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ABAで解説:ポジティブな子育ては、子供の可能性を最大限に引き出すことができる

子供の可能性を最大限に引き出すためには、ポジティブな子育てが不可欠です。

でも「ポジティブな子育て」と聞くと、どんな子育てを思い浮かべますか?
そもそも「ポジティブ」ってなんでしょう?

日本語のポジティブの意味

「ポジティブ」は英語の「Positive」をそのままカタカナにしたものですが、すでに日本語の形容詞のように、一般的に使われています。前向きで明るい、楽観的な考え方や性格、態度を表すときに使われます。

最近では「ポジティブ思考」「ポジティブになる」と言うように、「ネガティブ」と対比して、啓蒙的な意味合いでも使われています。これにより「ポジティブ」という言葉自体に「ポジティブは良いけど、ネガティブは良くない」といった価値判断が伴うようになったり、「ポジティブは、ネガティブを一切排除し、常に笑顔で明るく前向きでないといけない」といった極端な意味合いにまで広がっています。
そのため最近では、「ポジティブ思考、うざい・危険」と言う声も聞かれるようになりました。

英語のPositive (ポジティブ)の意味

一方、英語の「Positive」は日本語と同じ意味を含みますが、もっと中立的で客観的な印象を与えます

英語の"Positive"は、単に肯定的で前向きな意味を示す一般的な形容詞であり、日本語ほど感情的なニュアンスや、良いか悪いかの価値を示唆するニュアンスは伴いません。

価値が伴わないポジティブとは?

整数の集合: {..., -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, ...}

整数で「0より上の数=正の整数」は "positive(ポジティブ) integers" と表現します。

一方、「0より下の数=負の整数」は "negative(ネガティブ)integers" と表現します。

中立的で価値判断が伴わないポジティブ、ネガティブのニュアンスは上記の数字のようなものです。

日本語ではプラスは「正」、マイナスは「負」。これらの表示は「プラス=正しい」「マイナス=負け、良くない、悪い」とイメージしやすいので、自然と「価値」がついてきてしまいます。

でも「自然数は良いけど、マイナス整数は悪い」ってことはありませんよね。

この感覚が「ポジティブな子育て」と言う時の、私の「ポジティブ」のイメージです。

それは誤解!ポジティブな子育て

私が「ポジティブな子育て」という言葉を使う時は「肯定的な育児」という意味合いで使います。

しかし、言葉の性質上、価値判断が伴いやすい日本語の文脈の中で「ポジティブ育児」という言葉を使うと、非常に誤解されやすいなぁと感じています。

よくある誤解は
「叱らない育児」「褒める育児」と同一視されたり、マイナス面を一切排除した不自然で極端な育児法だと思われることです。
ですから、ポジティブな育児は子供をダメにする、甘やかしているだけのような印象を抱いている方も多いかもしれません。

ポジティブな子育てとは、叱ることより、肯定的な姿勢で子供を育てること

子供が失敗したり、悪い行動をした時には、正しい行動を教え、理解させ、できるようになるまで練習させ、できたら褒めたり、たたえたり、一緒に喜んだりして、次回もまた正しくできるように促し、また上手くできたら褒め、できなかったら教える…という態度で臨む育児法

叱らないとダメになる

「叱らないとダメになる」と考える人は、
「子供は叱られないと理解できない」「厳しく叱らない親は無責任!だから子供が言うことを聞かないんだ」と思っているからでしょう。

現実はそうとも限りません!
残念ながら「叱る」くらいでは行動は変わらないのです。

つまり「悪いことをするのは、叱られてないからだ!もっと厳しく叱らないと!」という考え方は、私たち大人の思い込みであり、科学的には正しくないのです。

叱られても大抵の行動は変わらない

叱られるだけで、そんなに簡単に行動を変えることができるのなら、世の中から犯罪はなくなり、誰もが勤勉になり、皆が健康になっているはずです。でも現実は違いますよね。

厳しさが足りないからか?

「軽く叱っているだけだから、舐められてるんだよ!もっと厳しく叱らないと、子供は言うこと聞かないよ」
本当でしょうか?

強い薬は副作用が強い

試しに厳しく叱ってみます。確かに、その一瞬は言うことを聞くかもしれません。しかし強い薬は副作用が強いのと同じで、強い罰は副作用が大きいのです。

例えば、二度とあなたに叱られたくない子供は、次回は隠れてするようになる、嘘をつくようになる、あなたを避けるようになる(家出、不登校など)。または逆ギレして反撃してくるなど。

叱ってばかりの子育てが失敗する理由

このような副作用を子供が呈してくると、大人であるあなたは、前回よりももっと厳しく叱るようになります。すると子供はより強い副反応を呈してくるので、あなたはまたさらに厳しく叱る…という無限ループに陥ってしまうことがあります。子供との関係が悪くなり、精神的に回復できないほど状況が悪化してしまいます。こうなってしまうと、もう自力での回復は非常に難しいでしょう。

子供を叱っても、行動は良くなるどころか、返って悪化。そしてお互いの気分も悪くなり、仲も悪くなってしまった…
ただ良い子に育てたい一心で、厳しく躾をしてきただけなのに…。

結果は、思い描いていたのとは真逆になってしまいました。

叱る理由はなんですか?

初心を思い出してみます。なぜ子供を叱ったんでしたっけ?それは子供を良くしたいからですよね。言うことを聞かない子供に腹を立て、腹いせのためのイジメではないですよね。本当に子供の可能性を最大限に伸ばす躾をしたいのであれば、腹を立てて怒りをぶつけるような叱り方はNGであることがわかるはずです。

子供の可能性を最大限に伸ばすためには

子供の潜在能力を最大限に伸ばすためには「ポジティブな子育て」が必要不可欠です。叱る子育てではある程度のところまでしか伸びません。その理由をABAで解説します。

ポジティブ=「正」=正の強化を使う育児

ポジティブな育児法とは、正の強化を使う育児です。
正の強化とは、行動が強化されたために、行動の頻度が増えること。ある行動をした後の結果が好ましかったので、また同じ行動を繰り返すようになることを正の強化というのです。

「行動したら結果が良かった」と子供が思えるようにする

例えば、子供を片づけ上手にしたいなら、子供が「片付けをして良かった」と思える環境づくりをする必要があります。この環境づくりこそが成功の秘訣であり、親や先生の腕の見せ所となります。

子供は褒められたら嬉しいはず?

褒められると嬉しい子には褒めてあげればいいですが、全ての子供が褒められて嬉しいわけではありません。私たち大人側の「子供は褒められたら嬉しいはずだ」「せっかく褒めてあげたのに喜ばなかった」なんて思ってはいけません!子供の好みは一人一人異なります。その子にとっての「行動の結果」を考えておく必要があります。可能ならば、子供がまだ小さいうちは、社会的な報酬(褒める、感謝する、一緒に喜ぶなど)が良いですけどね。

片付けそのものを楽しいアクティビティに変える

「お片付けというイベント/ゲーム」として扱うと良いです。
お片付けの歌を歌いながら、片付けたり、
ママと、どっちがいっぱい片付けたか数を数えて競争したり、
まずは「赤色だけ片付けます」「次は青」などと、ちょっとした決まりを設けて、ゲーム性を付け加えるだけでいいです。

そして綺麗になったら、「子供達のおかげできれいになった」ことを感謝したり褒めたりすればより良いですね。

成功のカギ

とにかく子供に「片付けって楽しいな」と思わせるような仕掛けを設けるのです。「片付け」は遊びの後の面倒くさい作業ではなく、「遊びの最後を締めくくるゲーム」のような活動として扱い、楽しいお片付けゲームのあとは、お部屋もすっかり綺麗になって、気分も良い!という体験をさせるのです。そして「子供達のお片付けによって、キレイに片付いた」という行動の結果を言葉にして、子供達に伝えます。毎回、お片付けをするたびに子供達に言って聞かせるようにしましょう。これを物心つく前から、1日数回、数年間続けていったら、そのうち、親や先生に何も言われなくても、片付ける習慣がついている子供になっていることでしょう。

片付けが楽しくなると

子供が片付けを楽しい!と感じるようになると、彼らは工夫し始めるでしょう。子供は遊びの天才なので、いろんなアイディアで、面白い片付け法を考えるようになります。

例えば、「おもちゃはもっとこう分類したほうがいい」とか、「こうしまったほうが、スッキリ見える」など、子供たちが主体的に片付けをするようになります。

そのアイディアを先生や親が聞いて「それはいいね!」「良くそんなこと思いついたねー!」などとポジティブな返答を返してあげれば、子供たちはさらに創造性を発揮して、いろんな提案をしてくれるようになるでしょう。

これがポジティブな育児が良いと言われる所以です。ポジティブな育児で子供を伸ばすと、想像以上に伸びる、すなわち、潜在的な能力を最大限に伸ばすことができるのです。

叱って片付けをさせていると

では「叱って片付けをさせる育児法」を使っていたら、子供はどうなるでしょう?

「何度言ったらわかるの?早く片付けなさい!」
「片付けないなら、全部捨てちゃうからー。だっていらないんでしょ?」
「使ったら使いっぱなし!どうして片付けないの?だらしない!」

あ〜、こんなことを言われ続けるのは嫌ですよね〜。
こんな風に叱られたら、子供たちはどのように片付けると思いますか?
それは「叱られない程度に片付ける」ようになるのです。

叱られない程度に片付ける

とりあえず分類もせず、箱の中に全てぶち込んでおく。
ぐちゃぐちゃのまま、机の引き出しに入れておく。
親から見えないところはぐちゃぐちゃのままだけど、とりあえず体裁は整えておいたので、叱られずにセーフ。

目的が「片付け」ではなく「叱られないための行動」になる

このような環境では、子供たちは片付けが好きになりません。しかも怒られないようにすること、体裁をとりあえず整えることに集中してしまっているので、片付けの本質を学ぶことができません。

仮にこの子はお掃除好きの遺伝子を持って生まれてきていたとしても、いつも叱られていれば、片付けは嫌いになってしまい、結果的に才能が開花することはありません。

仕事のノルマも同じ

大人の世界でも同じです。

例えば1週間に10件の契約を取るノルマがあったとします。たまたま初日の月曜日に10件の契約が取れたとします。あなたは上司に報告しますか?

正の強化の職場

褒められたり、認められたり、昇進や昇給などの強化子を提供してくれる職場なら、あなたは上司に報告するでしょう。そして残りの4日間も頑張って仕事をするはずです。
するともっと多くの契約が取れるかもしれません。あなたはどんどん昇給し、会社にとっても大きな利益になります。

負の強化の職場

ノルマを達成しても「当然だから」褒められることはなく、昇進、昇給もない。達成しないと厳しく叱ってくるパワハラ上司。これがあなたの職場環境だったら、初日で10件の契約が取れたことを上司に報告しますか?

おそらくあなたは上司に報告することなく、残りの4日間、仕事をしているフリをして過ごすでしょう。
当然ですよね。
こんな職場環境で正直に報告したら、あなたの労働力を搾取されるだけですから。

実は、あなたには生まれつきセールスの才能があったのに、その才能を発揮する機会に恵まれなかったため、結局、才能を開花させることなく終わってしまうのです。

まとめ

ポジティブ育児は子供の可能性を最大限に引き出すことができる強力なアプローチです。
私たち大人は、子供の間違いを叱って理解させることにエネルギーを注ぐのではなく、むしろ子供に正しい行動を教え、それを楽しんで行えるような環境をたくさん用意してあげることに重点を置くべきです。子供たちが「楽しかった!またやりたい!」と思えるような場面を創り出すことにエネルギーを注ぐことで、肯定的な経験を通じて自己成長を促し、積極的な学びや行動を促進することができます。

上記では「片付け」を例に解説しましたが、大人も子供も「行動したら楽しい」行動は自主的にやるものなのです。自主的に続けられるようになった行動が、その子の得意になります。

よく聞く「東大生の親は子供に『勉強しなさい』と言ったことがない」という例はコレです。
叱られて勉強してきた子供は「叱られない程度にこなす」ことを目標に勉強をするので、「叱られない程度」までやったら即座に止めます。

勉強自体に楽しさを見出した子供は、自分の好奇心のおもむくまま、知的好奇心を追求していくので、結果として東大に受かっただけで、それが目的ではなかったと言うことです。

叱られるから渋々やる行動は、「叱られない程度までしか行動をしない」ので、ある程度までは伸びるでしょうが、潜在能力を最大限に引き出すことまではできないのです。

ですから、子供を伸ばすには正の強化が絶対に必要なのです。



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