見出し画像

Cannes Lions 2022 - セッションダイジェスト(第二弾)

みなさん、こんにちは!ad:tech tokyo 事務局です。
今年3年ぶりのリアル開催となった Cannes Lions 2022。印象に残ったセッションをダイジェストでお届けしているレポートの第二弾です。今回は、今年初登場のNetflix、Creative Company of the Year や Creative Marketer of the Year を受賞した企業など、会期中に話題となった企業・人物にスポットライトを当ててセッションを紹介します。


いまだロシアからの侵攻を受けているウクライナより

"Creativity Under Bombs"

こちらのセッションでは、ウクライナのクリエイティブをテーマに、4名のクリエイター達と
ゼレンスキー大統領(オンライン)がステージに招かれました。

頻繁な空襲と砲撃のもとで生活し、「創作すること」がほぼ不可能な状況の中で、ウクライナのクリエイティブ・コミュニティは、文化と情報空間において、市民の回復力を高める「原動力」へと変貌を遂げた。多くの人が徴兵され、ボランティア運動や領土防衛部隊に参加しましたが、創造力が国民の主要な武器であることに変わりない。会場のオーディエンスに対して、クリエイティブを通じたウクライナへのサポートを強く呼びかけました。

■ スピーカー
JAMALA (Singer, JAMALA LTD)
Yaroslava Gres (Coordinator UNITED24, PR and Marketing Specialist, Journalist and Blogger, Gres Todorchuk)
Pasha Vrzheshch (Co-owner and Creative Director, Banda Agency)
Oleg Tomin (Creative Director/Director, Bart&Fink)
Volodymyr Zelenskyy (President of Ukraine)

■ 本セッションでの注目コメント
ゼレンスキー大統領:
「ロシアのプロパガンダは強力だが、我々の創造性の方がずっと強いと信じている」
「私たちは、私たちの自由のためだけでなく、全世界の自由のために戦っている。世界は、ウクライナが自由のために戦っていることを忘れてはならない」


Creative Company of the Year を受賞した、WPP CEO の登壇セッション

“The Creative Transformation of a Marketing Icon"

The Coca-Cola Company Global CMO (中央) / WPP CEO (右) 

The Coca-Cola Company と WPPは、創造性、文化、コミュニティを通じて、どのようにイノベーションを推進しているのか。物理世界とデジタル世界を横断する革新的なブランドプラットフォームと、文化体験を創造することによって、どのようにマーケティングアイコンに変革をもたらしているのかが語られました。

■ スピーカー
Mark Read (CEO,WPP)
Manolo Arroyo (Global CMO, The Coca-Cola Company)

■モデレーター
Dawn Ostroff (Chief Content and Advertising Business Officer, Spotify)

■本セッションでの注目コメント
Global CMO, The Coca-Cola Company:
「Q:The Coca-Cola Company が創業して136年、常にマーケティング業界をリードしてきたことは、本当に素晴らしいことだと思います。The Coca-Cola Company の Global CEOとしてではなく、あなたがこの会社のマーケティングをどこに持っていこうとしているのか、そして、この会社の将来に対するあなたの野心についてお聞かせください」

A:私たちは、マーケティングにおいて、おそらく会社の歴史上最大の変革期を迎えている。そして、それは業界全体が急速に変化しているという気付きによって促進されている。消費者が求めるものは以前とは異なり、消費者との関わり方も、20世紀に初めてテレビCMやラジオCM、屋外広告を始めた頃とは根本的に異なっている。私たちは変化し、時代に適応していかなければならない。マーケティングとイノベーションが、会社全体の成長アルゴリズムの主要なドライバーとなることが私たちの最終的な野望だ。

その実現のために、私たちは3つの主要な優先事項を設定した。
一つ目は、ポートフォリオ。数十年にわたり、清涼飲料水の会社から総合飲料メーカーへと変貌を遂げた後、私たちはポートフォリオの剪定が必要であることに気付いた。現在、私たちが成長ポートフォリオと定義しているのは、220カ国以上で展開している飲料、業務用飲料など約200のブランドだ。二つ目は、イノベーション。私たちにとって本当に重要なのは、より優れたイノベーションであり、製品やパッケージだけでなく、プラットフォームやエコシステム、技術だ。こららをパートナーシップを通じてイノベーションのアイデアを成長させ拡張していく。三つ目は、私が特別な思い入れを抱いているエフェクティブネス (有効性) だ。エフェクティブネスのためには、大胆で創造的なアイデアに賭けること。企業として、多様性と共創の力を受け入れるべきと実感している」

「私たちのプレゼンスは非常に素晴らしく、アイデアへのアクセスには比類がないという点で競争優位性を持っているが、その力をまだ活用しきれていないと感じていた。だからこそ、パラレル・エコシステム、つまり、マーケティングのパートナーを持つことが重要だった。そこで、WPPの出番がやってくる」

「我々は、今後、音楽・スポーツ・ゲームなど、パッションポイントに焦点を当て、私たちの製品やブランドを飲まない人を、常に飲み続ける人にしていくような取り組みを予定している。その一例として、今年3月に、Riot Gamesと契約を締結し、最初のグローバルパートナーになった」

また、同社は消費者の関心を引くためにQRコードの活用に投資し、ブランドのメディア全体に展開する計画で、データを倍増させる方針とのこと。「これはマーケティングの方法を再構築することになる」と述べた。


Creative Marketer of the Year を受賞した ABinBev の登壇セッション 

"Unleashing Creative Potential to Reimagine What a Beer Company Can Be"

AB InBev CEO (中央) / Global Cheif Marketing Officer (右)

ベルギーに本社を置く世界有数のビール会社である AB InBev(※日本だとコロナ、ヒューガルデンなどのブランドが有名)は、かつて他社ブランド買収することで知られていました。そこから1年で40以上のカンヌライオンズを受賞し、売上高は過去最高に。いまでは何百万人もの人々の生活にプラスの影響を与える取り組みも行っています。クリエイティビティをビジネスの中心に据え、社員のクリエイティブな可能性を引き出すために、文化的な変革を推進しました。このセッションでは、同社がいかにして創造と成長の大国へと変化していったのか、そして今後どのような方向に進んでいくのかが語られました。

■ スピーカー
Michel Doukeris (CEO, AB InBev)
Marcel Marcondes (Global Chief Marketing Officer, AB InBev)

■インタビュアー
Colleen DeCourcy (Former President/Chief Creative Officer, Wieden+Kennedy)

■本セッションでの注目コメント
Michel Doukeris (CEO, AB InBev):
「我々は長年にわたって、他社ブランドを買収することでカテゴリーを統合する流れの一端を担ってきた。ただ、ビールだけが統合されたカテゴリーではないし、私たちだけがカテゴリーの統合の中で活躍した唯一のプレーヤーでもない。しかしながら、私たちはこの戦略を何度も何度も実行してきた。ー そして、いつしかこれは我々のレッテルのようなものになった。
レッテルというのは、必ずしもその企業や業界、人々の実態を表しているわけではない。この会社では長年にわたって、オーガニック成長とインオーガニック成長の両方で、信じられないようなストーリーが展開されてきたが、インオーガニックな部分の方がはるかに大きかった」
*インオーガニック成長 :他社との提携や他社の買収などを通じて企業成長すること

「この3〜5年、私たちはインオーガニック成長中心の会社からオーガニック成長をする会社へと変貌を遂げてきた。そして、オーガニック企業の核となるのは、クリエイティビティだ。そして何より、消費者との最終的な接点となる、強いブランドが必要となる。私たちはグローバルに大規模な事業展開をしていて、20億人以上の消費者と、600万人以上の顧客(小売店、バーのオーナー、卸売業者などの販売業者)にリーチしている」

「私たちの文化では、最も重要な資産は人。なぜなら人こそが変革の主体だからだ。人は、自分がどこかに属していると感じ、自分の役割が何であるかを理解し、やりがいを感じるとき、必ず貢献してくれる。彼らが求めるのはお金だけでない。物事がうまくいかないとき、必要なときに、彼らの背中を押してあげることも必要だ」

「私たちは会社として、常にパーパスを持ち続けている。パーパスは、他の多くの企業と同様に、長い間、私たちに大きな影響を与えてきた。私にとって、強いパーパスというのは、自分が何者であるか、またそれに対して企業文化の起源も語る必要があると考えている。自分たちがどこに行きたいのか、自分の役割は何なのか。それを伝える必要がある」

「私たちの目的は、"We dream big (私たちは大きな夢を描く)"という考えから始める必要がある。私たちは成長したい。なぜなら、成長することで、社員に機会を与えることができるからだ。私たちが社会で果たしている役割についてあまり知られていないかもしれないが、100の雇用のうち1つはビール産業からもたらされている。ビールメーカーだけでなく、その上流の農家、バーやレストランなど、多くの人が私たちに頼っている。だからこそ、我々は成長する必要があるのだ」

「私たちにとって未来とは、パートナーとともにビジネスを成長させるだけでなく、より持続可能で、より包括的で、より多様な存在となること。このパーパスについて話し始めた瞬間から、これに関するアイデアの周囲には多くの支持が集まった。社員たちは、より帰属意識が高まり、よりワクワクするようになった。そして、自分たちの仕事がより自分に合っていると感じるようになった。

例えば、ビール工場で働く人が、より多くの顧客の声に応えようと、より多くのビールを生産する。サステナビリティに携わる人たちについては、私たちは水域を保護するための大規模なプログラムを行っている。彼らは、水がなければビールが飲めないことを知っている。さらに水がなければ、当然ながら地域は疲弊する。
だから、彼らは、この仕事が会社の中でつながっていて、パーパスに沿ったものであることを知っているのだ。この30日間、私はアフリカ、ドイツ、ブラジル、ドミニカ共和国、それとメキシコにも足を運んだ。人々は笑顔で、自分たちが何をしているのかを示してた。なぜなら、そこから他のすべてが回り始め、より多くの乾杯の未来を生み出すため、彼らはクリエイティビティを解き放つことができるようになるからだ」

「人々があまり知らない一面として、我々は、優れたテック製品を作っている。多くの人がアプリケーションについて考えるが、私はブランドにこだわっている。Ze Delivery という (飲料宅配サービス) ブランドを持っているが、ブラジルに行くと、人々は「Ze Delivery」のタトゥーを入れている。Ze Deliveryはアプリケーションではなく、ブランドなのだ。

世界17か国では約90%を、アプリではなく自社のBtoBソリューションであるBEESという e-commerce プラットフォーム上で販売している。このBEESそのものがブランド化しており、デジタルにおける販売に成功している。

BEESにはロゴがあり、マスコットがいて、それ自体に命が宿っているのだ。
BEESを導入した国の小規模小売店(Retailors)は、今では大手小売店(Retailors)よりも成長している。なぜなら、彼らがビジネスを学び、成長するための新しい機会をたくさん提供しているからだ。

このように、様々なことが起きているが、そのすべてが我々のパーパスへとつながっていることがとても嬉しい」

Marcel Marcondes (Global Chief Marketing Officer, AB InBev):
「私たちは一つの目標を掲げている、それは、常に野心的でありながら、同時に非常に謙虚であること。というのも、物事は急速に変化していくため、今日知っていることを明日行っても、明後日にはまた違うことが起きる。。。つまり問題そのものが違うのだ。だから、私たちは常に野心的であり続ける必要がある」

「COVIDでは多くのことを学んだ。困難な時期には、問題に囲まれているため、創造的な解決策を考え出す以外に方法がない。だからこそ、このような時期にMarketer of the Yearに選ばれたことは、とても意味のあることだった。私たちは試されていた。想像してください、大きな組織であるにもかかわらず、突然レストランが閉店したり、スポーツイベントも開催されず、あまつさえ誕生日パーティーも開かれない状況を。。。そうした中で、なぜ私たちは存在するのか?

これまでのすべてをピボットして、人々が経験していること、そしてビジネスが経験していることに対して、クリエイティブな解決策を考え出す必要があった。

今の私たちの仕事は、この考え方を継続的に身につけること。だからこそ、私たちはいつも、元に戻るのではなく、良くなる必要があるのだと言い続けている」

「この機会にぜひとも伝えたいのは、自分の仕事に対する情熱を持とうということ。明確な目的を持つことが重要で、それは、私たち一人ひとりの内側にある真の情熱に火をつけるためでもある。なぜこの仕事をするのかを理解し、このことを本当に愛していると感じることで、私たちのベストが引き出される。

でも、これは私たちの話。皆さん一人ひとりに、自分自身の目的、自分自身の仕事に惚れ込む理由があるはず。そして、それが一人ひとりのベストを引き出すのだ。

私たちが存在し、大きな夢を描き、より多くの乾杯がある未来をつくるためには、この一瞬を祝うだけではいけない。私たちは何かを残さなければいけない。

そこで、私たちはカンヌと協力し、新たなパートナーシップを結ぼうとしている。まだ社会的地位が高くないが有望な若手クリエイターを支援し、カンヌへの渡航資金を提供できるように、彼らがキャリアアップできるよう、必要なサポートをすべて受けられるようにするのが目的だ。もっともっと乾杯のあふれる未来をつくるために、大きな夢を持つ人が必要だ」

余談:屋外に設置されている、TERRACE STAGEでは、
Cannes Lions 2022 限定パッケージの
AB InBev ビールが配られていました!

今年初登場!Netflix の登壇セッション

"Netflix's Ted Sarandos on the Future of Entertainment"

Netflix Co-CEO and Chief Content Officer (右)

Netflix のクリエイティブ、イノベーション、ヒット作と失敗作について。
そして、グローバルストリーミングプラットフォームが、テレビシリーズ、ドキュメンタリー、長編映画、モバイルゲームに大きな賭けをすることで、どのように世界を楽しませ続けようとしているのかについて語りました。

■ スピーカー
Ted Sarandos (Co-CEO and Chief Content Officer, Netflix)

■インタビュアー
Kara Swisher (Editor-at-large of New York Magazine and Co-host of the Pivot Podcast)

■本セッションでの注目コメント
「私たちは10年間オリジナルサービスを提供し、14年間ストリーミングサービスを提供してきたが、現在、テレビデバイスで「Netflix」を視聴する人は10%程度。

つまり人々がテレビを見ている時間がまだたくさんあるということ。ストリーミングによるコンテンツ視聴という傾向は今後も続き、これが成長の軌跡だと感じる。成長率を見ると、まだまだ伸びしろがあると感じている」

「(サブスクリプションやプレミアムコンテンツを持つストリーミングサービスが他にもたくさん出ていることについて)10年前にオリジナルコンテンツを作り始めたきっかけは、“もし私たちがこのビジネスについて考えていることが正しければ、すべての映画スタジオとテレビネットワークは、アプリで消費者に直接アプローチし、テレビネットワークはアプリになり、私たちにコンテンツを売る(提供する)ことはないだろう” ということだった。そこで我々は、自社オリジナルのコンテンツを上手く制作できるようになることから始めた方がいいと考えた」

「人々の好みは実に多様だ。したがって、Netflixはコンテンツが多いね、と言われるたびに、すべてのコンテンツが全員のためにある訳ではない、と答えている。私たちは、ある人が本当に好きだと感じる番組を、別の人も同じように感じるようにしたいと思っていたが、それは難しい。Netflixのユーザーインターフェースは、お気に入りの番組を見つけられるようにパーソナライズされてる。ただ、Netflixには20ジャンルのコンテンツがあり、平均的なユーザーは毎月そのうちの6つを視聴していると考えると、組み合わせは無限に広がる。だから、ユーザーニーズを満たすために、たくさんのオリジナルコンテンツを制作しているのだ」

「ビジネスを成長させるのに十分な規模があるか、と問われれば、私はそう思っていると答える。私たちは映画スタジオやテレビネットワークと競争しながら10年間オリジナルコンテンツを制作してきたが、その10年間で我々のオリジナルコンテンツは最も多くの収益を上げ、最も多くの加入者を獲得した。さらに、我々は、全ての映画スタジオやテレビネットワークの中で、最も利益を上げ、しかもフリーキャッシュフローも潤沢にある状態となった。 

だから、このビジネスを拡大し続けることは、人々に愛されるコンテンツを作り続けることにほかならない。複雑なことはなく、実にシンプルなのだ」

「Q:Netflix内での広告についての計画は? もし参入するのであればいずれかのグローバル企業と組むことになるかと思うが、どこがよいと考えるか?また、そのパートナーシップに何を求めるのか?

A:(広告掲載について)我々はテレビよりも優れたプロダクトでありたいと思っている。現在、動画の中でどのように広告が配信されているかを考えてみると、インターネット上や他のクラウドサービス上にテレビコマーシャルを置くという、クリエイティブではない方法がたくさんある。しかし、視聴者マッチングは、私たちが当初から行ってきたことなので、この点においては、それを活かした本当に素晴らしいサービスを提供できると思います。

また、特定のパートナーと話している訳ではなく、各企業と議論を進めている。

Netflixが広告主の目的地となるために、私たちは市場参入を容易にし、繰り返し革新していくつもりだ」

「ひとつ言えることは、プロフェッショナルな意思決定のテクニックとは、やめ時と始め時を知っていること。だから、サービス当初に広告を出さなかったのは賢明だったと思っている。なぜなら、私たちはテレビよりも映画鑑賞に適したサービスを作ろうとしていたからだ。私たちは、非常にシンプルなビジネスを構築し、素早く成長できるようにしたかった。広告の場合、仕組みが複雑になってしまう。

一方で、私たちが行ってきたことは『Netflixの料金は私には高すぎる』と言っている大きなセグメントを除外してしまったことでもある。これからは、『広告を見てもいいからもっと安くNetflixを利用したい』という層も開拓していく」


コミュニケーションにおけるクリエイティビティに対する
生涯功労賞 (Lion of St. Mark)を受賞した
Colleen DeCourcy氏のセッション

"The Lion of St. Mark Seminar with Colleen DeCourcy"

Colleen DeCourcy (左) / Philip Thomas (左)

業界全体のクリエイティビティに重要かつ卓越した貢献をした個人を表彰する The Lions of St. Mark。今年の受賞者は、業界のリーダーであり、元Wieden+Kennedy のチーフ・クリエイティブ・オフィサー兼社長のColleen DeCourcy氏でした。革新的な企業を率い、より公平な業界を提唱することにそのキャリアを費やしてきた彼女が、会場に集まったオーディエンスにインスピレーションを与えました。Fast Company 誌の「Most Creative People in Business」に選ばれ、She Runs It という組織から「Fearless Voices賞」を授与し、2019年にはAdWeek誌の「The decade creative leader」に選ばれています。

■ スピーカー
Colleen DeCourcy (Former President/Chief Creative Officer, Wieden+Kennedy)

■インタビューアー
Philip Thomas (Chief Executive, Ascential Intelligence & Events, Chairman, LIONS)

■本セッションでの注目コメント
「Q:世界で最も偉大なエージェンシーのひとつであるWieden+Kennedyの職を離れ、snap に入社されましたが、どのようにキャリアを積んできたのか、そして今、私たちがこの業界について考えるべきことは何だと思いますか?

A:私がどのように物事を見るのかをお伝えできればと思うのですが、正直なところ、私は読書家で文化の消費者なので、自分自身の声に耳を傾けるということをいつも行ってきました。そして、私がsnapに参画したことについては、いくつもの理由があります。ひとつは、引退したかったということ、そして一生に一度の贈り物とも思えるようなWieden+Kennedyの後には何をしたらいいのかと考えていたこと。でも、結局の決め手は、チャレンジすることへのビリビリするような感覚だったと思います。

人々はまだテクノロジーで社会的なコミュニケーションを取りたがっています。しかし、本来の目的であるはずの友人や家族とのつながりをないがしろにしてしまってはいないでしょうか。snap のプラットフォームは、巨大なものであるにもかかわらず、まだ完成されていません。そしてそこにARが入ってくる 。ARは現実世界に根ざしていますが、私たちの想像力の中で、その周りにあるものとの文脈で動作するようにするコンピューティングレイヤーです。これは今までやったことのないようなことで、それがたまらなく魅力的に感じました」

「Q: 今回Awardを受賞した大英博物館の作品も、すべてARでしたね。ARはここ数年の潜在的な流行の一種のように見えますが、ARに投資をしていますか?

A:はい。これは私がsnapに所属しているからではなく、私自身がARに投資をしていたから、snapに出会ったのです。
現実世界の上にコンピューティングレイヤーがあるという考え、コミュニケーションや広告、そして私たちがお互いに近くにいることで何が起こるのかは、とても興味深いです」

「Q:あなたは非常にデジタルで、前向きな人物です。一方で、Wieden+Kennedyは映画制作で有名で、デジタルにおいては必ずしも有名ではありません。あなたがWiedenに入社したとき、どのような考えがあったのでしょうか?あなたの採用は、会社が変革するためだったと感じますか?

A:「Evolve the place (ここを進化させてくれ) 」、それが Dan Wieden (Wieden+Kennedy executive) が入社の際に言った言葉でした。初日の紹介の最後に、「それから彼女は女性です!」という言葉で締めくくられたのを覚えています。当時は、私がデジタルがわかる人材で、さらに、女性であることが重要なことだったようです」

「Q:広告業界で働く女性について話していただけますか?

A:すべての女性を代弁することはできませんが、でも、私と同世代の女性には、他の人が恐る恐る行くところに、自分から飛び込んでいったということを分かってもらえると思います。自分のアイデアを実現するために必要なことは何でもする、というのが本質です。当時、広告業界で働く女性には、一つのことだけでなく、多方面で優れていることが期待されていました。だから、例えば女性のクリエイティブ・ディレクターであれば、クリエイティブの仕事だけでは評価してもらえず、認められるには様々な面での能力を示す必要がありました。一方で男性は、クリエイティブ含め一つのことに集中していれば認めてもらえる、そういう状況でした」

「Q:数年前に "Confessions of a Female Ad Exec" と題した記事を匿名で書きましたよね。この業界で女性であることの意味について書かれていて、自身が若いころに経験したとても不愉快な出来事について説明していました。しかし、その部分は、実際に掲出された記事からは削除されてしまった。そこで、あなたはこの記事の著者であることをカミングアウトし、この非常に不快なストーリーのすべてを公にしました。とても重要なトピックだと思いますので、それについて聞かせてください。

A:当時は、親切な行為のつもりで問題の部分を削除したのだと思います。その時のことはよく覚えていて、私がテーブルに向かうと、広告業界の先輩で、私がとても尊敬していた女性が立ち上がって、私を抱きしめました。まるで、そんなことをしたら私のキャリアが台無しになってしまうという感じで。でも、それは口に出せませんでした。

そのとき初めて、フェミニストとして、リーダーとして、自分の役割に踏み込んだと感じました。

私の名前でストーリーを書き直した後、700通以上のメールやメッセージが届きました。その中には、ゲイの男性や女性、有色人種の人たちから、『声を大にして言ってくれてありがとう』というようなものもありました。そして、私は『よし、もうこのままではいけない』と感じたのだと思います。」

Colleen氏は仕事においても、平等を提唱し、人間性の向上を提唱してきました。

▼Colleen氏が手掛けた、男女の賃金格差に狙いを定めた “I’d Rather Get Paid” キャンペーン



ad:tech tokyo でも、Cannes Lions に関連した情報をお届けする予定です!お楽しみに

ad:tech tokyo 2022 概要
日程:10月20日(木)~21日(金)
会場:東京ミッドタウン&ザ・リッツ・カールトン東京
詳細はこちら:https://adtech-tokyo.com/ja/
*参加パスの早期割引は7月末まで!

関連記事へのリンクはこちら▼