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私の友人

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呼ばれても出て行かない私をみまもったりそうでなかったりする周りの人たちに関するポジティブな手記
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あびちゃん

あびちゃん

 彼についてはどこまで話していいのかわからない。
人は「話しても大丈夫な程度の、でも別に話すこともないせいで秘密と化していること」をみんな持っていると思う。私は彼がそれを人より少し多く持っているのではないかと感じているのだ。(さらにそれを各各会話相手に少しずつ分配している)
それ故に彼が話してくれた中になにかしらの地雷があるかもしれないので私は私の倫理観を総動員させ彼を話す。
2行で終わったらどう

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田村

田村

 「はあ?お前、」
笑いながら田村が言う。出会った時はメタラーだった。ランディー・ローズをこよなく愛していてアレキシ・ライホの声が好きだった。
ある夜中に田村と私ともう1人友人と唐津バーガー食べに行こうと思い立ち、友人が始発で車を取りに実家に戻り、うちにいればいいものを、「いや俺ギター弾きたいから一回帰る」とか言ってしまうようなストイックばか野郎だ。ばか真面目でばか普通の繊細な優しい男であり、私が

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土器くん

土器くん

 「カラオケ行きたい」
 「良いですね、僕も行きたいです」

専門時代の友人何人かとの飲みの席に召喚された3つ下の彼と私は、「明日もバイトがあるから」と宣う薄情な友人らを見送って初めて話すのに2人でカラオケへと向かった。この時土器くんがNAGISAにてを歌っていたのを覚えている。
閉店まで歌ってマックで小腹を満たしてヴィレッジヴァンガードなんて、この頃の若いバンドマンのテンプレをきれいにやったみた

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さきちゃん

さきちゃん

 毎年、季節のどこかしらの陽だまりで私はよく彼女を思い出しては、SNSのフォロー欄から探して近況を覗く。私になくて私が好きな、まだ肌寒い春の子。

本当にたまに、2〜3往復のメッセージのやりとりをする。最近で言うと彼女は京都から福岡に戻ったそう。私はその頃まだ先田と暮らしていたので、ひとまわり違う男の子と生活しているよ、と言うと「アヤさんっぽくて良いです」と返ってきた。彼女からみた私はどんな人間な

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翔くん

翔くん

 私の人生を語るにおいて、忘れてはいけない人間で、家族を除けば一番時間を共にしたのが彼だ。20代のほとんどを彼と衣食住して、30歳になる年に私は家を出た。

なんと言うか、2人でいる時我々は小学生だった。「強いことば」なるものの価値観も合った。(暁のヨナに登場する敵役、ヤン・クムジや格闘ゲームKOFに登場するチョイ・ボンゲなどの人名もそれに含まれる)
私たちは鉄血のオルフェンズに毎週日曜通夜のよう

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めぐ

めぐ

 夜と海の境目が分からなくなった時間に、昔親友が海に携帯を落とした話を思い出している。黒のストレートの携帯だった。彼女がパンダの頭がくっついているウエストポーチを愛用していた頃だ。
彼女とは専門学校が同じだったが親密になったのは卒業してからで、それ以降は恋人がいない時期などは特に一緒に時間を過ごした。お金もないのに煙草を吸っていたし高頻度で喫茶店へ行っていた。彼女には随分助けられたものだし、私は彼

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