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さよなら睡眠不足!快眠のコツ
発達障害や精神障害を有する人のみならず、現代人の多くがもつ共通の悩み。
それが、睡眠に関する悩みです。
「寝つきが悪い」「熟睡感が得られない」「スッキリ起きられない」
そんな人がとても多いと思います。
睡眠の質が悪いと気分が上がらないまま一日を終えるハメになる…
そんな経験ありますよね?
今回は、自身が睡眠障害に悩まされた経験をもち、一般企業にお勤めの方たちのオンライン生活サポートをさせていただいた実績のある、作業療法士イルハンが医学的知識をベースにした快眠のコツをお届けします。
①なぜ人は眠るのか
睡眠に関する研究は古くからあります。
かつては「脳が疲れたから休息している」という単純な見方が主流でしたが、レム睡眠の発見により、睡眠についていろんなことがわかってきました。
現在は、睡眠の制御機構として、次の三つが提唱されています。
(1) 恒常性(=常に一定であること)維持機構:
→疲労が蓄積した脳部位が活動を低下させて回復につとめる。
(2) 体内時計機構:
→体内で24時間を刻むリズムに合わせて体温の低下と覚醒(=めざめ)の低下がおこる。
(3) 覚醒保持機構:
→不安・緊張・怒りなどで興奮した状態は覚醒をよびおこし、その逆は睡眠をよびおこす。
なんだか、小むずかしい話ですが、すごーくざっくりといいますと、
昔は「脳が疲れたから寝て疲労回復してるんだ」と考えられていたのが、現在は「人が眠る背景には複雑な制御機構があって、眠ってる間も脳はいろんなことしてくれてんだ」と考えられるようになっているのです。
ちなみに、この3つの制御機構を覚えておくと睡眠対策が立てやすくなりますよ。
・日中にしっかり脳と体を動かして疲れさせると寝つきが良くなる。
・体温が低下すると眠気がくる。
・不安感が強いときは目が冴えてしまう。
これだけでも覚えておくといいですよ!
ところで、人間以外の生物って眠ったりするのでしょうか?
睡眠は、人間をふくむ哺乳類だけでなく、爬虫類や魚類などの脊椎動物に加え、ショウジョウバエなどの下等生物にもみとめられているそうです。
ですが、一説によると、高度な睡眠のメカニズムは、鳥類や哺乳類にしかみられないそうです。
余談になりますが、イルカって実は哺乳類なんですよ。
彼らは長い距離を旅するのに常に泳ぎつづけているわけですが、なぜそれが可能かというと、脳の片方ずつを眠らせているんですよ。
「半球睡眠」という方法で、渡り鳥なんかもこのやり方で眠るらしいですね。
では、人間に関して、睡眠の役割ってどんなものがあるのでしょうか?
睡眠の役割はいろいろありますが、今回は「疲労回復」と「記憶の整理」にしぼって説明したいと思います。
まずは、疲労回復という点についてですが、ノンレム睡眠とよばれる深い眠りの間に、脳は老廃物を排泄したり、体内の修復や回復を促すホルモンを分泌させたりしているそうです。
だから、ぐっすりと眠ると、翌朝体が軽くなったように感じてスッキリ目覚められるんです。
次に、記憶の整理という点についてですが、「テスト前に一夜漬けで勉強した内容が、後になってみるとほとんど残っていない」といった経験はありませんか?
それは睡眠によって記憶が整理されず、しかるべき場所に記憶が定着しなかったためと説明できます。
また、眠っている間に整理される記憶は、エピソード記憶だけでなく、作業記憶など体で覚えたことも含まれるといわれています。
つまり、日中体験したこと、覚えたこと、練習したことは、眠っている間に整理されて長期記憶に保存されていくんです。
こちらは、レム睡眠とよばれる浅い眠りのときの脳の活動によるものです。
夢をみるのは、この記憶の整理の過程であるともいわれています。
これだけでも、睡眠が大切であるということはお分かりいただけたかと思います。
次は、いよいよ具体的な実践方法になります。
②快眠を得るために今すぐすべきこと
(1) 太陽の光を浴びる
睡眠に関与する物はいろいろありますが、よく知られているのは「セロトニン」と「メラトニン」ですよね。
セロトニンは、感情をコントロールしたり、精神を安定させたりする働きがありますが、同時にメラトニンの原料にもなるのです。
そして、このメラトニンこそが、季節のリズムや概日リズムを調整する働きを持つのです。
夜になると増えるといわれるメラトニンの作用によって、深部体温が低下して、体が休息に適した状態となり、眠りやすくなるわけです。
前置きが長くなりましたが、メラトニンを増やすためには、その原料となるセロトニンの分泌を促さないといけないのですが、そのためには日中にしっかり太陽光を浴びる必要があります。
体に一日のリズムをつかんでもらうためにも、起きたらまず朝日を浴びて一日をスタートしましょう!
(2) 適度な運動をする
前述した通り、睡眠には、疲れた脳や体を休養させる目的があるわけです。
単純な話で、体が疲れていないと、脳は「まだ休まなくていいか」と考えて休息モードにきりかわらないんです。
子育て経験者はわかるかもしれませんが、日中の運動量が少ないと子どもはなかなか寝てくれません。
寝床に入っても、泣き叫んだり、大暴れしたりして親を困らせます。
そして、ひとしきり暴れきると、スイッチが切れたようにストンと眠るのです。
つまり、「寝る前の大暴れ」は、体が休息モードに入れるようにするための彼らなりの工夫といえるのです。
大人の場合はもっとかしこくいきましょう(笑)
睡眠の質を高めるには、息が切れるような激しい運動は避けたほうがいいです。
かえって覚醒をよびおこしてしまいます。
それよりは、長く続くゆったりとした運動(有酸素運動)がいいですね。
便利さ快適さが何よりも優先される現代の暮らしでは運動する機会があまりないかもしれませんが、なるべくエスカレーターを使わずに階段を使う、すぐタクシーに乗らず30分程度の距離なら歩く、などからはじめてみるのがいいかもしれないですね。
注意点ですが、寝る3時間前くらいには運動を終えてくださいね。
そうすることで寝るころに、ちょうど睡眠に適した状態まで体温が下がってくれているはずです。
(3) 心配ごとや悩みごとは紙に書き出す
睡眠の3つの制御機構、覚えていますか?
不安・緊張・怒りなどで神経が昂っているときは、脳は休息モードにきりかわらないんです。
だって人類が歩んできた歴史の中で、そんな危機が迫っている状況で寝たりなんかしたら、すぐ死んでしまいますもんね。
仕事や家庭でのもめごとが原因でイライラしていたり、先のことを考えて不安を抱いていたりする場合は、思いきって紙に気持ちを書き出してみてください。
実は、心配ごとを紙に書き出すワークは多方面で活用されているのです。
だまされたと思ってやってみてください。
自分を客観視できたり、悩みごとが思っていたよりも小さなものであると気づいたりします。
少しでも心が軽くなると、断然眠りやすくなりますよ!
僕は、紙に書くのが面倒なので、スマホの「メモ帳」に、バァーーっと気持ちを吐き出したりします。
そして、やるべきことがみえたら、「アラーム」を設定したり、「スケジュール」に打ち込んだりして、頭の中をすっからかんにします。
そして、いきたい場所・たべたいもののことなどを考えながら眠りにつきます(笑)
(4) 読書や瞑想など心を落ち着ける活動
ここまで読んでくださったなら、寝る前に心を落ち着けることの重要性はわかっていただけているかと思います。
おすすめの方法は、ズバリ「読書」と「瞑想」なのですが、どちらもすごく心が落ち着きます。
まず、読書についてですが、選ぶ本・照明・読む時間に注意してください。
読む本としてはエッセイや短編物語がいいですね。
読むことがストレス解消につながるようなものであれば、睡眠の質を高めてくれることまちがいなしです。
電子書籍はNGです。
端末から放たれるブルーライトは睡眠を妨げます。
また、できれば読書専用のライトを使う方が望ましいです。
煌々と部屋を照らす室内灯よりも、目に優しくて電気代も安く済みます。
あと、つい夢中になって、いつまでも読み続けないようにしてくださいね(笑)
僕は、フロムの『愛するということ』を最近寝る前によく読みます。
愛について考えながら寝るといい夢をみられそうでしょ?笑
余談ですが、寝る前に読んだ内容は記憶に定着しやすいので、ネガティブな内容の本は避けましょう。
逆ポジティブなことを脳にインプットしちゃいましょう!
次に、瞑想ですが、これは寝る前にすると効果絶大ですね。
そもそも、瞑想の目的が脳を休ませることですから、睡眠の導入としては最高の手段ですよね。
布団に入る前に楽な姿勢(僕はあぐら座位)をとって静かに目を閉じてください。
(このとき姿勢は正してください。悪い姿勢だと心が整いません!)
そして、深呼吸をしながら、自分の呼吸音に耳を傾けてください。
慣れていないと、いろんな雑念が湧いてきて集中できないと思います。
わが家では、アロマを焚いて、ヒーリングミュージックを流しながら行います。
大事なことは頭の中を「思考」でうめつくさないことです。
呼吸音、香り、静かに聴こえるBGMにだけ感覚受容器を開放して、それ以外のことは何もしないことです。
そうすれば自然と脳と体が休息モードに入ってくれると思います。
(5) 室温など環境を整える
寝室の環境を整えることも大切です。
「温度」「湿度」「明るさ」の観点からお話します。
まず温度ですが、くりかえしお伝えしているように、体温が低下すると人間の体は休息モードに入ります。
なので、冬場に暖房でガンガンに部屋をあたためるのはNGです。
冬は15〜18℃前後、夏は25〜27℃前後が理想といわれています。
また、寝床の中は30℃前後いいそうです。
人間の体温よりかなり低めですね。
次に湿度ですが、寝室は太陽の光が届きにくい場所にあることが多いので、どうしてもじめじめとしがちですよね。
湿度に関しては、通年で50〜60℃が理想といわれています。
最後に、照明ですが、これも睡眠の質を左右する大事な要素です。
「寝る直前まで白色LEDで煌々と照らされた寝室」ってなんだか嫌ですよね。
多くの人が、オレンジや黄色などの暖色系を好まれるようですが、我が家ももれなく淡い暖色系の照明を使用しています。
照明カバーとして和紙を用いることで、刺激を抑えた優しい光になっています。
③快眠を得るために今すぐやめるべきこと
(1) 布団の中でスマホ
寝る直前にスマホなどのデジタルデバイスを使うのをやめた方がいい理由は二つあります。
まず、一つめですが、「太陽光を浴びる」ことの大切さをご説明したときに出てきた「メラトニン」がポイントになります。
メラトニンは概日リズムを整える働きがあるといいましたよね?
夜にスマホなどが発するブルーライトを浴びてしまうと、脳が昼間とかんちがいして、メラトニンの活動を抑制してしまうのです。
どうしてもスマホをするなら、就寝の1時間前までにしてください。
また、iPhoneには「Night Shift」というモードがあります。
これはブルーライトを低減してくれる機能なのですが、他のスマホにも同じような機能があるみたいですし(Androidは「ナイトモード」)、ブルーライトをカットする保護フィルムも販売されているそうですので、試してみるのもアリだと思います。
寝る直前のスマホを控えた方がいいもう一つの理由は、スマホでネットサーフィンや動画視聴をすることで脳が覚醒状態になってしまうからです。
ネットで知りたい情報を得ようとするときにドーパミンが大量に分泌されてしまうのです(肝心なのは、知りたいことを知ったときではなく、知ろうとしているまさにそのときに脳が快感を覚える、ということ)。
動画視聴も同様ですね。
睡眠の制御機構の第3番目、覚えていますか?
脳が興奮すると眠気は遠のきます。
寝る前のスマホがどれほど害になるかお分かりいただけたかと思います。
(2) 寝る直前の入浴
これは、体温と眠気の関係で説明がつきますね。
人間をはじめとした動物は、体温の低下に伴って眠たくなってきます。
体がポカポカしたままだとなかなか眠たくならない、という経験はありませんか?
就寝の2〜3時間前までには入浴を済ませておきましょう。
そうすると、体温が低下し始めたときにちょうど布団の中で入眠できると思います。
この原理を応用したのが、就寝1時間前にあたたかい飲み物(ホットミルクなど)を飲むこと、ですね。
熱すぎない程度に温めたホットミルクを飲んで、そこから体温がちょうど下がりはじめたころに入眠できるわけです。
(3) 午後遅くのアルコール・カフェイン摂取
これは体質にもよりますが、夜遅くの深酒やカフェイン摂取は眠りを妨げます。
よく「寝酒」と称して、就寝前にお酒を飲む人がいます。
少量のお酒でリラックスできると寝つきがよくなるのでつい飲んでしまいがちですが、アルコールには眠りの後半の深い眠り(ノンレム睡眠)を妨げる作用もあるそうです。
睡眠の質を高めるなら、なるべくお酒に頼らないほうがいいかもしれませんね。
カフェインも同様ですが、これに関してもカフェインに対する耐性で、人によって異なるようです。
ちなみに、コーヒーが大好きな僕は、カフェイン感受性がめちゃくちゃ高いんです。
15:00以降にコーヒーを飲んでしまうと、もうまったく寝つけなくなります。
カフェイン過敏症ですね(涙)
コーヒーがお好きだけどカフェイン感受性が高い方は、一日3、4杯を限度に、朝かお昼に飲むようにしてみてはいかがでしょうか?
(4) 夜のドンチャン騒ぎ
これも、寝る直前にやってしまうと、質の高い睡眠を阻害します。
わが家のちびっ子たちをみているとよくわかるのですが、夜遅くまで興奮気味でハシャいでいるときは、決まって寝つきが悪いです。
特にこれは小さい子どもで顕著のようですね。
ですが、大人も要注意です。
脳が興奮状態になると、寝にくくなるのは大人も一緒ですね。
騒ぎつかれて倒れるように眠りについても、睡眠が浅くなりやすいため、夜中に声を出したり、歩き回ったり、夢遊病のような症状が出てくることもあります。
それに、そもそも遅くに騒ぐのは近所迷惑です(笑)
(5) 過度の昼寝
最近は昼寝が推奨されているようで、いろいろな企業も社員の仕事効率アップのために短時間の昼寝を取り入れているそうです。
最近ではアメリカ人の社会心理学者が提唱した「パワーナップ」なるものもあるそうですね。
30分未満の短時間の昼寝でノンレム睡眠を行い、脳の疲労をとったり、不要な記憶の一時メモリをクリアにしたりするそうです。
NikeやGoogleなどの企業では既に導入されているようです。
そして、この30分未満というのが大切で、どんな文献をみてみても、「30分」というのが一つの目安になっているようです。
「シエスタ」と呼ばれる昼寝が文化となっているスペインで行われた研究によると、昼寝の時間が30分以上の人と30分未満の人では、心房細動の発症リスクが90%も高いことが明らかになったそうです。
こわいですね、、、
それに、長すぎる昼寝が夜の入眠を妨げるのは、皆さんも経験としてご存知かと思います。
効果的に昼寝をしたいなら、タイマーをセットして、必ず30分未満で起きるようにしてくださいね!
いかがでしたか?
最近は睡眠について、いろいろなことがわかってきています。
肝心なところさえしっかりおさえておけば、快眠のコツはいくらでもあると思います。
人生という長いマラソンを走りぬくためには、睡眠の質を高めることは不可欠。
是非、皆さんにとってとっておきの方法をみつけてくださいね!
イルハン
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