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人財と企業の適合度の鍵は“カルチャー”にあり! アデコがカルチャーフィット測定を始めた理由

アデコ株式会社ではこれまで「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」というビジョンの実現を目指し、すべての働く人の働きがいを目的とした取り組みを展開してきました。その取り組みの一環として2023年5月に開始したのが、人財派遣事業における「カルチャーフィットの測定」です。
 
カルチャーフィットの定義や取り組みの内容、これまでに得られた成果などについて、当プログラムを推し進めてきた槙田朋臣さんにお話を聞きました。


人財と職場の適合度を測る「カルチャーフィット」

アデコ株式会社が2023年5月に新たな試みとして発表した、カルチャーフィットの測定。カルチャーフィットとは「人財の持つ価値観と企業の組織文化がどれくらい適合しているのか」を表す人事用語で、職務満足度やパフォーマンスの向上、離職率低下などが期待されることから、近年の採用や人事戦略において注目を集めている重要な指標の一つです。
 
カルチャーフィットという言葉は、その抽象度の高さゆえに、企業ごとに解釈の違いが出やすいもの。槙田さんは、Adecco Groupのカルチャーフィットについて、次のように定義しています。
 
「私たちはカルチャーフィットを『企業や組織における文化と個人の価値観の適合度』と定義しています。これらをさらにかみ砕いて説明すると、組織の文化は『職場のマネジメントにおいて、特に大切にしていること』に置き換えられます。個人の価値観は『仕事をする上でやりがいに感じられるポイント』、いわゆる“やる気スイッチ”と言ってもいいかもしれません。それらを尺度化して、人財と職場の適合度を測るのが、今回のカルチャーフィットの試みです」
 
アデコではこれまでにも、人財躍動化を実現するために、2025年までに50万人の人財(「適財」)の輩出と45万ポジション(「適所」)の創出、そして「適財」と「適所」を「ビジョンレベルでマッチング」する「ビジョンマッチング」をはじめとした数多くの取り組みを行ってきました。
 
そんな中、今回の試みで「カルチャー」に着目した背景について、槙田さんは次のように話します。



当社ジョブマッチングにおける”カルチャーヒアリング”の位置づけ

「ジョブマッチングにおいて、希望条件は昔から重視されてきた必須の要素です。一方で、自社の調査によると、半年以内に退職した派遣社員のうち、条件が合わないという理由で退職された人が3割なのに対し、企業の価値観が合わないという理由で退職した人の割合が4割にまで上るという結果が出ていました。
 
これを踏まえて、企業のビジョンを重視した『ビジョンマッチング』を導入したわけですが、どうしても抽象度が高くなってしまうことが課題でした。そこで、『条件』と『ビジョン』の間に、より具体性の高い『カルチャー』という指標を加えようとしたのが、今回の試みの第一歩です」

回答率アップのカギは「プロセスの簡略化」と「親しみやすさ」

ジョブマッチングにおいて見落とされてきた「カルチャー」に着目して、人財と職場の適合度を上げていこうという視点でスタートした、カルチャーフィットの測定。しかし、当初は設問項目が細かく、お客様からは「ヒアリングに時間をかけられない」という声も寄せられました。
 
そこで取り入れたのが、15のキーワードから該当するものを選んでもらう形式です。マネジメントスタイルには、「貢献実感重視」「信頼関係重視」「主体性重視」「成長実感重視」「ビジョン共感重視」の大きく5パターンが存在し、カルチャーフィットの測定を進める上でのカギとなります。パターンごとに3つのキーワードを設けました。「自己裁量」「学びの機会」「プロセス評価」といった組織の文化にあたるキーワードの中から、職場におけるマネジメントで、とくに大切にしているものを3つ、大切さの度合いが低いものを1つ選んでもらうよう、プロセスを簡略化することで、お客様へのヒアリングを促進したのです。

▲求職者向けに親しみやすくした「お仕事やりがいタイプ」診断 https://www.adecco.co.jp/useful/work_adecco_09

また、求職者に向けては、イラストを添え、親しみやすく、また分かりやすくすることを意識。「個人の価値観」にあたる、自身の“やる気スイッチ”を意識してもらいやすくすることを心掛けました。
 
こうして企業、求職者ともに回答を得やすくなったおかげで、それぞれのカルチャーの「軸」ができ、マッチングへの活用が一気に進んだとともに、「フォローアップがしやすくなった」と槙田さんは話します。
 
「カルチャーフィットの指標に基づいてマッチングしても、いざ働き始めてみると、うまくいかないケースも当然ながら考えられます。たとえば、『主体性重視』を掲げていた企業であっても、実際には細やかなマネジメントが重視されていたり、求職者自身が『成長を実感したい』と言っていたとしても、実際には縁の下の力持ちとして職場に貢献することに喜びを感じるタイプだったりすることも少なくありません。
 
そうした双方の自己認識のズレが発生したときでも、カルチャーフィットの測定による『軸』があれば、適切な認識にアジャストしていくような対話ができるようになります。カルチャーフィットは就業前のコミュニケーションだけでは上手くいかないケースもあるため、こうした精度の高い『自己理解』を得てもらうプロセスも重要なのではないかと考えています」

6カ月以内の離職率が40.3%から12.1%に。背景にあった、部署ごとのカルチャーの違い

実際に、カルチャーフィットの測定をもとにしてマッチングした企業や求職者の事例には、どのようなものがあるのでしょうか。
 
「カルチャーフィットの測定に協力していただいたお客様の中で、とくに印象的だったのは、エンターテイメント業界のある大手企業のケースです。バックオフィス業務に100人以上の派遣社員を採用していたのですが、2022年末時点で、6カ月以内の離職率が40.3%と高いことが課題でした。
 
そこで、私たちのカルチャーフィットの測定にご協力いただいたところ、バックオフィス業務の中でも部署によって、それぞれのカルチャーがまったく異なることが把握できたのです。測定にもとづいて採用を行ったところ、6カ月以内の離職率が12.1%まで低下しました」
 
また、求職者においても少しずつ結果が出ており、自己主張の強さや成果が重視される職場で馴染めなかった「貢献実感重視型」の人財が、行動やプロセスも重視して、丁寧な仕事ぶりを評価してくれる職場に転職したことでやりがいを感じ、職場に定着したケースもあったといいます。
 
カルチャーフィットの測定を始めてから少しずつ企業と求職者双方からの回答が蓄積されつつあるため、今後は、さらに多くの成功事例が出てくることが見込まれます。

今後は「就業中」のカルチャーフィット測定がテーマ

現時点での課題を踏まえた今後の展望について、槙田さんは次のように語ります。
 
「お伝えしているように、カルチャーがフィットするかどうかが判明するのは、就業がスタートしてからです。そのため、これまでのジョブマッチングのフェーズから、就業中のフェーズへと移行し、就業者のリアルな状況を把握することが、次のテーマになると考えます。本当の意味で求職者の自己理解が進み、お客様の職場の課題に気づくためにも、当社として、就業中のフォローアップにもより注力していきたいですね」
 
 
アデコは、「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」をビジョンに掲げ、仕事を通じて躍動する人財と、人財が躍動できる環境の創出により、社会へ変革をもたらすことを目指しています。


Country Management Office
槙田 朋臣


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