管理職の無理ゲー化。マネジメントの理想を捨てろ
これからのマネージャー、つまりいわゆる管理職は今よりももっと無理ゲーになります。
しかしそれはあなたが背負う問題ではなさそうなのです。しかしそれは以下の2点に気づくか気づかないか?で変わります。
《給与はあなたの能力値では無い》
《弱さ強さは主観が何処かで変わる》
の2点です。
まずはわかりにくい話のとっかかりとなる、大きなところから見ていきましょう。
現在世界的に見て日本の通貨は弱くなっています。実質実効為替レートというものを知っていますか?
簡単に言うとその国の通貨の購買力です。日本は毎年下がっています。今年の実質実効為替レートは2010年を100とすると60.98になっています。
これは日本の通貨はこの14年間の間に40%も下がったということです。何が大変かというと経済制裁を受けまくっているロシア以下の数値なのです。
つまり日本は購買力のない国になっているということです。それも戦争中の国よりも。これがどれだけ大変なことかはあなたの想像する通りです。
ということは人材を海外から呼び込むどころか、日本から優秀な人が流出していくということです。
しかも、さらに悪いことに同時通訳ができるアプリの性能はどんどん進化しています。これが意味するのは言語の壁が取り払われるということです。
言語の壁が取り払われると、日本の優秀な若者はどんどん海外に行きます。
もし言語の壁が無いとして、あなたが大学を選ぶ時マサチューセッツ工科大に行くか慶應に行くかの選択肢があったら、あなたならどちらを選ぶでしょう?つまりそういうことなのです。
日本の人口は今どんどん減っています。出生数もとうとう72万人です。その中で優秀な人が海外に行くとどうなるでしょうか?
平均の能力値が下がるのです。
これをわかりやすく説明するために、優秀、普通、ダメという三者で考えましょう。
大会社に今まで入っていた優秀な人が海外に行くことになります。(海外の方が給与が高いためですね。)そうなるとその優秀な人の代わりに、大会社に普通な人が入ることになります。
次に普通の会社、そこそこの知名度の会社はダメな人が入ることになります。そして残りの会社はそれ以下ということですね。
最近の若者はダメ!という主張は正直なところこの構図により生まれているだけです。
今までは人口が多かったので優秀な人の余りがありました。それがなくなっただけです。
ダメなのは若者でなく自分の会社です。
つまり日本の会社の人材は、今まででいうところの普通の人が最高値になります。
この時点ですでにやばいのですが、もう1段階やばいのがマネージャーです。人口が減って国内のパイが減る上に能力が低い人しか入らなくなるのです。
売り上げは落ちる、人は足りないし能力も無い。ですが売り上げや利益率の改善は当然求められる。
まさにマネージャー泣かせというところでしょう。その上あなたが受けてきたマネジメントではどうにもならない世界もやってきています。
それは過度なコンプライアンス遵守です。
SNSの発達やタイミーなどの発展により、(おそらくタイミーは1000億規模の売り上げを叩き出しそうです。)私やあなたは360°評価を受けることになります。それはつまりメンバーもお客様ということになります。
確かにその感覚(メンバーもお客様)は大切ではあるのですが、過度になると成長を促すことも不可能になります。
一定の負荷は人間の成長のスイッチになります。今できることだけをやっていては人は成長しません。足し算を覚えて掛け算割り算になっていくのと同じです。
「いいよ、いいよ。あとはやっとくから。(残業代は無しで)」で回し続けることになります。
もちろん新入社員が、今できることだけで成果を出せる仕組みがあれば別ですが、そのような会社は少ないのです。
だからこそ終身雇用である一定の負荷をかけながら人を成長させるという手法をとってきました。ある意味このシステムは優しい制度です。ダメな人でも成長させてくれるシステムなのですから。
しかしそんなことは最早できません。過度なコンプライアンス遵守によりとにかく優しく丁寧に教えながら、達成できない仕事は管理職が巻き取らなければならなくなります。
これで罰ゲームと言わずなんと呼ぶのでしょうか?
そして有能なマネージャーというのは見切りをつけて去っていく、もしくは潰れていきます。
ちなみに、過去わたしやあなたが憧れていた上司、マネージャーはどんな人だったでしょうか?
優しくて、なんでも知っていて、なんでもできてしまう上司ではありませんでしたか?
その優秀な上司は実はもうあなたの目の前には存在しません。
それには2つの理由があります。それは
優秀さが情報量だった。
優しさの勘違い。
この2つです。
まず一つ目の理由は優秀さというものが情報量に起因していた可能性があるからです。
年数が上がるにつれて勝手にあなたの社内の情報量(仕事に対する解像度)というのは上がっていきます。
情報量の差というのは大きくて、その会社や業界独自の慣習を知っているか?知っていないか?というところを若いうちは優秀さとイコールで考えてしまいがちです。
子供の頃は大きく見えていた高校生も30も過ぎれば子供にしか見えません。それは肉体的な大きさだけではなく、社会に対する解像度や情報量の違いから生まれています。
「わぁ!こんなことも知っているなんて大人!」
と思っていた憧れの先生も今となっては普通のことでマウントを取っていただけです。(もしそうで無いなら思い出補正がかかっています。)
つまりそのくらい情報量の差というのは人を優秀に見せます。優秀そうに見える人というのは情報量が違うだけというのはよくあることです。
そしてもう一つの優しさの勘違いというのは難しい問題です。
優しいということは強さだと思う人と、弱さとみなす人で分かれてしまうのです。
例えばなんでも受け止めてくれる優しい人というのは、見方を変えればNOと言えない弱い人です。
あの上司は優しい人。そう思っていたけど実際はただNOやNGが言えないだけであって、全てを受け止めてしまう人なのです。
そのような人は管理職として優秀に見えますし、また実際優秀です。
ですが体力、気力が続けばの話です。
全てを受け止めるにはキャパシティが必要です。しかし人間のキャパシティ(仕事では時間)というものは有限です。
体力、気力が人間のキャパシティになります。
だからこそ、このような優しい上司というのは、消えるor壊れるで消失してしまいます。
逆になんでもNOと言えて権力者にも楯突く人というのは、視点を変えれば度量のない弱い奴になります。
若い頃はそれ、つまりNOと言ってしまうキャパシティの小さい人を優秀な人と見てしまいがちです。
ですがそれは受け入れる度量のない人であり、ある種の弱い人でもあります。軟弱なやつと言い換えたほうがわかりやすいかと思います。
例えば、上司に仕事を振られて「いえ、それは私の仕事ではないのでできません。」
という人を見て今のあなたはどう思いますか?過去のあなたはどう思いますか?
今のあなたは「上司に振られた仕事くらいやれよ。だからお前は成長しないんだよ。」と思うかもしれません。
が。
過去のあなたは「上司に振られた仕事を断れるなんて!仕事ができるから許されるんだろうな。」と思っていたかもしれません。
しかしながら両方ともある意味正解で、ある意味不正解です。
自分のキャパシティを超える仕事を受け取らないのは強さでもあり弱さでもあるのです。
一定の負荷というのはキャパシティを広げることができます。しかし多すぎても少なすぎてもいけません。その見極めは自分で行うしかありません。
ましてや今のコンプライアンス遵守の状態では、自分で負荷をかけなくては誰もかけてくれなくなります。
それはある意味今の世界の優しさでもあり厳しさでもあります。
では私やあなたは、このような状態でどのようなマネジメントを行えばいいのでしょうか?
邪魔をしないマネジメントなどがもてはやされていますが、私は違うと思います。なぜならこれから先人材の質というのは落ちていくからです。
そのような人材に「成長なんてしなくて良いんだよ?自発的に頑張ってね?」と言っていては会社は成長しません。なぜなら会社の成長は人の成長と共にあるからです。
私は中小・零細企業でマネージャーを務めできました。なので自己成長、自己研鑽と遠いところにいる人のマネジメントはあなたよりもわかっています。
だからこそこの一点だけをあなたに行ってもらえれば、マネージャーとして生きていけるであろう点をお伝えします。それは、
相手の理想と会社の理想をできるだけ近づけるということです。
簡単に聞こえますが中々にハードです。まず相手のニーズ、つまり理想像を語ってもらいます。この時点で相手にはフワッとした理想像しかないのでできるだけそれを2人で形にしていきます。
そして会社の理想と相違点があれば近づけていくのです。
例えば「定時で上がれて責任がなければそれで…」という人には「今の現状では常にというのは難しい。だけど難しいというだけでできないわけではないよね。だからその理想のためにあなたが成長、つまりできる仕事を増やして早く終われるようにしない?もちろん新しい仕事のミスは私の責任だから。気にしないで良い。ちょっとだけ頑張ってみよう。」
このように相手の理想を否定するのではなく、叶えられる方法を一緒に探すのです。これはただの理想論ではありません。これからのマネジメントの基本的な原則です。
これからは1人1人が大切な資源です。人余りの時代では無いのですから。これは綺麗事ではなく無い資源を大切に使うという至極当たり前の姿勢です。
しかしひとつだけ重要な要素があります。それは経営者に同じ視点があるかどうかです。
もし無かったらどうするか?もちろん転職するだけです。そんな会社は遅かれ早かれ消滅します。評価する側だという驕りは捨てるべきなのです。これは綺麗事ではなく、従業員からも評価される時代に突き進みます。
それは来る未来であって、そうなるかもというような曖昧なものではありません。必ず訪れる未来です。人口動態だけは嘘をつかないのです。
大変な時代はそこまできています。これまでのようなマネジメント、優秀な人に自由に動ける場所を用意しよう!は理想で終わります。
優秀な人は作るしか無いのです。どこからともなく湧いてくることはありません。その上作ったら作ったでその人は転職するかもしれません。
しかしそんなことあなたは気にする必要ありません。転職するしないはあなたのせいでは無いのですから。
優秀な人も引く手数多ですが、優秀な人を育てられる人ももちろん引く手数多です。
今のあなたの給与はあなたの能力値ではありません。給与は働く業界の利益率で決まります。つまりあなたの能力が低いから給与が低いのではありません。
だからこそ優秀な人を育てる、育てられるマネージャーを目指していきましょう。それは誰のためでも無いあなたのためです。
それでは、また、水曜日。
あどりでした。
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