【#NIKKEI】「DXについて説明できない」は何を意味するのか

 引用した記事の内容は、大企業の管理職のほとんどがDXについて、説明できないというもの。DX自体バズワードとして多用されるキーワードであるが、その本質はイメージとは遠く理解はされ難いというもの。
 また、一点気になる点として、「DXとデジタル化の違いが説明ができない」が73%であるのに対し、「経営層からのDX方針が明確に出ている『そう思う』と回答した」人の割合は、部長職が44.4%、役員クラスが51.4%、となっている。であるならば、「DXとデジタル化の違いについて説明ができないが、経営層のDX方針が明確であると答えた人」が最低でも20〜30%程度いることになる。
 私は、このように理解の無い対象について、さも正しいかのような主張をしている層が一定数いると考えている。そしてまた、こうした現状こそが、イノベーションをはじめとする、企業の変革を妨げる要因となっているのでは無いだろうか。

「変化への対応」と「学び直し」

 ざっくりとDXとは、全てのビジネスを対象とする大きな変化、と理解することができよう。つまり、あらゆるビジネスマンがイノベーション(DX/イノベーション)への対応を余儀なくされている。しかしながら、一方で、こうしたマクロ的な動きに対応した個々人のミクロ的な動きが対応しているとは限らない。最も分かりやすい例としては、経験資産、だろう。一般的に年功序列の企業であれば、年齢とともに権限や実績が積み上がっていく。つまり過去の実績(経験)を元に権限を行使する。そのため、新しく登場するものへの対応は確実に遅れることになる。
 DX登場と同時期だろうか、近年、よくキーワードとして、学び直し、という言葉をよく耳にする。これは、前時代的なビジネス感覚を現代に適したカタチへとアップデートすることが狙いだろう。しかしながら、対象が限定されていたり、研修内容で学んだ内容と実務での運用・応用をKPIとされていなかったり、と効果が期待できるものではない。さらには、コンテンツだけ用意して、取り組みとしてアピールする場合もある。
 このように、学ぶ必要性を感じ得ない社員に、学ぶ機会を与えたところで、根本的に企業が変革されることはないし、全社的な戦略推進は厳しい、というのが現状である。当然のことながら、全ての企業に当てはまるわけではないが、こうした企業は多いように思う。世界的に明確な定義がなされていない「エコシステム」や企業によって実行施策のことなる「DX(デジタルトランスフォーメーション)について、提唱者の曖昧なイメージ像を定義のように説明されることが多いように思う。例えば、エコシステムは「構造アプローチ」と「所属アプローチ」によって少なくとも2つに分けられる。また、DXはデジタル技術によってもたらされる変革過程、とされる見方が強く、〇〇をしたからDXに対応しているというような明確な対象は存在しない。

無知の知

 「無知の知」という言葉をご存知だろうか。「私は何も知らないということを知っている」(出典によって表現が若干異なります。)という言葉に起因するものである。つまり、知らないからこそ、何をすれば良いのか分かるのである。謙虚であることが大事、だとかいうことではない。
 例えば、プレステーションのキャッチコピーで「できないことが、できるって、最高だ。」というものがある。これも似たような概念だろう。
 このように、無知の知、というのは、私たち自身に足りないものを示唆する概念ともいえよう。何を知っていて何を知らないのか、何ができて何ができないのか。これらを認識することで、何をすべきかを明確にすることができる。ただ、前提として評価能力が必要であることに留意したい。

まとめ

 先に述べたように、説明できない、にも関わらず、理解している、としている人は一定数いると考えている。今回でいえば、DX、という言葉が当てはまる。他にもVUCAやエコシステム、などという言葉も当てはまるだろう。企業や官公庁、その他コンサルなどが各々に主張をしている。違和感を感じる人もいるだろう。前半の定義と後半の実装で主張が異なる主張も少なくない。DXであればデジタルを起点に全社的に行動を変革すること、と述べておきながら、後半ではIT導入の支援をします、なんてものもある。
 なぜ、このような結果になるのか。自身の理解のレベルを推し量ることをせず権威に盲従したり、もしくは、年高序列の関係性から「言われたことをやる」に終始し何も考えない。こうした要因が少なからずあるのではないか。
 このように考えると、自分で考えることの重要性が視えてくる。安定した企業なら確かに何もしなくても良いが、変化への対応を求められる企業であるならば、必ず新技術への対応をしなければならない。例えば、DXを考える前にデジタルとは何か、デジタル・イノベーションとはなんだったのか、そうした根本的な本質から立ち返る必要がある。

#日経COMEMO  #NIKKEI

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