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ドトールで隣席の盗み聞きをして涙を流す夜

地元の「松のや」でロースかつ定食を食べた後に「ちょっと事務仕事でもするか」と入ったドトール。

僕が座った横の席には男女ふたりがいて、聞こえてくる話からみると、どうもバイトの面接をしているような感じだった。
男性が会社の人で、女性が面接を受けている人。

ごめんなさい、聞くつもりはなかったのだけれど何せ隣なもんでどうしても会話がすべて耳に入ってくる。
話ぶりからすると、女性はどうやらシングルマザーのよう。小さな娘さんがいるらしい。
そしてこの会社は運送会社で、配送の運転手をするための面接のようだ。

面接は終盤に差し掛かる。
「他に何か聞きたいことありますか」という上司の方からの質問にその女性が答える。

「どうしても何日かまとめて休まなければいけない日があるかもしれないんですけど、大丈夫でしょうか」

シングルマザーの方ならばこれは切実な問題だろう。
その女性は申し訳なさそうな顔をしている。聞いてるこちらも少しドキドキしながら回答を待っていたら、その上司の方はこう答えた。

「大丈夫です」
「生きていれば誰にでもいろんなことがありますもんね。そこはお互い様で、助け合いだと思ってます」
「そこをどうにかするのが自分の仕事ですから、大丈夫です。安心して下さい」

女性のホッとしたような顔が印象的だった。
自分も全く関係ないのに、ホッとした。そして思った

・・・

この人、超絶にカッコぇぇ!!

この上司の方は見た感じ30代後半くらいで髪も茶髪でイカつい感じなのだが、その見た目とは裏腹にその話し方も話すその内容も、とことん相手を気遣っていて隅から隅まであったかい。何だこの理想の上司は。そして何だこの超絶理想のホワイト会社⋯
「俺を雇ってくれ」そう言いたくなるほど、隣席の会話を勝手に聞いて勝手に泣きそうになっていた。

イケメン上司から最後の一言
「続かない人は、頼ってくれないんですよ。自分の中で完結させようとして、もうやれない⋯となってしまう」
「だからどうか、何かあったら遠慮なく頼ってほしいんです」

こんなこと言われたらもう泣くしかない。
聞いていないふりして下を向いて鼻水をすすり、眠気を覚ますふりして涙を拭った。

この女性とその娘さんが、どうかこれから幸せな日々になりますように。いや、きっとなっていくことだろう。
こんなにあったかい会社で働けて、こんなにあったかい上司に守られるならばきっと大丈夫だ。

俺は果たして、何かあったときに頼ってもらえる存在になれているのだろうか。
あやしいけれど、そうなるようにもっともっと自分を磨いていかないとな。

そんなことを思った盗み聞きタイム。あの超ホワイト会社、一体どこなんだろう⋯

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