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ハンニバル、むせかえる青春の匂い

古代ローマに闘いを挑んだカルタゴの英雄ハンニバル(イケメン)。稀代の名将に似合う香水、それは「青春の雫」だ、というお話です。
彼の傍を通ったら、きっとこんな香りが漂うのではないかな。

ミュージカルや映画のオペラ座の怪人の冒頭の劇中劇「ハンニバル」。オペラ座の舞台に象を引き連れて凱旋してきた偉大なヒーローというのは、この人のことだったのですね。
塩野七生の『ハンニバル戦記』を読んでいて、もうカッコよすぎて参りました。とはいえ、この人のパーソナリティに関する歴史的な記録はほとんど残されていない(らしい)のですが。
ハンニバルがローマに挑む遠征を始めたのが29歳の時。途中途中で反ローマ勢力を懐柔しながら自軍を膨らませていく。何万ものダイバシティな軍を率いていく若きリーダー。象を引き連れてのアルプス越え、というのがすごく有名な話ですね。

彼はスーパープレイヤーでビッグボスなのに、一兵卒と同じ食事、彼らと同じように野辺に横になって休む日常だったようで、自分を特別扱いする欲が1㎎も感じられないところがたまらない、です。

また、寄せ集めのはずの兵士たちは、ローマに反撃されて状況が苦しくなればなるほど、逆に離脱しようとしなくなったという話があり、お金で雇われてる傭兵に支払いもおぼつかなくなってるのに、みんな、ハンニバルのもとにとどまることを選んだといいます。
そのような厳しい戦況の中、つかの間ハンニバルが休息を取り眠りに落ちてる間、兵士たちは物音を立てないように、気遣ったりしていたという描写があり、これは作者の視点では「俺たちがこの人を守らなきゃ」的な気持ちを起こさせる人間的な魅力がハンニバルに備わっていたから、ということでした。そうであったとしたら、彼は最強ですし、そうであったと思います。

29歳からの十数年間をベッドで眠ることもなく戦場で過ごしたハンニバルに直結した香りが「青春の雫」(エスティ―ローダー社)という香水です。
一日に数時間しかない眠りにつくハンニバルのそばを通り過ぎる時、匂い立ってくる香り。きっとこんな香りだったのでは、と思われます。
何故なら、
私にはハンニバルという人の中にとても老獪な戦術家としての側面と、それを支える実に混じりけがなく成熟しようがないほどに色あせない志を感じるからです。

そして、この香りもその両面を持ち合わせていると私は思います。
ところで、「青春」がモチーフとなるとレモンなどのフレッシュな感じ、ヒアシンスのような清々しいグリーン感なんかを思う人も多いと思います。

「青春の雫」は、真逆です。
むせかえるような、むわっと匂いが立ってくるような重厚でスパイシーな香りです。そして奥底に漂う甘さ。
ネーミングから考えるとこの香調、凄く意外です。
けれど、青春の実態は、時間の濃さ、想念の強さ、その中を駆け抜けていくパワー、にあるのかもしれません。
「青春の雫」は、スパイス系の香り、ムスクのような動物性の香り、柑橘系、花々の香りなど多様な香りが緻密に調合された傑作です。ハンニバルの戦略にも引けを取らないデザインです。

動物性香料やスパイス系の香りの強さと濃厚さ、この香りの説得力が戦略家としてのハンニバルに通じる部分。
その中に、イランイランやバニラが醸す少し乾いた感じの甘さ、そこが「私が守らなくては」と思わせる鋼鉄のハンニバルに微かに漂う青春の危うさ。
まとめすぎかな笑

青春の雫を通して、ハンニバルが少しだけ近くに感じられました。

youth dew(青春の雫)/estee lauder
女性調香師ジョセフィンカタパノの50年代の代表作。
金のリボンは一つ一つ手で結ばれた。
半世紀を超えるロングセラーだったが現在は廃番。


https://spotify.link/rmznr560tDb
youth dew(青春の雫)音声配信は↑
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