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東京から金沢に引っ越した話

2022年の春、東京都文京区から石川県金沢市に移住しました。

20年以上過ごした東京を離れ、夫婦ともどもリモートワークを主体にしつつ、月に2−3日のペースで東京に出張(出社)する働き方になります。

移住自体は2021年の1月ごろから計画していたので1年以上前からの準備だったのですが、「別にわざわざ言うようなことでもないしなあ」と思い、近い知り合い以外には直前まで何も話していなかったため、公表後は「思い切ったね」とか「金沢とは!」といった感じで意表を突かれた的なリアクションをいくつかいただきました。

コロナ以降はずっとリモートワークだったので都心に住んでいても月に数回程度しかオフィスに顔を出していなかったこともあり、「通勤時間がドアドア30分から3時間に伸びるだけなのでそんなに大きくは変わらないはず」という前向きに自分を思い込ませた結果、途中からはあまり迷わず移転プロジェクトを乗り切ることができました。

実際にやってみると、NTTは西日本になるし、周波数は60Hzだし、バスは後方から乗るなど、やっぱり関東とはいろんなことが少しづつ違っていて、フォッサマグナを越えたんだなあという妙な感慨があります(?)。

引っ越し前だとあらゆる準備が忙しくてまともに考えられないですし、引っ越し直後はテンションが変なので振り返るのに適しておらず、引っ越して1-2年経った頃にはどうでもよくなってたぶん書かないので、引っ越してから約2ヶ月というこの時期は、これまでを振り返るにはちょうどいいタイミングなのかもしれません。

というわけで、移住の背景を備忘録程度に残しておこうと思います。

いきなり参考文献

ちなみに、本稿を書くにあたって「似たような経験をしている人はどう書いたのだろう?」と思い検索してみたところ、イケてる起業家のyamottyさんの移住記事を発見しました。

拝読していくと、おこがましい話ですが、引っ越しするか否かの意思決定に至る思考回路がかなりシンクロしていることに気づきました。

「大阪」を「金沢」に、「1−2日/週」を「2−3日/月」にそれぞれ置換すればほぼ私がこれから書きたかった話になります。しかもyamottyさんは言語化の鬼なので私よりも数倍きれいでわかりやすい筆致で書かれており、さすがとしか言いようがありません(ぜひ本稿より先にご一読ください)。

いいものは積極的にパk引用していくべきです。ここから先の表現や書きざまに氏の記事と類似点があれば、それは明示的なパkオマージュですとあらかじめお伝えしておきます。(なお、yamottyさんにはあらかじめ引用させていただく旨お伝えし、ご快諾いただきました!)

どこへ引っ越すか

私はコロナ以前からうっすらと移住願望があったので、週末に時間があると南房総のリゾート物件や、こだま号の始発がある三島や、はやぶさ号に乗ってしまえば意外と近い仙台など、物件を物色しながら妄想にふけるのが好きでした。

なぜ移住したかったかというと、もともと都心があまり得意ではないのに加え、子どもができてからはもう少し空間や精神に余裕のある暮らしがしたいと考えていたからです。yamottyさんの記事で言えば「余白」という言葉になります。

子供たちが誰の目も気にせず思いのまま過ごせる「物理的・心理的余白の重要さ」に気付かされた

https://yamotty.tokyo/post/20220117

これまで住んでいた文京区は、東京の真ん中でどこへでもアクセスがいい場所でありながら繁華街がなく町並みが落ち着いていて、23区でもっとも治安がよく、学校も多く教育的にもよいということで条件的にはバッチリでした。独身の頃から住んでいて実際に快適だったので、移る理由がないまま東京生活の実に4分の3の期間、文京区に住民税を払っていました。(文京区内でぐるぐる引っ越しましたが、西片、本郷、小石川、春日、どれもいい街でした)

小石川植物園はしょっちゅう行きました

それでも移住したのは、キーワードが「余裕(余白)」だったからです。気に入ってる服なんだけど、ピッタリすぎて少し動きにくいという感じ。年をとって代謝が落ち、いろんなものが付きはじめた私にとって、移住とは心身にスキマをつくり、ゆったりした服に着替えるための強引な衣替えだったのだと思います。

では、余裕しゃくしゃくのルーラルライフならどこでもいいのかというと、そういうわけでもありません。都会暮らしに疲れたからといって大自然に囲まれたガチの仙人的な生活がしたいわけではないのです。日々の生活はなるべく便利であってほしいし、文化的な生活もしたい。学校の選択肢もほしいです。

そんな都合のいいワガママは叶うのだろうか。少しでも近づけるためには、どこに移るべきなのか。検討のすえ挙がったのが、妻の出身地である金沢でした。結婚して以来幾度となく訪れているのである程度は土地勘があります。道が狭くて、水がきれいで、冬は雪が積もり、ごはんがおいしいところです。

じいじとばあば(私にとっての義父と義母)が「孫がきてくれるのは大歓迎」と言ってくださったのも我々夫婦の背中を押してくれました。実際にはこれがいちばん大きな理由かもしれません。

移住先の条件

そして、金沢は移住先に求める以下のクライテリアにもほぼ沿っていました。我が家とyamottyさんのリストは(表現こそ微妙に違いますが)一緒に考えたのかというくらいかぶっていたので、ここでも拝借しちゃいます。

拠点探しの ”6 Criteria”
1.周辺との騒音問題の解消
2.自然環境へのアクセスが良いこと
3.学校環境が良いこと (特に公立)
4.家の中でWFHと子育てのスペースが確保できること
5.東京への移動コスト/フレキシビリティの担保
6.リセールリスクを低く抑えられること

https://yamotty.tokyo/post/20220117

仮に上記のリストになぞると、金沢に決める際に我が家では以下のように考えていました。

  1. 住環境を考慮すると一戸建て優先、供給が多いので物件探しはしやすい

  2. 海も山も近く、街の水もきれい。自然と都市のバランスがいい

  3. 市内の文教地区を優先(ちなみに北陸三県は公立の平均学力が高い)

  4. 区画が広めなのでWFHに向けて自宅スペースを確保しやすい

  5. 北陸新幹線で東京駅まで1本(2h30m)

  6. ただしリセールリスクは高い(途中から諦めた)

ほとんどの項目はクリアできるのですが、6.のリセールリスクだけは他に達成したい項目とトレードオフになるので途中から諦めました。金沢で資産価値を高く保とうとすると(=リセールリスクを低く抑えようとすると)、駅近もしくはまちなかの築浅マンションが優先ターゲットになるのですが、私は「人生で何度も家は買わないし、であれば注文住宅ないしは古い物件をリノベするという面倒なことをしてみたい」という面倒なことを考えていたので、すでにその時点でリセールリスクは高いです。

そうなると、バランス調整のためにいわゆる「いい土地」を選ぶことが条件になりますが当然なかなか空かず、不動産屋さんに協力してもらい3ヶ月ほど待ちましたが目星をつけていたエリアはすべてデベロッパーに押さえられており、県外在住の個人がアプローチするのはむずかしいことがわかりました。

なんとか4月の新入学の時期に合わせて引っ越したかったので、改築のスケジュールから逆算して決済ギリギリのタイミングでほぼ廃屋だった一戸建てを購入して気合のリノベに入り、なんとか今年の春に滑り込みで引っ越すことができました。職人さんたちには厳しいスケジュールの中たいへんお世話になり感謝しております。

金沢城の桜はきれいですぞ


2ヶ月経ってみて、今後の見通し

北陸は関東とは違っていると冒頭で書きましたが、引っ越してから2ヶ月ほど経ってみて、今のところはとっても順調です。こう言うと、地元の人は口を揃えて「冬を知らんからな〜」とおっしゃるのですが、それはそれで冬になってからまた考えたいと思います。

現在の住まいからは金沢駅まで車で10分ほどの距離ということもあり、冬以外であれば家を出てから15分ほどで駅の改札をくぐることができます。すでに何度か東京へ出張(出社)していますが、改めて特に不都合は感じていないです。身体は疲れますが。

私の仕事はいわゆるITとかECとか広告とかになるのですが、いくらパソコンで仕事をしているとはいえ、リアルの場で会って同期的なコミュニケーションをとれるほうが圧倒的に有利なのは他のビジネスと変わりません。オフィスに居れるなら居たほうがよいことがたくさんあることも知っています。

それでも、非同期のコミュニケーションを前提にプロジェクトがガンガン進んでいく頼もしい仲間に幸いにも恵まれているため、ありがたいことに仕事のほとんどはリモートで成立できています。この春から役割も変わってさらに時間的に忙しくなりましたが、精神は案外落ち着いています。子どもたちとの時間も増えました。

そして、リモートがベースにあるからこそ、実際に会ったときはその時間を大事にしようという思いも以前よりだいぶ強くなっています。

ちなみに、私が所属しているフィードフォースグループでは「全国どこでも採用」なるものをやっています。

いちおう私もグループ内のいくつかの会社で経営陣の末席を汚している身なので、そんな末席おじさんが率先して地方に移住したということは、ある種の責任も生じているなと思うことがあります。

私がリモート中心でもなんとかそれなりに仕事ができていれば、それは社内やグループ内で首都圏以外から働いてくれているメンバーへの間接的な応援や後押しになると信じていますし、これからグループに入ってくれるであろう未来の仲間たちにも正直に胸を張って「全国どこからでもいいよ」と誘える組織であれるのではないか、そんなことを思うのです。

あれ、、、金沢のアピールをしようと思って書きはじめたのに、最後は採用募集記事みたいになってしまいました。(仕方ねえ、実際に募集してます!!!)

移住の顛末は、以上です。
金沢、いいところですのでぜひ遊びにきてください。お待ちしています。


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