文系のための超基礎医薬講座3「炎症起こすとなんで痛いの?」
こんにちは、くらです。
文系出身でMR(医薬情報担当者)や医療翻訳を目指す人のために、医薬の超基礎をお話していきます。
私は、ある外資系製薬企業で、MR教育を約25年担当してきました。その中には、文系出身者も多くいました。
そこでの経験を、これから医療関連の仕事を目指す方々のためにお伝えしたいと思います。
といっても、目指している人はかなり勉強されていると思いますので、私が新人MR教育で、これは基礎中の基礎だけど、なかなか知る機会がないことだなと思ったことを紹介していきたいと思います。
今回は「炎症」について、です。
炎症起こすとなんで痛いの?
例えば、風邪ひいたとき、のどが痛くなり、赤くなるのは経験あると思います。
なぜか。
発熱(熱感)、発赤、腫脹、疼痛、これを炎症の4大症状と言います。
痛みは、疼痛(pain)ですね。
で、痛みはどうして起こるのか?
風邪をひく、というのは、大体の場合ウイルス(virus)が体内に侵入して起こります。
ウイルスは、自分だけでは増殖できず、人や動物の細胞に自分のDNAやRNAを注入し、その細胞の遺伝子やタンパクを利用して自分の複製を作ります。
そして、細胞の中で増殖した後は、その寄生した細胞を破壊して外に出ていきます。
つまり、ウイルスが寄生した細胞は、もう死ぬしかないのです。
のどの細胞に寄生したウイルスは、のどの細胞を破壊していきます。
でも、のどの表面には白血球(White blood cells)特に好中球(Neutrophils)が集まって、組織に侵入しようとしているウイルスや細菌などの病原体を捉えている。
(参考 日本病巣疾患研究会 https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/)
細胞が産生する物質
白血球の中のリンパ球(lymphocytes)や単球(Monocyte)などは免疫に関わっていて、抗体(antibody)やcytotoxic T cellを発現してウイルスなどの病原体を排除している。
この白血球の産生する物質(サイトカイン:cytokine)や、壊れた細胞から遊離するアラキドン酸(Arachidonic acid)から産生されるプロスタグランジン(prostaglandin)などによって炎症が起こってくる。
日本血栓止血学会 より
プロスタグランジンは、キニノーゲン(Kininogen)から産生される発痛物質ブラジキニン(Bradykinin)の作用に関連している。
組織が損傷されると、ホスホリパーゼA2により、細胞膜のリン脂質からアラキドン酸が遊離される。遊離されたアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase;COX)やペルオキシダーゼを含むPGH(prostaglandin H)合成酵素複合体の基質となり、PGG2、PGH2 へと変換される。さらに各組織に特異的なPG合成酵素によりPGE2( prostaglandin E2)など種々の化学伝達物質が合成され、損傷組織へ放出される。PG自体に発痛作用はないが、ブラジキニンなどの発痛物質の疼痛閾値を低下させる。また、局所での血流増加作用や血管透過性の亢進、白血球の浸潤増加など、炎症を増強させる作用を有する。
(がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版):https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_02_01.php)
末梢神経(Peripheral nerve)には、侵害受容器(Nociceptor)があり、ブラジキニンなどの物質によって刺激され、その刺激が神経軸索に伝達され、更に脊髄、視床を経て大脳皮質まで伝達され痛みとして感じられるのである。
(日本 ペイ ンクリニ ック学会誌 Vo1.9 No.4, 2002、P44)
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