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スイス[57] 回転しない如何様寿司屋

スイス[57] 回転しない如何様寿司屋(いかさますしや)
                 〈アジアン・イタリアーノ〉
202401220453

 ある時、ジュネーブへ出かけていた私は、市内のCFFジュネーブ駅近くにあった大きな通りに面した『SUSHI』(鮨/寿司)屋を見つけました。そして、スイス旅行も最後の方で『ご飯』に対して禁断症状が出ていた私は、出来心でついフラフラと『SUSHI』屋に入ってしまったのです。チープな寿司は前年の旅行で懲(こ)りていたはずなのに…(別記する予定)

 店はテイクアウト形式でした。小さなカウンターに男が一人立っていて、横にレジがありました。レジには女の子が二人いましたがフランス語でおしゃべりをしていて愛想がありません。
 既にパックに入っていた、海苔巻きとサーモンの握りなどが入っているセット物を手振りと英語で頼みレジに持って行きます。レジで会計をする時に「ここで食べられるのか?」と英語でたずねたら店の女の子はOKだと言いました。
 ガラス越しに通りが良く見えるテーブルの上に買ったばかりの寿司のパックを置き、椅子に座ります。
 慎重にワサビのパックを吟味しますが、一年前の悪夢もよぎる。スイスのチープな寿司屋が全て同じかどうかは分かりませんが、この店も日本のスーパーによくある『サビ抜き』です。で添付されているワサビの小袋を観察します。小袋のパッケージを見る限り一年前のようなひどいものではなく、日本の有名ブランド物ではありました。
 そして封を開けて中を少し絞りだすと…
 なんだか、この添付されていたワサビの味が(やっぱり)ひどいのです。日本の第一級ブランドである金印わさびの小袋でしたが、日本のそれとは随分味が違い、単にツンとくる辛味だけが強かったのです。また醤油も変な薄味でした。が辛すぎるワサビも含めて、まぁ食えなくはなく、何とか寿司の真似にはなっていたので許すことにしました。もっとも酢生姜が別料金(1スイスフラン)でした。変にケチいの。
 で最大の問題は、です。ワサビでも醤油でもなく、握っていた『寿司職人』のことです。アジア系の男。だが私が店に入っても「ぃらっしゃぁい」などと言わず黙りこくって私を無視しています。明らかに日本人ではない。何より握る動作がサマになっていない。

 出された寿司が美味くないのは承知です。でも挨拶が何もなかったら、回転寿司よりヒドイぞ。
で『寿司職人』の男に英語で聞いてみました。
「あんた、どこから来たの?」
一瞬間が空き
イタリアからだ
 はぁ?? 嘘つけ。ジュネーブからイタリア国境はちと遠い。何よりその風体、勿論(もちろん)日系イタリア人とかもいるだろうけれど彼は日系火星人ですらない。そして何よりイタリア出身って、ここはプリモピアットでパスタを出す店じゃないぜ。
「もしかしてチャイニーズか?」
 その匂いがプンプンです。というか欧州で今一番多いアジア系はチャイニーズだから当たる確率が高い。さっきの返事よりもっと間が開き、しかし悪びれもなく
「そうだ」
中国系イタリア人だと言います。

 断っておきますが、寿司を握るのに日本人でないとダメという国際条約なんか無いです。別に中国人でもコリアンでも寿司を握って良いのですが、しかし、ただのパサパサ飯にワインビネガーをかけてそれを丸めて冷凍ネタを乗っけるだけだとライセンスを剥奪するぞ(*1)。
 もっとも、日本人が作る『イタリアン』も『中華料理』もその国の人に言わせると同じように免許取り上げ、かも知れません。日本に来たことがない生粋のナポリ人がサイゼリアのナポリタンを食べたら噴飯物だろうなぁ…。

 酢生姜は有料だった分美味しかった。これだけは日本の味がしました。もうスイスで寿司はやめようと思いました。国境を越えてフランス側のカルフール(*2)に行って食材を買って自分で作った方が絶対いいよなぁ(多分)。

(*1)私は決して大陸人が嫌いなのではない。良くしてもらった人もいる。その辺を是非誤解のない様に。あと寿司職人にどんなライセンスが必要なのかは実は私はよく知らない。
(*2)フランス各地にある有名なスーパーマーケットチェーン店。

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