【#NIKKEI】ワクチン摂取証明書でも一元化は不可能か

  引用した記事の内容は、新型コロナウイルスのワクチン接種に関して、その活用方法が曖昧であるというもの。活用方法について国の統一指針の明示はなく、例えば、記事内における飲食店に入る際のイメージとしては、紙の証明書、東京都のアプリ、国のアプリ、の3つの方法があるようだ。
 さらには、個々の自治体が対応する状況となっている。具体的には、個別にアプリを制作し、そこに情報を入力して使用することになる。おそらくであるが、記事を拝読するかぎり、都道府県単位での利用の際は都道府県の制作するアプリ、国をまたぐ利用の際は国の制作するアプリ、と何もなければ49のアプリが制作される可能性だってある。デジタル庁は、このような重複する情報管理を個々の自治体が対応することによる費用を、国がデジタルの視点から一元管理することで様々なコスト軽減する、ということが設立目的の一つであったはず(インタビュー動画の記憶です。改めて確認はしていないです。)だが、機能していないようだ。マイナンバーやクラウドの導入など大きな枠組みは新聞で目にするが、目の前の実行施策に関して、対応は遅いようだ。

政府の基本的な方向性

 政府の基本的な方向性は、マイナンバーカードを起点とした情報の一元化、である。実際、様々なサービスがマイナンバーと紐づけられる動きがある。例えば、何かをするのに必要な情報が複数の場所に保管されていた場合、手順が増え、手続きの達成がやりにくくなる。また、保管形式も重要で、個々にフォーマットされていると、それを手続き主体の採用する形式に変換しなければならない可能性もある。基本的には情報の保管場所が複数にまたがることによる手続きコストの増大、また情報が重複することなどによる管理コストの増大(個人に対する公的機関の総費用)、であると考えている。

今回の問題点

 デジタル庁が発足以前であれば、やっぱり政府はイノベーション対応が遅い、で済まされるのかもしれないが、現状はそうはいかない。
 実は今回の問題は根が深い。
 まず、都道府県単位で接種証明書対する対応を許してしまっていると言うところだ。結果、何が起こるのかというと、それらの情報の管理主体に都道府県が少なくとも加わってしまうのである。そのため、接種証明書に係る個人情報が国と都道府県で重複する可能性があるのである。デジタル化した上で、DX以前と同じ問題が継続されているのである。
 そして、デジタル庁の管理機能である。今回、各々の都道府県が独自に接種証明書に係る対応を行なっているわけだが、少なくともデジタル以外の対応についてはデジタル庁が一元的に主導するのが本来の形である。もしかすると、今回デジタル化された不良資産を新たに作り上げる結果となってしまったのかもしれない。

まとめ

 行政のデジタル化が進み、デジタル庁が発足され、著名人が次々と配置される状況に期待を抱いていだが、実情は思ったよりも難しいようだ。長年にわたり、都道府県や市町村ごとに個別化されてきた行政手続きを国が手動で標準化するという動きは、確かに極めて困難であることは想像に難くない。
 所感としては、これまでの手続きに加えて、デジタルに対応した手続きができるようになったという印象だ。デジタルへの関与度の高い人からすれば便利になるだけなので、特段不都合はない。
 しかし、DX推進によって、アナログ情報をデジタル情報に置き換え、コスト管理の効率化を達成するというのであれば、少々疑問の残る結果となった。今まで通り、地域の役所がアナログな手続きを行い、デジタル庁がデジタル手続きを手動し、二重に税金が使われるのかもしれない。

#日経COMEMO  #NIKKEI

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