【#NIKKEI】銀行ATMの合理化が遂に進む

 引用した記事の内容は、維持費が高く利用率の低い銀行ATMの共通化が進んでいるというもの。具体例として、SBIホールディングスが全国の地銀と連携するATM運営連合への出資やセブン銀行のATM運営委託、三菱UFJ銀行と三井住友銀行のATM相互開放が挙げられている。

(おそらく)固定費用が高く限界費用の低い費用構造

 おそらくATMは、固定費用が高く限界費用の低い費用構造のため、利用率が減少すると費用対効果の悪い資産となってしまうのではないか。固定費用とは、設置場所の賃料やメンテナンス費用、などである。限界費用とは、顧客数あたりの費用の増減である。顧客数や取引数が多くても費用が大きく変わるものではないことを前提として、限界費用が低い、とした。
 このような構造の場合、顧客数や取引数が多ければ多いほど手数料収入やブランディングなどに寄与すると考えられる。そのため、利用率が低下してしまうと、単に年間数百万円という高額なコストを支払い続ける不良資産でしかない。

ATMの機能は代替性が非常に強く、共通化に向いている

 そもそも、銀行などの金融機関が個々にATMを抱える必要はあるのだろうか。あのATMの機械でできることは、どこのATMでもほとんど変わらないはずである。にも関わらず、大きいショッピングセンターなどでは複数のATMが設置され、それぞれに列ができているのは手数料の問題だろう。
 こうした現状を踏まえるならば、台数を増やすのではなく、対応する金融機関の多い端末を設置し、取引数に応じて費用配分をする方が合理的だろう。今回の記事で言えば、地銀の集約化やセブン銀行の委託が当てはまる。メガバンクは全国的なブランディングもあるため、一概に減らすことはしないだろう。

そもそもATMの特権は基本的に「現金」であるから、競合はキャッシュレス

 利用率が減少しているATMであるが、ATMでないとできないことは少ない。基本的には現金取引以外は他の手段で可能だ。カードローンなども振り込み対応されるし、〇〇Payなどのチャージも銀行振込やカード決済がある。また、基本的な銀行取引はインターネットバンキングやアプリで完結する。また、決済手段も現金を使わないキャッシュレスが普及しつつある。もちろん、これらの手続きをATMで行う人もいるだろうが、選択肢がATMに限定されていた時代と比較すると、選択肢がATMに限定されず増加傾向にある現代においては、ATMの利用率が上がることは基本的にはないだろう。

まとめ

 機能面では代替性が強く、費用面では固定費用が高く限界費用の低い、ATMは共通化に向いている特性を備えていると言える。また、現金を扱う取引以外はATM以外の手段が使えるため、以前ほどATMの存在意義はなく、実際に利用率の低下に現われていると言える。しかしながら、完全にゼロというのは不測の事態に対応できなくなる。こうした実情を踏まえると、コンビニのATMや連合でのATMに集約していく流れは自然なことである。遂に動き出した、という印象である。


#日経COMEMO #NIKKEI

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