はじめての、ねこ
取り留めもなく、私の猫のはなしをしようと思う。
はじめてのnoteで、書くのはずっと、このはなしと決めていた。
いつか、昇華できたときに。
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ずっと、ずっとペットが欲しかった。
一戸建ての家で、隣には大きな犬と、小さな犬がいた。
私がピアノを弾くと、大きな犬がわお~ん。
この犬が自分ちの犬ならどんなに良いだろう。
それも相まって、私は犬を飼いたい、猫を飼いたいと、しきりにせがんだ。
返ってくる言葉はいつもNO。
ただ、過去に色々飼っていた、という話を何度も上機嫌でする。
わたしにとってみたら、まさに自慢話だ。
それが堪らなく嫌だった。
この過去に飼っていたという内容、恐ろしい結末などがそれぞれあるのだが…それはまた別の話で。
今は、私の猫のはなしだ。
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私のはじめての猫。
それは、ブルーの毛並みに、翠の瞳。
上品な猫の筆頭にも挙げられる、ロシアンブルーだ。
被毛はダブルコートといって、外側がなめらかな長めの毛、内側がフワフワの羽毛のような毛になっている。
そのせいか、柔らかいのにしっとりしている。
まるで上質な手触りのビロードを撫でているみたいだ。
鳴き声はほとんどあげない。
ごくたまに、撫でるとるー、と鳴く。
玄関では出迎え、犬のように私に付いてくる。
寝る時は、いつの間にか傍にいる。
私の肩に乗ろうとしたりじゃれついてくるけれど、彼は加減を知らない。
わたしの腕や脚を、いちにちに何度も引っかけて、爪痕を残してしまう。
そんな猫。
出会いはとある、ペットショップ。
その頃、私は妊婦だった。
仕事では、隣にでーんと座る御局様と、上司の理解を得られずに、精神的にも大きな負担を強いられていた。
そのためか、ストレスも相まりつわりが酷く…
毎日眠れず、夜通しトイレの便器とお友達。
生体販売には反対と思いながらも、私の休日の唯一の楽しみは、可愛い犬、猫や小動物を見ること。
その頃、周りに猫カフェは1軒も無かった。
ついついペットショップへ足を運んでいた。
特に、猫が好きだった。
何故かって?
第一に、見た目が美人だからだ。
第二に、犬みたいにキャンキャンワオーンとうるさくない。
第三に、にゅ~んと伸びたり、丸まったりして変幻自在で面白い。
手元に置いて、永遠に観察していたかったからだ。
ともかく、いつか、いつか猫を飼いたい。飼うぞ。
猫に関するありとあらゆる知識をネットで調べまくり、頭に叩き込むのも日課になっていた。
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さて、その日もいつも通り、家族と二人でペットショップへ行った。
こぢんまりとしたショップの一角、透き通ったガラスケースの中には小さな猫、犬。
上の段に、隣り合わせでブルーの猫が2匹いた。
一匹は雌。
もう一匹は、雄だ。
どちらも小さく可愛らしく、ぴょこぴょこ跳ねていた。
といっても、5ヶ月ちょっと。
少し育っている部類だった。
お値段を見ると…雌は15万円。
雄はそんなに高くない、けど10万円。
いや、高いよ。
可愛いなぁ癒されるなぁ、でも…君たち早くこのガラスケースから出られるといいね、良い人が見つかりますように…
雌はすぐに居なくなった。
だけど、雄は残っていた。
次の週も、また次の週も、そのまた次の週にも。
あるとき、彼は2万円になってしまっていた。
何故、何故、誰も彼を引き取らないのだろう。
そして、どうして、私は彼を引き取らないのだろう?
生体販売反対と言いながら、妊婦にはトキソプラズマが良くない、などと自分に理由を付けながら私は毎週会っていた彼が堪らなく愛しく、哀しく、猛烈に申し訳ない気持ちになった。
そして、私は自分ルールを決めて、家族に告げた。
「明日も見に行く。そして、まだ彼が居たら、飼う」
彼は、いた。
抱っこさせて貰えませんか?
恐る恐る店員さんへ問いかける。
ガラスケースから出た彼は、私がはじめて触れる前に、家族の肩に飛び乗ってぐるごろと喉を鳴らした。
こうして、彼は私の家族となった。
この後ももちろんたくさんのエピソードがあるのだけれど、その話はまた、今度に。
ねことコーヒーと牛乳がすきです。