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【危険な遊び3】安全な世界で冒険を育む: 現代の子供たちにとって危険な遊びの重要性"

これまで、危険なゲームの有用性について何度かお話ししてきました。Youtubeで昭和の危険な遊びを見つけましたので、ここに掲載します。

私は第二次ベビーブーマーなので、このyoutube世代以降ですが、ここで紹介されている遊びのほとんどをやっていたなぁ〜と懐かしくなりました。

昔の子供は活発で、今の子供は軟弱になったのか?

このビデオを見た中高年の方々の中にはきっと、
「自分たちの子供の頃は、みんな運動神経が良く、心身ともに強い子供だったが、今の子はゲームばかりしているから、すっかり軟弱になってしまった」
なんて思う人もいるかもしれませんね。

まぁある意味、それは真実かもしれません。
私が巡回指導で小学校を訪問している時にも、
「今の子供達はみんな良い子過ぎじゃないかなぁ」
と感じていましたので。

だからと言って、今の子供を「軟弱だ」と決めつけるのは間違っているし、それを子供本人のせいや親の躾だけのせいにするのは、違うかなと感じます。

環境に合わせて行動する

人間は環境に合わせて行動します。
例えば「寒いときは上着を着て、暑いときは脱ぐ」ように、自分の置かれた環境に応じて「行動の結果、自分が快適になるように」行動します。これにより人間は、様々な環境に適応しやすくなります。

実際、人間だけでなく全ての生物は「自分に快感をもたらすため」「環境を自分にとって都合良くするため」に行動します。行動したら、本当に自分にとって望ましい結果になった場合、再び同じ状況や環境に遭遇した際に、また同じ行動を取るようになります。このプロセスが日常的に繰り返されることによって、適応的な行動や習慣が身につきます。これを「強化」といいます。

ですから、昔の子供達のように、友達と裏山に探検に行き、秘密基地を作ったりして楽しかったら「また明日も遊ぼーぜー」と言うことになるでしょうし、室内でゲームをして達成感を味わえたら、時間を見つけてはゲームをするようになるでしょう。

裏山探検中に崖から落ちて痛い思いをしたら、ある子どもは、もう裏山には行かなくなるかもしれませんし(正の弱化)、それでも探検の面白さの方が勝る場合、今度はもっと注意して崖を登るようになる(負の強化)かもしれません。

環境が違うだけ

今の中高年たちが子供の頃は、遊び場や公共の場での安全基準が現在よりも緩かったですし、子供の安全性やリスク回避に関する情報を知る手段(メディア)も今ほど普及していませんでした。
どこの親も、子供がどこで何をして遊んでいるかなんて知りもしなかったし、気にもしなかったと思います。
ただ「暗くなる前に帰ってきなさい」と言われるくらいのルールしかなかった気がします。

そのおかげで当時の子供たちは、大人の目を気にすることなく、自分たちの好奇心と創造性をフルに活かし、さまざまな感情を掻き立てられながら遊んでいました。

今では、安全性を気にし過ぎる、ご近所の目を気にしたり、苦情が来ないように子供を遊ばせるために、以前の世代が当たり前に楽しんでいたような危険を伴う遊びができなくなってしまいました。

また、教師は「注意義務」という理由で、怪我をした場合に批判されないように、子供たちがリスクを取る機会を制限します。また、ご近所から「騒音」や「子供たちの下校のマナー」などの苦情が来ないように、子供達から遊びの機会を制限します。

しかし、子供たちの学習や成長を促すためには、遊びの中で危険を冒す必要があります。屋外での危険や挑戦は、学びや問題解決の機会を豊かに提供してくれます。子供たちはそこで、身体的・認知的・感情的な成長の限界を試すような経験をして成長するのです。

そんな活発に遊び回っていた今の中高年が、もし現代に生まれていれば、今の子供達と同じようにゲームに明け暮れる毎日を過ごしていたでしょうし、今ゲームばかりしている子供たちも、50年前に生まれていれば、毎日活発に外で遊び回っている子供だった可能性が高いのです。

日本だけでない!世界中で同じことが起こっている

この記事を書くにあたり、さまざまな海外の文献を見ていたのですが、このような風潮は日本に限ったことではありませんでした。特に北アメリカで深刻なようで、多くの研究者たちが、それが子供に及ぼす影響を調べ始めています。

危険な遊びの有益性を認識し、カナダの研究者や遊びの擁護団体は最近、「積極的な戸外遊びに関するポジション・ステートメント」を作成し、次のように提唱しています。

自然や屋外で活発に遊ぶことは、危険を伴うが、子供の健全な発達にとって不可欠である。私たちは、家庭、学校、保育所、地域社会、自然など、あらゆる環境において、子供が自主的に屋外で遊ぶ機会を増やすことを推奨する。

Herrington & Pickett(2015).
Position statement on active outdoor play.

結局二極化

現代の子供の世界は、学力だけでなく、運動神経やメンタル面でも二極化している可能性があります。以前は当たり前だった子供の外遊びさえも、大人のサポートが必要な時代になった今、親の時間的、経済的サポートの有無で、子供の体験の質や量が大きく変わってきます。

例えば、自然の中での冒険的な遊びや、スポーツを好む保護者の元に生まれた子供たちは、小さい時から自然や体を動かすことを楽しみながら、成長していきます。

一方で、時間的・経済的な制約がある家庭の子供たちは、テレビゲームで過ごす時間が増える傾向があります。ゲームは初期投資こそ高額ですが、長期的に見れば、休日にアウトドアキャンプや体験型活動に出かけるのと比べて経済的負担が低く、親にとっても楽なのです。

ゲームばかりするのは、言うことを聞かない子供のせいなのか?

ですから「うちの子はゲームばかりしている」と嘆く保護者の家庭では、もしかしたら知らず知らずのうちに、親が子供のゲーム行動を強化してしまっているケースも良くあるのです。
子供は家の中で騒いだり、邪魔をしたり、親に絡んできたりと、親を疲れさせます。しかし、親が子どものゲームを許せば、子供は親に絡んでこなくなります。だから親は、子どもにゲームを許してしまうのです。これは負の強化です。ですから、子供がゲームばかりするのは、子供のせいだけではないんですね。

親が気をつけないと、すぐにこのループにハマる

「子供にゲームを与えて静かにさせる」
これ、親にとって非常に強力な強化子です。
親はほんの少しの努力や労力で、子供のやかましさを止め、自分の時間を確保することができるのです。この「子供にゲームを許す親の行動」は、負の強化と正の強化の両方を通じて強化されています。

このABA理論で考えると「子供がゲームばかりするのは、親のせい」と言えるのですが、私には「親が悪い」とは言えないですね。

こんな楽な行動の結果、強力な強化子が得られてしまうんですから、どんな親でもがやってしまう可能性があります。特に親が精神的、時間的、経済的な余裕がない場合はなおさらです。

解決策

まずは親が、子供の健全な発達には、どのような遊び、環境が必要なのかをしっかり学び、理解しておく必要がありますね。そして、子供にもちゃんと、室内でのゲームやソーシャルメディアの危険性も理解させましょう。そして、子供と一緒にルールを決めた上で、ルールに則ってゲームをさせるようにしましょう。

子供と一緒にルールを決めるのがカギです。

自分で作ったルールには、子供は従いやすくなるからです。

そしてなるべく、ゲーム以外の楽しい外遊びの機会を提供してあげましょう。

楽しい冒険的で危険な遊びを提供する機会を提供するにはどうしたらよいでしょうか?

例えば、地域のコミュニティセンターや公共施設の放課後のプログラムを提供している場合があるので、このような公的なリソースをもっとたくさん取り入れていくと良いかもしれません。こうした場所で、子供はスポーツ、アート、クラフト、音楽など、興味のあるプログラムを自由に見つけて参加してみると良いでしょう。

また放課後の学校でも、部活とは別に、もっと自由度が高いアフタースクールプログラムを提供しても良いかもしれません。例えば、子供主体で運営させ、大人数で逃走中のような鬼ごっこをしたり、チーム戦で競ったりするゲームを自分たちで考えさせて遊ぶと盛り上がるかもしれません。

大学生のボランティアとダイナミックな遊びをしたりする機会を利用することもできます。うちの息子たちが小さい頃、大学生が子供と遊ぶサークルに入れていました。疲れ知らずの元気なお兄さんお姉さんとダイナミックに遊ぶのは楽しかったようです。

使おうと思えば無料で楽しめるリソースがありそうですし、そのような機会を作ることもできそうです。参加前に、遊びには多少の怪我はつきもので、怪我から学び成長する面もあることを、保護者に理解してもらいつつも、子供の安全と健康を守りながら、成長と学びの機会を提供することが大切ですね。

References
CBC/Radio Canada. (n.d.). Risky play for children: Why we should let kids go outside and then get out of the way. CBCnews. https://www.cbc.ca/natureofthings/features/risky-play-for-children-why-we-should-let-kids-go-outside-and-then-get-out

Howley-Rouse, A. (2020, December 16). Promoting children’s risky play in outdoor learning environments. THE EDUCATION HUB. https://theeducationhub.org.nz/promoting-childrens-risky-play-in-outdoor-learning-environments/

YouTube. (2023, March 3). 【懐かしい昭和】昭和の危険な遊びを紹介!ちょっと危ないし怒られもしたけど、それが楽しかったんだ... YouTube. https://www.youtube.com/watch?v=NgEkojp5E0M


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