見出し画像

先入観と思い込みで選手の可能性にフタをして成長にロックをかけてしまっていた話

LINDA SMILES でサッカーをしてくれている、ある中1女子の話。

彼女はこのLINDAでサッカーを始めた、いわば初心者スタートの子。
でもポテンシャルはかなりあって、フィジカルも強いし何より性格も明るくポジティブ。練習もほぼ休まない。普通に走るよりもボールを持ったときのほうがなぜか速い、天性のフットボーラー。

「アイス食べたい。コーチ買って」と毎回ねだってくる人たらしでもあり、この間は僕を股抜きしたご褒美にアイスを買ってあげるということで練習帰り一緒にまいばすけっとに行ったのだが、なぜか
「これ買って家で食べる」と言ってアイスではなく【赤鍋だし】を僕が持つ買い物かごに入れようとした、そんな子です。

また、平尾知佳選手に憧れてフィールドとゴールキーパーの二刀流に挑戦すると決めた、前回少しバズったこの話に出てくる子でもあります。

ポテンシャルの話をしたけれど、彼女が持つ数あるポテンシャルの中でも、当初特に目を引いたのがやはり「左利き」ということ。手も足も左利きという、純正のレフティー。

「左利き」
なんて良い響きだろうか。僕らサッカー指導者にとっては聴いただけでヨダレが出る言葉である。
左利きって日本人の中での割合は1割くらい。サッカーならば特に重宝される。他種目は知らんけども。
僕ら世代にとってはやっぱりマラドーナ。さらには名波浩、中村俊輔、ハジ、グティ、ディマリア、そしてもちろん神の子メッシ。

僕らサッカー指導者がよくする会話
「左利きの子って、なんか持ち方違うよね」
これ、あるあるです。

「右利きが右に体を開くよりも、左利きが左に体を開くほうがめっちゃ開く」
これもよく言われる。

正確な真偽はわかりませんが、ある方が言うには
「人間の内臓の配置的に、左利きの選手のほうが体を開く可動域が広くなる」
とか。ふむふむ

マラドーナや名波なんて、本当にほぼ左足しか使わなかったですよね。
僕も「左利きの選手ならば、左足だけ使えれば充分」と思ってます。
だって、左利きっていうだけで希少なスペシャルなんだから。

スペシャルではない右利きの選手は、左足もある程度は使えたほうがいいとは思います。でも左利きは、本当に左足だけでいい。全部左足に持ち替えてプレーすればいい。ドリブルもキックも全て。本気でそう思ってます。右からのクロスはラボーナで充分。

左利きについての講釈が長くなりましたが、ここからが例の彼女の話。

左利きの彼女。サッカー初心者ということで、足でボールをさわる行為もこれまではほとんどしてこなかったわけで
当然、うちでサッカーを始めた当初はほぼ左足でボールを蹴る、さわることが多かった。だって左利きだもんね。

だけど数ヶ月が経ち、ボールに慣れサッカーに慣れてくるのと並行して、次第になぜか右足を使う割合が相当に高くなってきたんですよ。

そのたびに僕は
「いや、左足でやればいいじゃん。なんでわざわざ苦手な右足でやるの」
「左足に持ち替えてごらん。全部左足だけでやればいいよ」
といつも言っていた。

しかし彼女は、いくら僕がそう言おうとも毎回不思議な顔をするかノーリアクション。そして右足を使うことを頑なにやめようとはしない。
もちろん左足の方が使う頻度は多いのだけれど、割合にしたら 6(左)4(右)くらい。せっかくの左利きなのに、実にもったいないこの頻度。

彼女→右足を使う
僕「いや、左足でやればいーじゃん」
彼女→ほぼシカト

普段の練習ほぼこれ

毎回この繰り返し。正直言うと「強情なやつだなぁ」とも思っていた。
そんな繰り返しにも飽きたのかそれともしつこい僕にキレたのか
ある日の練習中、ボールを蹴りながら彼女がいきなりこう言ってきた。

「コーチ! わたし右利きかも」


・・・

「手は左だけど、足は右な気がする」




え!

え!!

そう言われた時の僕はもう完全にウンパルンパのリアクションになっていた。

僕は彼女が左利きと言うから、そして実際に最初はほぼ左足でボールをさわっていたから、僕の頭の中は完全に
「この子は左利き。それだけでセンスある。最高」
という先入観メモリーが埋め込まれてしまっていた。

ただ彼女もフットボーラーとして成長していく過程で、実は右足も不自由なく使える、なんなら右のほうがスムーズにさわれる、ということに気づいていったのかもしれない。
でも、その彼女の進化に僕の頭の中がついていけていなかった。アップデートできていなかった。

確かに、利き手と利き足が違う子は結構いる。

「あぁ、これ完全に自分の思い込みで彼女のポテンシャルにフタをしてしまっていたやつだ」と、その場でめっちゃ反省した。
そしてその場で彼女に謝りました。ごめんね、って。
「いーですいーです」と彼女は言ってくれたけれど。いや本当に、申し訳ないことをした。

「このことnoteに書いていい?」とも聞いたら「いいですよ」と言ってくれたので、指導者の先入観や思い込みで選手の可能性にフタをしてしまい成長にロックをかけてしまっていた悪しき例として、恥ずかしながらここに晒しておこうと思う。

そのロックが解けてからの彼女、左足がスペシャルなのはもちろんのこと、右足も何不自由なく使えるハイブリッドフットボーラーとして日々の進化度がかなりヤバい。フィールドとキーパーの二刀流だけでなく右足と左足の二刀流。
左足のコースが封じられたら右足で持ち替えてコースを生み出してしまうし、左右両足でどちらにも持ち出すことができさらに柔軟にそれを替えられるから、完全にフタが外れていい意味で歯止めが効かなくなっている状態が、まさに今。

「俺らが選手に教えるんやない。選手が俺らに大切なことを教えてくれるんや」

尊敬するあの方にいつも言われていたことだが、今回もまた、衝撃度かなり高めな気づきを選手から教えられたのでした。
そんな彼女は、やはり毎回アイスをねだってくる。その執念のポテンシャルも日々成長中である。これにはフタをしロックをかけたいのだけれども。

そういえばメッシも、なにげに右足使うんだよな
W杯決勝の3点目も右足だった。
僕は手も足も右利きだが、野球のバッティングは左打ち。それと一緒か(違う)

【広告】
なぞるだけで汚れが落ちる歯ブラシ【奇跡の歯ブラシ】

スポーツ経験者特化型の転職支援サービスなら【株式会社Maenomery】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?