見出し画像

スタバの店長になろうと思ったサッカーコーチの話

これまで紆余曲折のコーチ人生を歩んできましたが
現在の僕は、LINDA SMILES という中高生の女子クラブを昨年から立ち上げ運営しながら、代表&監督を務めています。

この先の人生がどうなるかはわからないけれど、自分が立ち上げるクラブとしては、この LINDA SMILES がきっと最後になるだろうなとはおぼろげに思っているところ。

「自分が女子クラブをつくるとしたら」とずっと描いていた理想のクラブを体現させたのがこのLINDAなので、自分で言うのもおかしいかもしれないけれどかなりの思い入れを持って立ち上げました。たくさんの方の応援とご協力を得て(経て)今があります。
もちろん全然まだまだ完全ではなく、すれ違いや方向性の違いでご迷惑をかけた方もいます。そして今まだ現在も、僕自身の至らなさでご迷惑をかけ続けている方もいます。そこを解決するために自分を引きずり倒している毎日。そこは必ず近日中にクリアします。

そんなこんなで、昨年2023年の春にLINDAを始めて上にも書いたようにかなりの強い思い入れのもとで一年間やってきたわけですが、そんな立ち上げ初年度もそろそろ終わりに差し掛かった今冬、ある保護者の方(お母さん)から突然、一本の電話をもらったんです。

「最近は以前と比べて余裕がなくなっているんじゃないか、久保田コーチらしくない」と。
批判やクレームではなく本当に僕のことを心配して下さってくれた言葉でしたが、クラブをなんとか軌道に乗せよう、選手たちをなんとか上達させようという気持ちが先走りすぎ力が入りすぎて、気づかないうちに本当に余裕がなくなっていたことに、あの電話で強く気づかされました。

いや、気づかされたというよりは自分でずっと薄々自覚していながらもそれを認めて可視化することにどこか蓋をしてしまっていたことを完全に見抜かれ図星を突かれた、というのが正解だったのかもしれません。でももう、あの電話でさすがに目が覚めました。

クラブ立ち上げ初年度ということもあり、自分は正直言って力が入りすぎていたことも多かった。それはもう間違いなく。
その結果として選手たちの空気感とズレた練習をしてしまったこともあったし、ギャップを感じてさせてしまったこと、ストレスを感じさせてしまったこともきっと多々あったのだと思います。

2年目を迎えるタイミングで選手たちにメッセージを送ったのですが、その中で、これを素直に謝りました。本当にごめんなさい、と。

選手たちの表情や様子をもっとちゃんと観察しないといけない、一人一人のドアをノックしてちゃんと向き合わないといけない、いい意味でもっと力を抜いて、もう一度「みんなの居場所」という大きなコンセプトにしっかり立ち返ろう、と決めたきっかけが、あの電話だった。

そこから、今に至ります。

きっと選手たちも変化を感じ取ってくれたのだと思うけれど、日を追うごとに日々の練習参加人数が劇的に増え、少しずつそして確実に、それぞれの居場所としての形が出来つつあるのかなという感触が今はあります。もちろん過信はいけないけれど。

では、自分の中で何を強く変えたのか。ここからはその話。

ジムの中にスタバがある、そんな街クラブを目指そう

これを自分の中で強く決め、今はこれを実践しているところです。
もちろんもっともっと改善しないといけない、配慮しないといけないことはたくさんあるのだけれども。

スタバ = 安心できる居場所

コーヒーを飲むだけが目的ならばスタバには行かないですよね。スタバのコーヒーは一番安いショートサイズでも300円超えちゃいます。
セブンやマックのほうが安いしむしろスタバより美味しいし、なんなら一番美味しいのはローソンのコーヒーだったりする(あくまでも個人の感想)
ならば、スタバに行く人は一体何を求めていくのか。

あの空間が好き
落ち着く
あそこでゆっくり勉強や仕事をしたい
友達とゆっくりお喋りをしたい
ただただくつろぎたい
スタバにいる自分をインスタに上げて映えさせたい

つまりコーヒー以外の価値と目的を、スタバに見出しているわけです。

LINDAも、そんな場所になりたいと思いました。
サッカーだけが目的じゃなく、LINDAに行けば楽しい、落ち着く、仲間に会える。学校から家に直で帰りたくないからちょっとLINDAに寄って行くとかだけでもいい。
サッカーにプラスしてここに来ることこそが目的となり価値となり、そして自分も映える。そんな場所にしたいと強く思っています。

加えて、中高生女子はスタバでコーヒーを飲まないですよね。ほぼみんな ◯◯フラペチーノ。季節限定のやつとか。今ならばメロンフラペチーノっすね。

LINDAも、サッカー以外の美味しくて映える「フラペチーノ」をどこよりも充実させ、選手たちに喜んでもらえたらいいなって思ってます。

可愛くてオシャレな練習着と移動着をつくり、選手たちに毎日気分良くサッカーに来てほしい。公式戦限定の特別なユニフォームもあったら喜ぶだろうなぁ。
BBQしたり焼肉行ったりみんなでJリーグ観に行ったり、沖縄にも行ったり。
(石垣島にも行きました)

いつでもどこでも久保田を股抜きしたらアイス!っていう契約を全員と結んでいるんですが(笑)これもフラペチーノのひとつかもしれない。

そうした楽しみや目的がたくさんある、そんな場所にしようと決めました。
いろんな大人が関わってくれて、魅力的な人とたくさん接することができ、サッカー以外のことも多く感じ取れる場所。これもきっと、フラペチーノの一環なのだと思います。

スタバのような場所になりたいから、最近は最初の挨拶で本当に「いらっしゃいませー」と言ってます。来てくれてありがとう、とも言ってます。
「クラブチームなんだから来るのが当たり前やろ」なんて思考になったらもう最悪。そんな自分にもなりたくないしね。

メニューを提示して、そこから選んでもらうような練習もしました。これからもそういう機会を多くつくりたい。
そんなスタバ(LINDA)をつくり空間を演出する、店長になりたいのです。

お金を払ってスタバに落ち着きに来たり楽しみに来ているのに、スタバの店員さんにコーヒーの飲み方やカップの持ち方をいちいち指摘されて直されたらブチ切れますよね。
「だから、そのカップの持ち方違うやろ!」とか「コーヒーってこういうもんだぞ」なんて考えを押しつけられたり。そんなスタバはもう二度と行きたくない。

そんなスタバにならないように。でもでも、それと相反するようだけれどもやっぱりあくまでもサッカークラブだから、サッカーはしっかりと伝えたい。
いくら中高生女子はコーヒーを飲まないと言えど肝心のコーヒーがまずかったら、スタバの価値はきっと半減しちゃう。

だから、スタバに加えてもう一つ
「ジムのような場所」にもなろうと思ったのです。

ジム = サッカーをしに来る場所

決められた月謝を払って、あとは好きな日に何回でも来てもいい。ほとんどのジムはその形式ですよね。

それはLINDAもそう。練習日は週4で設定しているけれど、塾や学校などの自分の予定と照らし合わせて各自が来れるペースで来てねということでやってます。
だから週4で来る子もいるし、週1だけの子もいる。何ならほぼ月1ペースの子もいたりします。その子は勉強を本当に頑張っている子。

いつ行くか。何回行くか。休もうと思えばいくらでも休めるしサボることもできる。曜日のルーティーンで無機質に来るのではなく、全ての日で、どうするかを自分で選べる。
このほうが、実は厳しい環境なのだと思います。

ジムに行くのは何らかの目的があるから。腹筋を割りたい、筋肉つけたい、痩せたい、などなど。
「勇気を出して今の自分を少しだけ超えてゆくことにチャレンジしに来る」
ジムってそんな場所だと思うんです。

これがもちろん、LINDAで言えばサッカーですよね。
もちろんサッカーだけでなく、そこにプラスしてスタバのような価値を求めてきてくれれば最高なわけです。

ジムには手助けやアドバイスをするインストラクターがいます。LINDAで言えばコーチ陣。

こうしなきゃダメ!こうせなアカンやろ!というアプローチは絶対にしない。
「君がやってるそのやり方もいいけれど、こうしたらもっと効果出ると思うよ」「もっと違う景色が見えてもっと楽しくなるんじゃないかな」というような

そんなきっかけを伝え背中を押してあげて寄り添うジムインストラクターのような存在でいよう。これは選手たちにも約束しました。

コーチが先頭に立ってみんなを引っ張るというのではなく、前に立って走るのは選手。僕らはその背中を後ろから押してあげる存在に徹しようと思ってます。
もしくは横で一緒に走る。

ロープで引っ張られたらそこについて行くしかないけれど、選手が前に立って自分から走り出し後ろから押されるだけなのであれば、どこに進むかは選手自身が決められます。その方向も自分で決められるし変えられる。
これがきっと、よく言われる「自主性・主体性」というやつです。

全員が主体性を持ってサッカーに来る。そしてサッカーだけでなく、その場所を存分に楽しむ。
そんな2年目にしていけたらと心から思いながら毎日選手たちと会ってます。

「ジムの中にスタバがある、そんなイカしたカッコいいクラブにみんなでしていこう」と、選手たちとも話してます。

最近は毎回の練習で、その曜日の過去最多参加人数を更新している毎日。
でもこれに安心して過信したらまたきっとあっという間に飽きられてしまうし、愛想を尽かされてしまうかもしれない。
だから常にコーヒーの質を吟味して良いものにアップデートしながら提供していかないといけないし、フラペチーノも期間ごとに新しくして、選手たちに新鮮さを感じてもらって喜んでもらわないといけない。

だから正直、毎回こっちは必死です。やんちゃで気まぐれなムスメたちにたくさん笑ってもらうため、満足してもらうためにおじさんは必死こいてる。

でもこの必死さも大変さも、昔コーチを始めた頃のガムシャラさを思い出す感覚もあったりして、最近はとても新鮮さを感じているところでもあるんです。
俺、店長だし。ジムのインストラクターだし、と。
でも力はもう入れ過ぎずに。

自分の力だけじゃ足りない

なので、これは昨年からですが自分以外のコーチ陣にたくさん頼っちゃってます。本当に助けてくれてます。自分だけじゃ本当に無理。

さらにさらにもっとアップデートしなくちゃいけないという思いもあって、若くて有能なコーチにも仲間入りしてもらいました。さっそく、クラブに新しい風を吹かせてくれています。

山澤世和コーチ

聖和学園出身、元U-16日本代表にも選ばれ、現在はアメリカの大学でプレーしながら本気でプロを目指している 櫨川結菜さん も、帰国中の今、コーチとしてほぼ毎回来てくれています。

彼女がやってくれる聖和ドリ練がもう最高で

勇気を持って今の自分を少しだけ超えてゆくことにチャレンジしに来るジム
そのジムの中には自分なりにくつろげるスタバがあり
コーヒー(サッカー)以外にも楽しめるフラペチーノがたくさん用意されている

そんなクラブに、必ずします

3月下旬に実施した新入団選手向けのクラブ説明会では、U-14のキャプテン&副キャプテンにも登壇してもらいました。いろんな話をしてもらったのですが、最後に、せっかくだから久保田へのダメ出しを打合せなしのガチで聞いてみました。

やつら「うーん、、」
私「いや、なければ別にいいんだけど」
やつら「いっぱいある中から選んでるんです」w

こんな関係性、これからも継続していければ最高っすね

ごめんなさいもう許してください

最後に

居場所づくりだけに浸るのではなく、育成そして強化も大切なもの。
居場所・育成・強化、これを高いレベルで共存させて全部を目指す。
これは本気でそう決めてます。

あいつまた何か言ってるよと、呆れて笑いながらもどうか期待していて下さい。頑張ります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?