらどうする?」
「どうしようねぇ。出ていかないように、毎日楽しいお話をきかせてあげるといいかしらねぇ。」
と適当なことを話しているうちに、ベットの中の娘は、私のパジャマの裾をぎゅっとにぎったまま眠ってしまった。
(注)『遠野物語』:柳田国男の著書。1910年刊。現在の岩手県遠野市の民間伝承を土地出身の佐々木喜善(きぜん)から聞書きし,神,妖怪,年中行事,家の話などに整理配列したもの。1935年増補版を刊行。のちの柳田民俗学に発展する可能性を含む初期聞書きの一つ。
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