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部活ってやっぱり素晴らしいんだぜ

8月、高校生の練習試合で対戦した相手は、4校からつくる合同チームだった。
それぞれ部員数が少なく、合同チームとして週末は一緒に練習をし、秋に始まる選手権予選を目指している。

普通、部員数が少なくなればモチベーションも減少しがちで「じゃあ俺もやめる」となってもおかしくないのに
「合同チームでもいいからサッカーをしたい」と、部活でサッカーを続ける選手達。彼らを支える大人達も、その場にたくさんいた。

茶髪の子がいたり、一見チャラそうに見える風貌の子も数名。でも試合が始まれば、全力でプレーしてる。
マネージャーの子も後ろ髪だけメッシュ入れてたりアイシャドーもつけまつ毛もバッチリでイカしたギャル風だったけれど、彼女達だって、合同チームでマネージャーを続けているのには、きっと彼女達なりの思い入れもあるんだろう。

余談だけど、うちのマネージャーズを見て、相手ベンチの男子達が「モデルみたいだ⋯!」とざわついたらしいのだが
相手ベンチのマネージャー達が「でも結局、ウチらみたいなほうがモテるし」と、ざわつく男子達を一刀両断してたらしいw

ギリギリの人数で3本試合をして、ラストの4本目が始まる前。もう疲労困憊だったはずの合同チームの10番くんが、笑いながら
「俺、この後バイトなんだよなぁ」と話していた。
試合中、彼はうちの選手に対し激しく当たってきたけれど、試合が終わったら、また笑顔で駆け寄ってきて「さっきのごめん」と謝っていた。最高に、いい奴だった。

いろんな境遇の子達が、限られた環境の中で、全力でサッカーを楽しんでいる。

その4日後、練習試合で訪れたのは、横浜にある朝鮮学校だった。
朝鮮学校の子達、目が合えば挨拶してくれる。それは決して大人にやらされているような無機質な挨拶ではなく、ごく自然な、人と人同士の挨拶だった。

彼らも人数がギリギリだったけれど、やはり全力でファイトして、最後まで、その全力と走力が途切れることはなかった。

この朝鮮学校では、元・北朝鮮代表でJリーグでもプレーした、あの安英学(アンヨンハ)さんが指導されているらしい。
実際この日も安英学さんはグランドにいらっしゃって、少しお話もしてくれた。とってもいい方でした。

サッカーとは離れるが、朝鮮学校は、日本の高校無償化の枠からは除外されている。無償化の法律が制定された当初は朝鮮学校もその対象になるはずだったのに、政治的思惑の末に、結局は外されてしまった。これ自体明らかに差別だし、おかしいことだ。このことに関して、僕は絶対に許せない。
彼らは日本で生まれ日本で育ち、日本で生活をしている。朝鮮にルーツを持つ彼らはなぜ、日本で暮らしているのか。
かつて日本がしてきたことからそれは始まっていて、それは今も終わってない。歴史の糸は、こんな現代にもまだ繋がっているんだ。

歴史と生活は切り離せない。そしてそんな話を、試合前、うちの選手達にうちの顧問の先生はちゃんと話していた。

8月15日、また別の高校で練習試合。
この日の持つ意味。顧問の先生はこれもまた、試合前に選手達に話していた。大切なことだ。

夏休み中のある日、練習前に全員でミーティングをしたいと3年生から言われて、みんなで集まった。
お盆明けから市民大会が始まる。選手権予選ではなくこの市民大会で部活にケリをつける3年生もいるので、ある意味、節目となる大会だ。
なのでここでもう一度チームが一つになりたい、目標を決めたいということだった。キャプテンは想いが溢れ、皆の前で泣いていた。

「あいつのあの涙を見たらもうやるしかないだろう」と、僕もその後の練習で1.2年生に話をした。

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8月から、また別の高校にもコーチとして関わらせていただくことになった。
そこの顧問の先生が僕の指導に共感してくれて、オファーをしてくれた。その先生はいろんなことに興味や好奇心を持つ方で、僕以外にも、さまざまなルーツのコーチを招き、選手達のためにと私費で報酬も出してくれている。

熱意の塊、みたいな人だ。この人の力になりたいと素直に思えたから、僕もこのオファーを受けた。
この先生じゃなかったら、あの条件では決して引き受けないし。笑

選手達も純粋にサッカーが大好きで、サッカー小僧の集まり、という感じで面白い。愛すべきキャラクターの子がたくさんいる。

初めて練習に行った日、僕が一番驚いたのが、3年生のマネージャーの子の働きぶりだった。
マネージャーの心を掴むことはとても大事なので、僕は練習を進めながらも、彼女に話しかけようとずっと思っていたのだが、彼女は、話しかける隙をまるで与えてくれない。

気づいたらボール拾いに行き、そうかと思えば足を痛めた選手のアイシングやテーピングをし、ドリンクを絶やさないように常に補充しながら、気づいたらまた遠くまでボール拾いに行っている。全く、話しかける余地がない。

メニューの合間、ダベる男子達がいれば「ほら!話してる暇があるなら早く行きなさい!」と、男子の尻を叩いてる。

選手達も、彼女を完全に信頼し切っているのが良くわかる。まるで、みんなのお母さんのようだった。

秋に行われる選手権予選、どこかで負けて、その時点で、3年生のサッカーは終わる。引退というやつだ。
その時、選手以上に一番号泣するのは、きっと彼女なんだろうと思う。まだ付き合いの浅い僕でも、それだけは容易に想像がつく。

だから選手権予選の試合の前、僕が選手達にかける言葉がもしあるとするなら
「頑張れる理由、頑張らなきゃいけない理由、わかってるよな」ということになるんだろうと思う。

彼らと彼女の日常のほとんどを占めてきた部活の最後の日を、想像するのがちょっと辛い。
でもあの子達にしかわからない大切なものがきっとあるだろうから、あまり干渉(感傷も)し過ぎないように、とも思ってる。

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お盆明けに、例の市民大会が始まった。前回の記事 にも詳しく。

4日間連続のタイトなスケジュール。1.2回戦を勝ち抜き、準決勝で強豪に敗れ、最終日の3位決定戦では、これまた強豪にPK負けとなり、4位でこの大会を終えた。

学校の同級生や、一足先に引退した3年生、そして父兄の方々も連日たくさん応援に来てくれて、あの一体感はとても温かいものだった。だからこそ4日間も頑張れたし、あの子達の「頑張れる理由」にもなったんだろう。

試合後、3年生達は応援に来てくれた同級生の女子達と楽しそうに写真撮影をしていた。これも学校ならでは、部活ならではの光景だよね。

今年はいろいろな意味で特別な夏になってしまったけれど、きっと彼らが大人になった時でも懐かしく話せる、思い出になるような4日間だったと思う。

高校生にもなれば、割り当てられた副審を選手にやらせることも多い。でもうちの先生は「選手を疲れさせたくないし、元来、選手は試合をしに来るわけですし⋯なので、私がやります」と言って、監督という立場なのに自ら主審や副審を買って出て、連日猛暑の中、ヘトヘトになりながら頑張って走ってくれていた。
コーチである自分もやるべきだったんだけど、ギックリ背中で走れず⋯申し訳ないことをしました。

でも先生は「全然大丈夫です!」と、試合が終わり選手達や僕がスタンドでゆっくりジュースでも飲みながら見守る中、ずっと審判をしてくれていた。

こんな先生、なかなかいないですよ。

この4日間の試合の中で、選手交代について考える時に、何度か、控え選手達に相談することがあった。
「あいつをもう替えようと思うんだけど、どう思う?」と。
そんな時「あいつ、もう少し頑張れますよ」と言ってくれる声があった。

普段から一緒に学校生活を送り、サッカー以外の一面を知っている同士だからこそ、わかること。
これはきっと、部活ならではの固い結びつきからなんだろうとも思う。

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昨今、部活についてネガティブな話題が多い。過密スケジュール、先生が休めない、体罰、そもそも学校でスポーツをやる必要がない、海外ではみんな民間のクラブでスポーツをやるんだから、部活なんて廃止すればいい、なども。

でも、部活ならではの良さ、素晴らしさ、部活でしか体験できないことがたくさんあることも事実。
今回書いたことは、この8月に僕の周りであったことだけですからね。

でもこんな人間模様が、素敵な日常が、日本全国で、一年中、いろんな学校で普通に流れてる。

もちろん、数ある問題点はしっかり改善をしないといけない。
部活に関わる先生の待遇面も良くしないといけないし、スケジュールはもう少し緩くしないとね。最高でも週4日、土日どちらかは休みにすべきだとも思う。体罰も、必ず根絶しないといけない。

その上で、部活はやっぱり存続させるべきだと僕は思います。
さまざまな事情で、部活でしかサッカーができない子もたくさんいる。もちろんサッカーだけでなく他種目も、文化部の子だってそう。

部活は廃止!スポーツは全てクラブで!となった時。あのイカした10番くんは、果たしてサッカーを続けてくれるだろうか。

僕は、部活大好きです。

【 お願い 】日本で初めての《 コーチのための労働組合・コーチユニオン 》をつくるために、現在、クラウドファンディング に挑戦しています。日本のスポーツ界の仕組みを変えるために、本気でチャレンジします。この本気がもし届いたならば、是非ご支援願えないでしょうか。皆さんの力を、貸して下さい。

パーソナルトレーニングも行なっています。宜しければ、覗いてみて下さい。





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