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女性のQOL幸福度を上げるために【作戦タイム】No.12

「男/女」を分けない概念は社会に浸透しつつも、女性特有の課題は、スポーツ内外問わず、まだまだある。
「女性」という切り口で見たときに、女性アスリートだからこそ社会に活用できることもあるかもしれない。

<スポーツ×人間社会>をつなげていくラジオ【作戦タイム】のシェア。日本学術振興会と大阪大学大学院の研究助成により、一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構(ADCPA)がお届けしています。

MCは奥村武博(ADCPA代表理事)×岡田千あき(大阪大学大学院人間科学研究科・准教授)。
ゲストの鈴木万紀子さんは、国会議員秘書やBリーグでの仕事を経て、現在は自身の会社を起業する傍ら、(一社)日本フットサルトップリーグ理事や(一社)トップリーグ連携機構のウーマンアスリートプロジェクト(WAP)に携わり、ここで岡田先生と奥村を繋いだ。
鈴木さんは、女性アスリートの力を社会に発信したいと考えている。

プロフィールなど詳細はhttps://www.adcpa.or.jp/sakusen-time

ダイジェスト⇩

女性活躍社会にアスリートの価値をどう活用するか

鈴木さん
「トップリーグ連携機構でも、女性リーグは大きなスポンサーや観客動員に苦労しています。女性活躍が叫ばれるなかで女性アスリート全体のムーブメントを作りたい。女性スポーツの収益化や活躍と同時に、女性特有の身体の問題とかも横ぐしを通して共有しあっています。
収益化の一つはWAPTV。女子の複数の球技(ソフト、ホッケー、フットサルなど)をまとめたインターネット配信でスポンサー営業していますが、まだまだ伸び悩んでいます」

岡田先生
「でも時代は変わりましたね。かつて女性のメダリストに向かって「次は女性としての幸せですね」というのが違和感でした」

鈴木さん
「それはスポーツに限らず社会がそうでした。必ずしも社会とリンクしないところもありますが、女性活躍社会の中で社会的地位の問題に対して、女性アスリートのパワーをビジネスの世界で使ってもらうとか、ビジネスのヒントにしてもらうとか。ビジネス面での女性活躍にどう活かすのか。そこを我々がPRできていくといいなと」

女性の自由な生き方への一役に

一方で鈴木さんは、乳がんによって乳房を切除した人が、簡単に装着できる人工乳房を販売する『カノアクルー』を起業。そのキッカケは、自身が体調を崩し入院によってキャリアが見えなくなり、「雇われる形ではない働き方」に見直したこととも重なった。

鈴木さん
「私自身は、人工乳房のことも知らなかったですし、私の病気は手術して外見も変わりなく、病気のことも忘れるくらいだけど、乳がんの人はがんは手術で取り除けても、毎日自分の女性として象徴的なところを見ることになる。それをつけることでQOLが変わるなら価値があることだと感じて友人と起業しました。
カノアはハワイ語で自由。クルーは仲間。これからの人生を自由に思うがままに。そういう集団をつくりたくて」

この装着式人工乳房を知る人は少なく、これがあるなら外科的にシリコン注入する再建手術はしたくなかった、手術の前に知りたかったという声が多い。その啓蒙にスポーツとのコラボも考え中。

岡田先生
スポーツと啓蒙は相性がいい。自分の身体に興味関心という意味でも、開放的な場で啓発できる雰囲気づくりとしても」

奥村
「これはやっぱり男性より女性スポーツのほうが相性がいいのかな。お客さんの心の傷や立て直しにアスリートからの学びとかもいいかもしれない」

隠れた「男・女」の刷り込みから 「平等」の模索へ

鈴木さん
全体的に幸福度が上がるといいなと思っています。プロスポーツが取り組んでいる流れも、地域に根づいているヨーロッパ型に変わるといいなと」

岡田先生
「そのためには、やっぱり女性がもっとオーガナイズとか指導者に入っていかないと」

鈴木さん
「Bリーグには30代女性スタッフは多いし、役員に女性もいるし、優秀で活躍していて期待できます」

奥村
「野球は親会社のマインドが反映されがちですが、だいぶ変わってきてる。例えばDeNAはトレーナーに女性がなったり。プロ経験のない人がコーチになったり」

鈴木さん
男性の意識もありますね。私たちの世代は、まず名簿順は先に男子、女子は後。"女子は男子より一歩下がる"、で育ってるから女性の意識も、まずは先に男性。自分が頑張らないと前に出られない刷り込みがある」

岡田先生
隠れたカリキュラムというのがあって、幼稚園から女の子ピンクねー、男の子青ねー、という刷り込み。早く気付いた国から解消してますが、日本は遅い

鈴木さん
「『紅白歌合戦』も、今の若い子は何で分けているのかわからない。何が赤、なのって。男と女で分ける概念はもう今はないみたいです」

岡田先生
「だけど体力の差はあるので、体育の競争を男子女子同じ場でやる学校に遭遇しましたが、男子が勝ってしまう。上位に女の子が入らないと、どうせ男には勝てないし、って頑張らなくなるデメリットがあるかもしれない。どっちが平等か…

奥村
「男性順位と女性順位と分けるのはダメなのか。体力差はあるから、平等って何かですよね」

鈴木さん
平等をどう捉えるか難しい問題です。WAPの中でもやりたいんですけど、事業として先立つ資金がなく、資金がないとPRもできない。スポーツ界がそこを見てこなかったからですね」

ノーカット音声はSpotifyで⇩
女性活躍社会の中でのアスリートの価値と課題  #6-1
これからのスポーツビジネス #6-2
競技力以外の付加価値が必要 #6-3
女性がより良く生きるための啓蒙にスポーツを #6-4

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”違い”には「公平」の考え方で

【アディショナルタイム】 配信考記 byかしわぎ

ジェンダーの平等を問われる機会が増えた。
そこでいつも思い出すのが、私が社会人1年生の頃に聞いた、ある有名企業の社長の訓戒。

「"平等"よりも"公平"の考え方が適切なこともある」

「体力的性差」の「違い」を"一様"にはできない

今回はスポーツがテーマなので「身体面」の切り口から。

言うまでもなく、男女で生まれ持った身体がかなり異なる。
その特性として、男性の方が女性より「体力」「身体能力」面において勝ることが多いけれど、それは上、下、ではなくて「違い」

男性のほうが重い荷物を持てるし、より高いところにも届く。足も速い。
その特性を活かせば、力仕事は男性が担うほうが効率的(有利)なのは確か。
もちろん女性でも重い荷物を持てる人もいるし、背の高い人もいて「個体差」もあるけれど、生まれ持った「体力的性差」は、抗いようがない。

この「性差による体力」だけで、男性を優遇、女性を冷遇することは差別。
では「体力」がモノを言うスポーツで、「歴然とした体力の性差」を無視して、同じ土俵で一様に競わせるのが平等か、と言えば、それもアンフェア。

相応の真っ当な選択肢や権利が得られるフェア(公平)に

「性差」は絶対にある。でも同格。

平等というと、何でもかんでも「一律」「フラット」にすればいいと解釈する向きがあるけれど、個々の「違い」をお互い認め尊重するのが平等で、「違いがない」と度外視することではないと思う。ましてやスポーツの場で、「体力的性差」を無視して「一様として」扱うことはムリがある。

目指したいのは、違いを無視した"一様"ではなく、偏りやえこひいきのない公平さ。各々が特性を活かすことにもつながる。
条件や特性の違いがあっても、相応の「真っ当な選択肢や機会、権利が与えられる」のが「真の等しさ=公平」ではないかと思う。

一定の同じ条件であれば「平等」に、前提条件が異なるなら「公平」に。

社会において、体力的性差が影響のない仕事では、もちろん男女は平等。

ただスポーツでは、体力差のある男女を同じ土俵で競わせるのは平等どころか、女性の劣等感を増幅しかねないアンフェア。
「平等もどき」ではなく、女性にも男性と同等の選択肢や機会があり、報酬が得られる、そういう「公平な環境」づくりが必要なのだと思う。

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